噴火災害による人的被害記録の年表 (1900年以降)
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噴火災害による人的被害記録の年表 (1900年以降)(ふんかさいがいによるじんてきひがいきろくのねんぴょう(1900ねんいこう) )では、記録に残る火山噴火災害の人的被害記録のうち、1900年代以降のものを略年表一覧形式で解説する。
なお、死者1,000名以上の大規模火山災害については太文字とした。
1900年代以前の年表については「噴火災害による人的被害記録の年表」を参照
1900年代
- 日本・安達太良山(福島県) - 明治33年7月17日、火口の硫黄採掘所全壊により死者72名、負傷者10名、山林耕地被害[1][2]。
- 日本・御鉢(霧島山)(宮崎県・鹿児島県) - 2月16日、爆発により死者2名、重傷者3名[2]。
- フランス・プレー山(マルティニーク) - 5月2日、火砕流により麓のサン・ピエール市が全滅、住民約28,000人が死亡[3][4]。
- 日本・伊豆鳥島(東京都) - 明治33年8月7日から9日のいつかで全島民125名死亡[1][4]。
- セントビンセント・グレナディーン・スフリエール山(セントビンセント島) - 火砕流により死者1,680名[5]。
- グアテマラ・サンタマリア火山(ケツァルテナンゴ県) - 火砕流・火山性ガス・飢饉により死者4,500名[5]。
1910年代
- 日本・浅間山(長野県・群馬県) - 5月8日、噴石により死者1名、負傷者2名。同年8月15日にも噴石があり、死者2名・重軽傷者数十名[2]。
- フィリピン・タール山(ルソン島) - 火砕流および津波により死者1,335名[5]。
- 日本・桜島(鹿児島県) - 大正3年1月12日、大噴火(大正大噴火[2])。溶岩流は海まで達し、地震・噴火被害は死者58名、負傷者112名、全焼家屋約2,140戸、全半壊315棟[8][1][7][9]。噴出した火山灰・軽石・溶岩の総量は2立方キロメートルと見積もられており、雲仙普賢岳噴火(1991年)の約10倍、富士山の貞観噴火(864年)と宝永噴火(1707年)を合わせた量に匹敵[10]。鹿児島測候所(現鹿児島地方気象台)の誤った噴火予測を信じた知識階級が逃げ遅れたことが科学不信の碑の碑文に記されている[10]。
→詳細は「桜島爆発記念碑」を参照
1920年代
- 日本・十勝岳(北海道) - 大正15年5月24日、2回目の大爆発による噴石が火口より2.4kmの硫黄鉱山に1分未満で到達、操業中の作業員25名が死亡、高温の岩屑なだれが融雪型火山泥流(ラハール)となり火口より25kmの富良野原野まで25分で到達し死者119名、負傷者12名[10][1][12][13][4][14]。山林・耕地・道路・橋梁・鉄道などに甚大な被害[2]。9月8日にも爆発を起こし、行方不明者2名[12]。
1930年代
- 日本・阿蘇山(熊本県) - 12月18日、噴石により負傷者13名[17]。
- 日本・草津白根山(群馬県) - 10月1日に発生した噴火(M1.8)で発生した火山泥流により硫黄鉱山の工夫2名が飲み込まれ死亡[18]、負傷者7名、山上施設破損甚大[2]。
- 日本・箱根山(神奈川県・静岡県) - 5月10日、大涌谷の噴気孔から異常噴気、死者1名[2]。
- 日本・口永良部島(鹿児島県) - 12月24日より翌1934年1月11日にかけて、噴火により七釜集落全焼、死者8名・負傷者26名・家屋全焼15棟・牛馬、山林耕地に大被害[2]。
1940年代
- 日本・昭和新山(有珠山)(北海道) - 有珠山の側火山。7月11日、火災サージにより負傷者1名、家屋損壊。8月26日にも降灰による窒息で死者1名、家屋焼失[2]。
- フィリピン・ムラピ山(中部ジャワ州) - 火砕流により60余名死亡、6,000人以上が避難[20]。
1950年代
- 日本・阿蘇山(熊本県) - 4月27日、噴石により観光客6名死亡・負傷者90余名[17][2]。
- ニュージーランド・ルアペフ山(北島) - 12月24日に発生した火山湖の決壊による火山泥流が火口より40キロメートル先の鉄橋を破壊、通行中の汽車を飲み込み死者151名[13]。
- 日本・桜島(鹿児島県) - 昭和30年10月13日から17日までに8回の爆発・噴火、死者1名・負傷者7名または9名の人的被害および農作物被害。これ以降2001年現在に至るまで断続的に爆発が続く[8][7][22]。
- 日本・阿蘇山(熊本県) - 昭和33年6月24日、噴石により死者12名、負傷者28名[21][1][17]、建造物に被害[2]。
- 日本・大雪山(北海道) - 7月26日、御鉢平有毒温泉付近で火山性ガスにより登山者2名死亡[2]。
1960年代
- 日本・十勝岳(北海道) - 昭和37年6月29日、噴火噴煙12,000メートル上昇、大正火口付近にあった硫黄採掘現場宿舎の作業員5名が死亡[12][13]、負傷者11名[2]。大正火口の採掘がその後中止される[13]。
- 日本・焼岳(長野県・岐阜県) - 6月17日、水蒸気爆発による噴石により火口付近の山小屋で負傷者2名[2][23]。
1970年代
- 日本・有珠山(北海道) - 10月24日、前日から続く降雨により山周辺ほぼ全域で発生した土石流により死者2名、行方不明者1名、軽傷2名、家屋被害196棟[6][9][2]。
- 日本・桜島(鹿児島県) - 昭和53年7月29日から8月1日にかけて爆発、火山礫による負傷者3名、自動車・家屋窓ガラス破損、鹿児島県鹿児島市吉野町で停電家屋2,500戸の被害が発生[8][22]。
1980年代
- アメリカ合衆国・セントヘレズ山(ワシントン州) - 5月18日朝の山体崩壊により岩屑雪崩と爆風が発生、岩屑雪崩の末端は山頂から28キロメートル地点まで達し[25]、噴煙は上空18,000メートルに達した[26]。火砕流などにより死者57人[21][27]。山の標高は1日で300メートル以上低くなり、広島型原爆2万7000個分に相当するエネルギーが放出された[28]。
- 日本・桜島(鹿児島県) - 昭和60年7月21日、降灰による踏切遮断機誤作動により普通列車と乗用車が衝突事故、負傷者1名[22]。
- コロンビア・ネバドデルルイス火山(カルダス県) - 11月13日の中規模軽石噴火による高温噴出物が山体斜面の万年雪を融解、土石流となって東麓を50キロメートル流下、麓のアルメロ町および近隣町に直撃し死者23,000名以上[29]、負傷者5,485名、崩壊家屋5,680戸、被害者総数17万人[30]。
- 日本・桜島(鹿児島県) - 昭和61年11月23日、直径2メートル(約5トン)の噴石がホテルを直撃、重軽傷6名[22]。付近の飼料乾燥室全焼[2]。
- カメルーン・ニオス湖(北西州) - 8月21日夜に火山湖底地下マグマ由来の二酸化炭素ガスが大量噴出し住民1,700人と家畜3,000頭が窒息死[31]。
1990年代
- インドネシア・ケルート山(東ジャワ州) - 30名以上死亡、負傷者数百名[32]。
- 日本・阿蘇山(熊本県) - 3月26日、4月18日、10月19日の3回に渡って火山性ガスにより各死者1名を記録[17]。
- 日本・普賢岳(長崎県) - 平成3年5月26日の火砕流で負傷者1名[10]、6月3日に発生した火砕流により死傷者52人[1][21]、土石流などにより家屋被害2,511棟[10]。2014年の御嶽山噴火が発生するまでは戦後最大の人的被害[33]。
- フィリピン・ピナトゥボ山(ルソン島) - 6月12日に火山噴出物の堆積による建造物倒壊で死者約800人[16]。噴火の影響によりアメリカ軍クラーク空軍基地が使用不能となり撤退[34]。20世紀最大の噴火と言われる[35]。
- パプアニューギニア・タブルブル山・ブルカン火山(ラバウル市) - 同時噴火によりラバウル市が壊滅的被害[36]。直前噴火予測により全住民避難、死者5名[37]。
- 日本・阿蘇山(熊本県) - 5月29日、火山性ガスにより死者1名[17]。
- インドネシア・ムラピ山(中部ジャワ州) - 60人以上死亡、約6,000人が避難[16]。
- フィリピン・パーカー山(ミンダナオ島) - 噴火口崩壊により少なくとも死者70名、行方不明者30名[16]。
- 日本・焼岳(長野県・岐阜県) - 2月11日、南東山麓の工事現場で熱水性の水蒸気爆発発生、作業員4名死亡[2]。
- 日本・阿蘇山(熊本県) - 11月23日、火山性ガスにより観光客2名死亡[17][2]。
- イギリス・モントセラト島(小アンティル諸島) - 降灰により臨時首都ブレイズが壊滅状態となり、火砕流により20名が死亡または行方不明[16]。
- 日本・八甲田山(青森県) - 7月、山麓窪地に滞留していた炭酸ガスにより、訓練中の陸上自衛隊員3名が死亡[2]。
- 日本・安達太良山(福島県) - 9月、火山性ガスにより、登山者4名死亡[2]。
2000年代
- エクアドル・トゥングラウア火山(アンデス山脈) - 7月18日現在で死者1名・避難者約12,000にのぼる人的被害、火山所在地近辺の農地・家畜に大きな被害[40]。
- フィリピン・マヨン山(アルバイ州) - 8月の噴火により直接被害はなかったものの、その後の台風により中腹の火山泥が流出し死者1,000名以上[41]。
2010年代
- インドネシア・ムラピ山(中部ジャワ州) - 死者386人、40万人が避難[21][16]。
- グアテマラ・パカヤ火山(エスクィントラ県) - 噴火と熱帯暴風雨により死者・行方不明者165名、被災家屋3万戸、総被災者数10万人[42]。
→詳細は「2014年の御嶽山噴火」を参照
- インドネシア・シナブン山(北スマトラ州) - 2月1日、火砕流などで少なくとも14名死亡、3名負傷[16][45][11]。
- インドネシア・ケルート山(東ジャワ州) - 2月14日、建造物倒壊などにより2名死亡[32]。
脚注
- ^ a b c d e f g h “過去に発生した火山災害”. 気象庁. 2015年5月1日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at “主な火山災害年表” (PDF). 気象庁. 2015年5月2日閲覧。
- ^ “モン・プレー火山 1902年 (西インド諸島)”. 財団法人消防科学総合センター・消防防災博物館. 2015年5月1日閲覧。
- ^ a b c d e 早川由紀夫. “噴火に備える(長期予知)Long-term prediction” (PDF). 群馬大学. 2015年5月2日閲覧。
- ^ a b c d e f g “ネバド・デル・ルイス火山1985年噴火(コロンビア)”. 財団法人消防科学総合センター・消防防災博物館. 2015年5月1日閲覧。
- ^ a b “197701:1977年(昭和52年) 有珠山噴火”. 内閣府. 2015年4月30日閲覧。
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- ^ a b c d e “火山防災エキスパート派遣に係る参考資料” (PDF). 内閣府 (2001年8月24日). 2015年4月30日閲覧。pp.5.
- ^ a b c 雲仙復興事務所 (2001年3月). “普賢さんとわたしたち【教師用資料】”. 国土交通省. 2015年5月1日閲覧。
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- ^ “ODAメールマガジン第189号”. 外務省国際協力局 (2010年). 2015年5月2日閲覧。中段「自然災害と観光資源の宝庫・グアテマラ」。
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- ^ “御嶽山「噴火の証言」”. NHKアーカイブス. 2015年4月30日閲覧。
- ^ “インドネシアの火山で噴火、死者14人”. CNN (2014年2月2日). 2015年5月1日閲覧。