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泉州弁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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泉州弁(せんしゅうべん)は、大阪府南西部の泉州地域(旧和泉国)で話されている日本語の方言。 行政区分と同様に泉北地域と泉南地域に大別され、厳密には堺弁泉北弁泉南弁に分類される。尚、泉南弁和歌山弁阿波弁等との類似点が多く、大阪弁とは類似点が比較的少ない為,南近畿方言に属する説もある。尚、しょっちゅう播州弁と比較される事も有る。

特異なのは泉南地域のほうで、経過や理由の「~なんだよ」が「~やし」または「~やしよ」に、「て」と「あ」または「や」の音が重なった場合に「ちゃ」になるなどの特徴がある。

文法的特徴

疑問の終助詞

泉州弁ではYes/No疑問文で用いられる疑問の終助詞が2種類ある。目下若しくは自分に関して尋ねる場合は「か」(例:いけるか?)が、それ以外・目上に用いる場合は「け」(例:いけるけ?)となる。泉州弁は「怖い」「汚い」という評価があるが、それはこの現象が標準語と異なっているためであろう。 なお、疑問詞疑問文の場合は、「な」や「え/い」を用いる。(例:何すんな!「何するの!(反語的に用いられやすい)」、何するえ?「何をする?」)尚、女優の沢口靖子が『タンスにゴンゴン』のCMに出演する際、市川準監督に「泉州弁でやったら?」と言われた事が切っ掛けで、丸出しの泉州弁でCM出演した。

「わ」の融合

淡路弁その他、多くの方言に見られるが、係助詞や間投助詞の「わ」が先行する語と融合する。また、係助詞の「は」と格助詞の「が」の区別が曖昧で、標準語では「が」と言う所を「は」(もしくは、それが転訛した「や」)という。

例:「はら、まだとい」(春はまだ遠い)/「めしゃまだかHL.LLH.」(飯はまだか)

発音的特徴

「せ」音

伝統的な西日本方言の特徴のままに、「せ」が「しぇ」と発音される。人によっては「て」が「ちぇ」に近く発音されることもある。しかし、大体70歳を境としてこの発音は聞かれなくなっている。

語彙的特徴

堺弁

堺弁の特徴

堺市堺区 東区 中区 北区 南区で話されている。女性言葉の堺弁には,ほんのりとした優しい雰囲気がする。 「バリしんどい」→「すごくしんどい」

「エグい」→「ひどい」若しくは「汚い」

「なんしに?」→「どうして?」

尚,堺弁に当たっては,他の泉州弁と表現が異なる為,泉州弁から切り離されるケースも有る。

泉北弁

泉北弁の特徴

河内弁との共通点が多いとされている。堺市と高石では「(それで)ね」に当たる間投助詞がそれぞれ「(ほて)や」「(ほて)よ」となり、異なる。泉南地域では「(ほて)よ」が主に使われる。文法的には「~(し)てやる」に当たる表現が「~したる」、「~(し)てある」にあたる表現が「~したある」もしくは「~したる」となり、大阪弁と変わらない点が泉南方言とよく比較される。 また、「~(なんだ)よ」に当たる表現が「~やけ」もしくは「~やか」となる。 発音に関しては、ほぼ大阪弁と変わらないが、現代でも老人層で「せ」が「しぇ」と発音されるなど、古い発音を保持している。然し、泉北ニュータウントリヴェール和泉等の大規模な新興住宅地が出来た為に、大阪弁・泉南弁とのバイリンガルは進んでいると言えるだろう。また、泉北地域在住の住民は泉南弁と一緒にされると嫌がる人も多い。

泉北弁(高石)での会話例

A「けや、ちみたいなあ」(今日は冷たいね/寒いね)
B「せや、零下いたちゅてるで」(そうだね。零下行ったっていうね)
A「そらさっぷいはずや」(それは寒いはずだ)
B「早よ家もって風呂でつくもろ」(早く家に戻って風呂で暖まろう)
A「しもた、家ちゃんとかいでこずや。ほな。」(しまった、家、ちゃんと鍵かけてきてないぞ。じゃあね)

恐らく50歳を境として、このような方言を話せる人が減っている。

堺弁での会話

A 「昨日の事なんやけどちょい聞いて。」 (昨日のことなんだけどちょっと聞いて)
B 「どないしたん?」 (どうしたの)
A 「パッツンに追いかけられてん」 (パトカーに追いかけられたんだ)
B 「ホンマかいな!そらエグいな」 (本当に それは大変だったね)
A 「ホンマやて!バリエグかったし。」(本当だよ まじ大変だったよ)
B 「サヨか。ほてどないなってん?」 (そうなんだ。 で、どうなったの)
A 「逃げたけど、ヤバかったわ。」 (逃げたけど、危なかった。)
B 「おつかれやな。」 (大変だったね。)

堺弁は、今の若者が使う、上記の泉北弁とは異なった喋り方である。

泉南弁

泉南弁の特徴

さらに南和泉方言と中泉方言に小別され、南へ行くほど和歌山弁の影響が強い。三重弁と共通した方言も存在。 泉北弁に対して、「~したる」という表現が「~しちゃる」となる(アクセントは同じ)点が非常に特徴的である。 また、「~(なんだ)よ」は「~やし」となる。これは最近の若年層の大阪弁に広まりつつある傾向がある。 発音に関しては、「えい」の発音が標準語や大阪弁と違い、「えー」とならず、二重母音としてはっきり発音される点が特徴的である。 因みに,泉州弁の本場と言われるのは,中和泉方言である。

泉南弁での会話例

母「○○、外出るんやったら、ニンジンとタマネギ買うてきて!買うてきてくれるんやったらかんご持って行きや」(○○、外へ出かけるのならニンジンとタマネギを買ってきて!買いに行ってくれるのなら買い物籠もって行くのよ)
娘「うち、これからツレとこ行くよっていやじょォ。おかんいってきぃや」(私はこれから友達の家に行くから嫌だよ。お母さんが行きなよ)
母「そーけェ、にくそい子ォやで。晩ごはんカレー作っちゃろかぁておもとったのに、もォええわ」(ああそう、かわいらしくない子ね。夕ご飯にカレーを作ってあげようかと思ってたのに、もう知らないわ)
娘「あいしょ、ほんまけ?ほな楽しみにしてるよってに、作っちゃっちょう」(ええっ本当?じゃあ楽しみにしてるから作ってあげてね(作って頂戴ね))
母「ほんま調子のええ子みぃ。うちでかしこいのは犬だけや」(本当に調子のいい子ねえ。我が家で聞き分けのいいのは犬だけだわ)

ただしこれは相当訛りがきつい会話で、実際の若い世代はもう少し標準大阪弁に近いしゃべり方をする。

泉州弁を話す有名人

関連項目