香典
香典(こうでん)とは、死者の霊前に供える金品をいう。香奠、香料とも。「香」の字が用いられるのは、香・線香の代わりに供えるという意味であり、「奠」とは霊前に供える金品の意。通例、香典は、香典袋(不祝儀袋)に入れて葬儀(通夜あるいは告別式)の際に遺族に対して手渡される。
香典袋
香典袋は、葬儀の宗教・相手の宗旨宗派に合わせて使い分ける。
仏式の香典袋は、白無地か蓮の花の絵柄が入った包みに、「御霊前」(浄土真宗では「御佛前」)・「御香料」・「御香典」と表書きし、白黒あるいは双銀(銀一色)の結び切りの水引をかける。
神式の香典袋は、白無地の包みに、「御霊前」・「御玉串料」・「御榊料」と表書きし、白黒あるいは双白(白一色)の結び切り水引をかける。
キリスト教式の香典袋は、白無地の封筒か、「お花料」の表書きや白百合・十字架などが印刷された市販の封筒を用いる。水引はかけない。
どの宗教によるものか不明な場合は、白無地の包みに、「御霊前」と表書きし、白黒あるいは双銀の結び切り水引をかける。
香典袋の書き方
香典袋の表には、「御霊前」などの文字の下に薄墨で自己の姓名を書く。袋の裏は、下側を上にする。袋の中には白無地の封筒(中袋)に紙幣を入れる。中袋の裏には自己の住所・自己の姓名・封入した金額を明記する。
香典の金額
香典の金額は、故人・遺族との付き合いの深さ、自己の地位・年齢、地域などによって異なる。おおむね、故人が、父母ならば5万円から10万円、兄弟姉妹ならば3万円から5万円、それ以外の親族ならば1万円から3万円、勤務先関係・友人・隣近所ならば5000円から1万円であることが多い。
香典返し
本来、香典は霊前に供える物であるため、香典返しは必要ない。しかし現在では、忌明けに遺族が香典返しを送ることも多い。忌明けとは、仏式ならば四十九日の法要後、神式ならば五十日祭を終えた後である。キリスト教では忌中という概念はないが、死後一ヶ月後の昇天(召天)記念日のあとに仏式などに倣って香典返しを送る。
香典返しの金額は、香典の3割から5割であることが多い。一律に同じ物を贈ることもあれば、香典の額に応じて変えることもある。香典返しの品は、食品や消耗品が多いが、茶・菓子・のり・砂糖・タオル・寝具・せっけん・食器など様々である。
香典返しには、仏式ならば「志」「忌明志」と表書きし、白黒あるいは灰色の結び切りの水引をかける。関西地方では、「満中陰志」と表書きし、黄白の水引をかける。「中陰」とは四十九日のことである。神式では「志」「偲草」「しのび草」と表書きし、白黒あるいは双銀の結び切り水引をかける。キリスト教式では、「昇天記念」(カトリック)・「召天記念」(プロテスタント)・「感謝」・「志」と表書きする。水引はかけない。
香典返しには、会葬御礼と忌明けの報告を兼ねた挨拶状を同梱する。挨拶状には故人の戒名を記すことも多い。仏式の文中に用いられる「七七日忌」「七七忌」とは四十九日のことである。