パイ投げ
パイ投げ(パイなげ)は、人間の顔面などに向かってパイを投げつけること。パイ皿にホイップクリームを大量に盛ったものを投げつけることが多い。スラップスティックコメディのドタバタでしばしば行われるが、政治家に対する抗議、あるいは単なる悪戯目的で行われることもある。近距離であれば顔に向かって平手気味に叩きつけるのが一般的である。
パイ投げについて
パイ投げで用いられるパイは、普通に食されるものとは少々異なり、大抵はパイ皿に白いホイップクリームが大量に盛られている。投げつけられた人物の顔には白いクリームがたっぷり附着して、それまでのすました顔がとたんに喜劇的なものとなる。スラップスティックコメディでは、投げつけられた人間もいずこかからパイを取り出し投げ返すので、途端にパイ投げ合戦に発展し、混迷を極める事態に陥る。
パイ投げを撮影する際には、本物のパイを使うこともあるが、調達や見栄え、後かたづけの手間を考え、食用のホイップクリームの代わりにシェービングクリームを盛りつけてあることが多い。
パイ投げに参加した人間は、顔面のみならず体中にクリームが附着して服がひどく汚れてしまうので、事後のクリーニングは必須である。従って、パイ投げに臨む人間は、一張羅ではなく汚れても構わない服装をしておくべきであろう。
パイ投げの起源
なお、パイ投げの起源は、古代・中世中国における麻雀の雀士が身につけていた暗器術「牌投げ」に由来するという説が一般的である。世に「匙を投げる」「賽は投げられた」なる格言があるように、身近な物を投擲用の武器とすることは世界中で見られる闘技であった。雀士は身に危険が迫ると、常に携帯している麻雀牌を敵に投げつけて危地を脱した。この「牌投げ」が当時中世中国に来訪していた宣教師の目に止まり、西洋に伝えられた。
ところが彼は麻雀牌を菓子の一種と勘違いしてしまい、伝来の過程で牌がパイに変化した。それに伴い殺傷力もなくなり、喜劇の道具に堕したのである。パイ投げで用いられるパイの上半分が白いクリームで彩られているのは、多くの麻雀牌の腹が白いことに起源を持つ。
余談であるが、円周率のことをπと表現するのは、パイの形状に由来することは言うまでもない。
参考文献
- 『世界の珍拳・怪拳』(民明書房刊)