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二人の貴公子

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1634年の四折版の表紙

二人の貴公子』(ふたりのきこうし、二人のいとこの貴公子The Two Noble Kinsmen)とは、ジャコビアン時代喜劇。最初の出版は1634年。かつては作者が誰かについて論争があったが、現在ではジョン・フレッチャーウィリアム・シェイクスピアの合作ということで研究者たちの合意を見ている[1]。原作はジェフリー・チョーサー作『カンタベリー物語』の中の『騎士の話』である。シェイクスピアとフレッチャーの分担についても研究が進められ、たとえば、ハレット・スミスは『リヴァーサイド版シェイクスピア』の中で、「韻律の特徴、語彙、合成語、特定の縮約の頻度、比喩の種類と使用、特定のタイプの特徴的な行」をその鍵として挙げ[2]、以下の通りに分類した。(細かい点については異論もあるが、研究者たちも概ねこれに同意している)。

プロローグ フレッチャー
第1幕 第1場 - 第3場 シェイクスピア
第1幕 第4場 - 第5場 (不明)
第2幕 第1場 シェイクスピア
第2幕 第2場 - 第6場 フレッチャー
第3幕 第1場 シェイクスピア
第3幕 第2場 - 第6場 フレッチャー
第4幕 第1場 フレッチャー
第4幕 第2場 (不明)
第4幕 第3場 フレッチャー
第5幕 第1場 1 - 33行 フレッチャー
第5幕 第1場 34 - 173行 シェイクスピア
第5幕 第2場 フレッチャー
第5幕 第3場&第4場 シェイクスピア
エピローグ フレッチャー

創作年代とテキスト

『二人の貴公子』と同時代の他の作品との関連から、この劇が書かれ、上演されたのは1613年から1614年と言われている。ベン・ジョンソンの1614年の戯曲『バーソロミューの市(Bartholomew Fair)』第4幕第2場に、『二人の貴公子』の主役の1人パラモンへの言及があり、これは当時の観客が『二人の貴公子』を知っていたということを意味している。さらに、フランシス・ボーモントFrancis Beaumont)の『The Masque of the Inner Temple and Gray's Inn』(1613年)の2つめの幕間狂言には『二人の貴公子』の簡略版が使われている。

『二人の貴公子』が書籍出版業組合記録に登録されたのは1634年4月8日で、その年のうちに書籍商ジョン・ウォーターソン(John Waterson)によって四折版が出版された。印刷はトマス・コーツ(Thomas Cotes)。なお、「ファースト・フォリオ(最初の二折版)」(1623年)はじめどの二折版にもこの劇は収録されていないが、その代わりに、1679年の「second Beaumont and Fletcher folios(第二ボーモント&フレッチャー・フォリオ)」に収録されている[3]

登場人物

  • ヒュメーン(Hymen)
  • テーセウス(Theseus)
  • ヒポリタ(Hippolita) - テーセウスの花嫁。
  • エミーリア(Emelia) - テースウスの妹。
  • (エミーリアの侍女 Emelia's Woman)
  • 妖精(Nymphs)
  • 三人の王妃(Three Queens)
  • 三人の勇敢な騎士(Three valiant Knights) - パラモンの仲間。
  • パラモン(Palamon) - 二人の貴公子の1人。エミーリアに恋する。
  • アーサイト(Arcite) - 二人の貴公子の1人。エミーリアに恋する。
  • (ウァレーリウス Valerius)
  • ペイリトオス(Perithous)
  • (伝令 A Herald)
  • (紳士 A Gentleman)
  • (使者 A Messenger)
  • (召使い A Servant)
  • (求婚者 Wooer)
  • (護衛 Keeper)
  • 牢番(Jaylor)
  • 牢番の娘(His Daughter) - パラモンに恋する。
  • (牢番の弟 His brother)
  • (医師 A Doctor)
  • (四人の田舎者 Countreymen)
  • (二人の牢番の友人 2 Friends of the Jaylor )
  • (三人の騎士 3 Knights) - アーサイトの仲間。
  • (ネル Nel、他)
  • 田舎娘たち(Wenches)
  • 太鼓叩き(A Taborer)
  • ジェロルド(Gerrold) - 学校教師。

あらすじ

チョーサー『騎士の話』の表紙(エルズミア写本 Ellesmere manuscript

恋愛悲喜劇『二人の貴公子』は、チョーサーの「騎士の話」をベースにし、本筋と並行するサブプロットを追加したものである。


いとこで親友でもあるパラモンとアーサイトは、自分たちの都市テーバイの敗戦後、捕虜としてアテナイに連れてこられる。牢獄の窓から二人はエミーリア王女を見、ともに恋に落ちる。二人の友情は途端に敵愾心に変わる。

アーサイトはアテナイから追放される。しかし、エミーリア恋しさに変装してアテナイに舞い戻り、エミーリアの従者となる。

一方、牢獄に残されたパラモンに牢番の娘が恋をする。娘はパラモンを逃がす。

パラモンはアーサイトと再会する。エミーリアを巡って、二人は決闘することにする。

パラモンに捨てられた牢番の娘は狂ってしまう。求婚者はパラモンに変装して、娘を治そうとする。

決闘の前にアーサイトは神に勝利を祈る。パラモンはエミーリアとの結婚を祈る。エミーリアは二人の無事を祈る。

アーサイトが決闘に勝利する。しかし、その直後落馬する。アーサイトは、いとこのパラモンにエミーリアと結婚してくれるよう頼んでから、息を引き取る。

上演史

1613年から1614年頃に公演されたと言われるが、記録が示唆しているのは1619年の宮廷での上演である。1664年王政復古で劇場が再開された時、詩人で劇作家のサー・ウィリアム・ダヴェナント(William Davenant)がDuke's Companyのために『二人の貴公子』を改訂し、『The Rivals(恋敵)』の題名で上演した。トマス・ベタートン(Thomas Betterton)が「フィランダー」(パラモンのこと)を演じた。サミュエル・ピープスはダヴェナント版を見て、「優れた劇ではないが、演技は良い」(1664年9月10日)と書き残した[4]

大衆文化の中の『二人の貴公子』

『二人の貴公子』はこれまで一度も映像化されたことのない唯一のシェイクスピア劇である[5]

ザ・シンプソンズ』15シーズンの「酔いどれ夫婦(Co-Dependent's Day)」の中で、モー・シズラックが迂闊にも1886年産のシャトー・ラトゥール(Château Latour)のボトルを手放してしまう。モーが涙を拭くために使ったのも金では買えない稀少品、つまり、『二人の貴公子』のオリジナル原稿だった。

参考文献

  • Erdman, David V., and Ephim G. Fogel, eds. Evidence for Authorship: Essays on Problems of Attribution. Ithaca, N.Y., Cornell University Press, 1966.
  • Evans, G. Blakemore, textual editor, The Riverside Shakespeare. Boston, Houghton Mifflin, 1974.
  • Halliday, F. E. A Shakespeare Companion 1564-1964. Baltimore, Penguin, 1964.

日本語訳テキスト

脚注

  1. ^ Erdman and Fogel, Evidence for Authorship, pp. 486-94; see also pp. 433-35, 467-69.
  2. ^ Hallet Smith, in The Riverside Shakespeare, p. 1640.
  3. ^ Halliday, Shakespeare Companion, p. 507.
  4. ^ Halliday, Shakespeare Companion, pp. 416, 507.
  5. ^ IMDb Title Search

外部リンク