L-アラビノースオペロン
L-アラビノースオペロン (L-arabinose operon) は、大腸菌 (Escherichia coli) がアラビノースを異化するために必要な酵素をコードするオペロンである。araやara BADオペロンとも呼ばれる。正負両方の制御を行い、アロステリック効果を実現する。[1]
1970年代から分子生物学の分野で興味を持たれ、遺伝学、生化学、生理学、生物物理学等の分野でも熱心に研究されてきた。
大腸菌では、アラビノースはペントースリン酸経路の中間体であるキシルロース-5-リン酸に変換され[2]、代謝経路に入る。
構造
アラビノース異化に必要な酵素をコードする構造遺伝子はaraB、araA、araDであり、araBADと総称される。araCは調節遺伝子である。araBADとaraCは、反対の方向に転写される[2]。
- araAは、L-アラビノースとL-リブロースの異性化を触媒するL-アラビノースイソメラーゼをコードする。
- araBは、(L/D)-リブロースをリン酸化して(L/D)-リブロース-5-リン酸を形成する反応を触媒するリブロキナーゼをコードする。
- araDは、L-リブロース-5-リン酸とD-キシルロース-5-リン酸のエピマー化を触媒するL-リブロース-5-リン酸-4-エピメラーゼをコードする。
オペレーターはaralとaraO2で、araCとaraBADとの間に位置する。
aral1とaral2は、発現を誘導するDNA結合部位である。
5' | araC | araO | araI | araB | araA | araD | 3' |
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レギュレーター | オペレーター | 構造 |
機能
araオペロンは、AraCタンパク質によって制御される。
アラビノースが存在しない場合は、二量体のAraCタンパク質はaral1とaraO2に結合し、DNAとの間でループ構造を形成する。このループはプロモーターへのRNAポリメラーゼ結合を阻害して転写を抑制し、構造遺伝子の発現は抑制される[2]。
アラビノースが存在する場合は、アラビノースがAraCに結合して二量化を阻害し、DNAとのループ構造は形成されなくなる。これらのAraC-アラビノース複合体はaral1とaral2に結合し、転写を促進するアクチベーターとして機能する[2]。
基質 | タンパク質 | 機能 | 可逆 | 生成物 |
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L-アラビノース | AraA | イソメラーゼ | yes | L-リブロース |
L-リブロース | AraB | リブロキナーゼ | no | L-リブロース-リン酸 |
L-リブロース-リン酸 | AraD | エピメラーゼ | yes | D-キシルロース-リン酸 |
AraC-アラビノース複合体は、RNAポリメラーゼがプロモーターに結合し、araオペロンを転写するために必須である。また、活性化のためには、aralへCRP(カタボライト遺伝子活性化蛋白質、CAPとも)と環状AMPの複合体が結合することも必要である。そのため、活性化はアラビノースと環状AMPの存在に依存する[2]。
関連項目
出典
- ^ Watson, James (2003). Molecular Biology of the Gene. pp. 503
- ^ a b c d e Schleif, Robert. (2010). “AraC protein, regulation of the l‐arabinose operon in Escherichia coli, and the light switch mechanism of AraC action”. FEMS microbiology reviews 34 (5): 779-796. doi:10.1111/j.1574-6976.2010.00226.x.