熊本市交通局9200形電車
熊本市交通局9200形電車(くまもとしこうつうきょく9200がたでんしゃ)は熊本市交通局(熊本市電)の路面電車車両の形式である。形式名は製造初年の1992年(平成4年)に由来する。
車両概説
1992年(平成4年)に9201・9202、1993年(平成5年)に9203・9204、1994年(平成6年)に9205の計5両がアルナ工機にて製作された。9201は熊本市の提携している友好都市にちなみ「ハイデルベルク」の愛称名が付けられ、車内にはハイデルベルクを紹介するパネルが掲示されており、かつてはドイツ語での車内放送が行われていた。2017(平成29)年4月より外部の入口、出口標示板に日本語、英語、韓国語に加えドイツ語で「Eingang(入口)・Ausgang(出口)」が追加されたが、ドイツ語の表記が大きめに設置されており、その下部に日本語、英語、韓国語が表記されている。車内の広告枠(側面天井曲部分、運転士セパレート部分のポスター枠等)は全てハイデルベルク市内や、路面電車等の写真を追加掲載、吊革にはドイツ語で日本語を意味する単語等を掲載されている。
構造
車体・車内設備
前面は流線型の大形一枚窓であるが、8800形と比べて傾斜が大きくなっている。また前面両端下部に前照灯と尾灯を配置しており、9201のみ中央にハイデルベルクの紋章が取り付けられている(シール式)。窓配置はD2D2の対称形で、下部固定・上段スライド式のユニット式アルミサッシ窓である。また前回に導入された8800形では前後扉であったが、本形式は従来の前中扉に戻され、2枚折り戸の前扉(降車口)と2枚折り戸を2組用いた両開き式4枚扉の中央扉(乗車口)で扉構成は8200形と同様である。
また、側面系統幕は8200・8500形・8800形(101を除く)よりも少し大きくなり、後に側面系統表示板を設置したが現在も使用している。101形と同様で以前は通過停留所を表示したものだったが、現行のA・B系統になってからは前面と同じく系統と行先のみの表示となった。
車番は新製時より8800型と同様、前扉上部と側面中央のみに掲載され、前面には新製時には掲載されていなかったが、外部広告掲載復活時にシール式ではあるが掲載される様になった。現状では、
9201・排障器中央
9202・バンパー左側
9203・排障器中央
9204・バンパー左側
9205・バンパー左側と排障器中央
と、なり但し9201を除く4両は広告掲載新規時に車番掲載位置が変更される事もある。
座席はロングシートであるが、入口中央扉より対面する一部座席は車椅子用のスペースとして折り畳み出来る様になっており、9205は座席を若干改良した上で落成した。屋根上に三菱電機製の冷房装置と補助インバータを搭載する。
その後、日本初の超低床電車9700形が導入された為、一般床車としては現在のところ最後のグループである。
電装品・台車
8800形と同様、GTO素子のVVVFインバータ制御を採用し、インバータ装置と交流モータは三菱電機製。モータは50kWのものを2基使用しており、1台車1モータ方式を採用している。またブレーキ装置も三菱電機製である。
台車は9201 - 9204が住友金属製FS-89Aで、9205が同社製FS-89Bで全車両、空転防止用砂撒装置を備えている。
9205のみ新製時よりシングルアームパンタを装備する。
主要諸元
- 製造年:1992年(平成4年)(9201・9202)・1993年(平成5年)(9203・9204)・1994年(平成6年)(9205)
- 全長:13,500mm
- 全幅:2,360mm
- 全高:3,850mm
- 自重:19.0t
- 車体構造:全金属製
- 定員(着席):72(30)人
- 電動機
- 出力:50kW×2基
- 駆動方式:平行カルダン方式
- 制御方式:VVVFインバータ制御方式
- 制動装置:ME38LM型(三菱電機製)
現況
製造当初のVVVF装置からIGBT素子を用いたVVVF装置へ順次交換されていたが、最後まで未更新だった9205が2017(平成29)年2月に更新後出場した為、全て完了した。
塗装及び広告車両
2017年11月現在
- 9201 : ハイデルベルク号
- 9202 : 金氏高麗人参(株)・(神秘の健康力)
- 9203 : フジバンビ(黒糖ドーナツ棒)
- 9204 : 金氏高麗人参(株)・(神秘の健康力)
- 9205 : 明和不動産(2016年1月まで1351が掲載していたものに若干デザイン変更したもの)
9201は新製時より約6ヶ月間はハイデルベルク号になるまで、白色アイボリーベースに深茶色と深緑色のデザインで運用していたが、後にロゴと市章が掲載された。2017(平成29年)3月より車両後部の紋章より後部の深緑色の線がドイツ国旗色(上より黒・赤・黄)に追加変更された。残りの4両は塗装は白地で各車両毎にオリジナルデザインの塗色が施されている(9203,9204は同色)が広告車両になる事が多いため、なかなか見る事が出来ない。
9201は2018(平成30)年1月に外部の全面塗装を施し、客席シートの張り替えも施した。但しデザインは従来のままである。
画像
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9201「ハイデルベルグ号」
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9201 運転台
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9201 車内
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9202
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9202 広告電車
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9202 車内
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9203
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9205
参考文献
- 「熊本市電70年」細井敏幸(著) 1995/02/14
- 中村弘之『熊本市電が走る街今昔』JTBパブリッシング(JTBキャンブックス)、2005年。