スーパーリーグ (サッカー)
スーパーリーグ The Super League | |
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開始年 | 2021年 |
地域 | ヨーロッパ |
参加チーム数 | 20 |
サイト |
thesuperleague |
スーパーリーグ(The Super League, 法律上の名称:European Super League Company, S.L.)は、欧州のトップクラブで構成され、UEFAチャンピオンズリーグに匹敵する、あるいは取って代わることを目的とした、年間のクラブサッカー大会である。欧州スーパーリーグ(European Super League,ESL)とも呼ばれる。2021年4月に12のクラブによって設立され、最終的に20クラブで争われる計画で創設された。
スーパーリーグの発表は、ファン、選手、監督、政治家、他のクラブ、そしてFIFA、UEFA、各国政府からほぼ全面的に反対された。リーグ結成の発表に対する反発から、イングランドの6つのクラブすべてが撤退の意向を表明、スーパーリーグは、これを受けて、「プロジェクトを再構築するための最も適切なステップを再検討する」と発表した。正式に発表されてから3日後、スーパーリーグは事業を停止することを発表した[1]。
歴史
[編集]前史
[編集]欧州スーパーリーグの創設の提案は、少なくとも1998年にイタリアの企業であるMedia Partnersがこのアイデアを調査した時にさかのぼるが、UEFAがチャンピオンズリーグの拡大に動いたために失敗に終わった[2]。その後20年間にわたって様々な提案がなされてきたが、ほとんど成功しなかった。関連する案としては、プレミアリーグが海外での「第39節」を開催し、有利な海外市場を活用するという長年の野望があった。
報道によると、スーパーリーグは、独占的な立場にあるUEFAが欧州サッカーの財政的な可能性を十分に実現することを拒み、それが各クラブのビジネスの成長やインフラの整備を妨げていることへの不満から設立されたとされる[3]。ある設立クラブの幹部は匿名を条件に、UEFAがチャンピオンズリーグの改革に同意すれば、スーパーリーグは解散しても構わないと考えていたといい、また別の幹部は、この計画は「手探り」だと思わされていたと述べている[4]。
2020年10月、Sky Sportsは、国際サッカー連盟(FIFA)がUEFAチャンピオンズリーグに代わるものとして、NHL、NFL、NBA、MLBといったアメリカのメジャーリーグに類似した、最大18チームによるラウンドロビン制とポストリーグ・プレーオフ方式の降格なしのノックアウト・トーナメントを含む「欧州プレミアリーグ」を提案していると主張した。バルセロナは、会長のジョゼップ・マリア・バルトメウが辞任する前日に、スーパーリーグへの参加提案を受け入れている[5]。
しかし、2021年1月21日、FIFAとサッカーの全6大陸連盟(AFC、CAF、CONCACAF、CONMEBOL、OFC、UEFA)は、離脱した欧州スーパーリーグの結成を拒否する声明を発表した[6]。この提案は、マンチェスター・ユナイテッドやリバプールなどのクラブによって議論された。提案文書によると、このようなリーグは2022-23シーズンに開始され、プレミアリーグの6クラブを含む15の常設メンバーで構成され、各クラブには加盟時に最大3億1000万ポンド、その後1シーズンごとに最大2億1300万ポンドが支払われることになっている[7]。
創設
[編集]2021年4月18日、ニューヨーク・タイムズが、イングランド、イタリア、スペインの12クラブが欧州スーパーリーグの結成に基本合意し、各チームが大会に参加することで4億ドル(2億9000万ポンド)以上の収入を得ることができると報じた[8]。同日、創設クラブが発信したプレスリリースによってリーグが発表された[9]。プレスリリースには、「より質の高い試合を提供し、サッカーのピラミッド全体に追加の財源を提供する」と同時に、「リーグの収益に応じて増加する上限なしの連帯金を長期的に約束することで、著しく大きな経済成長と欧州サッカーへの支援を提供する」という意図が記されていた[9]。また、男子に加えて、女子のスーパーリーグも「可能な限り早く」設立する予定[9]。創設クラブとして、スペインのレアル・マドリード、FCバルセロナ、アトレティコ・マドリード、イングランドのマンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、リヴァプール、チェルシー、アーセナル、トッテナム・ホットスパー、イタリアのユヴェントス、インテル・ミラノ、ACミランの12クラブが名を連ねた[9]。また、初代会長にレアル・マドリード会長のフロレンティーノ・ペレスが就任した[9]。
この発表は、欧州のエリートクラブからの圧力を受けて、2024-25シーズンからUEFAチャンピオンズリーグを刷新・拡大し、試合数と収入を増やすことを意図したUEFA執行委員会の会合の前夜に行われたものだった[10]。 UEFA、イングランドのFAとプレミアリーグ、イタリアのイタリアサッカー連盟とセリエA、スペインのスペインサッカー連盟とラ・リーガは、スーパーリーグの開催を阻止するために「司法およびスポーツのあらゆるレベルで、利用可能なあらゆる手段を検討する」と発表した[11]。
創設時点で、ドイツのバイエルン・ミュンヘン、ボルシア・ドルトムント、フランスのパリ・サンジェルマンは参加を拒否し、不参加を表明した。これに対しUEFAはブンデスリーガとリーグ・アンのクラブに感謝を述べた[12][13][14][15]。
発表されたスーパーリーグの構想には、現役の選手やコーチ、OB、ファンからも多くの批判を浴びた。
チェルシーはブルース・バック会長が選手と面会した後、イングランドのクラブとしては最初に撤退を表明した[16]。2021年4月20日、マンチェスター・シティがスーパーリーグからの撤退手続きを正式に開始したことを確認した。UEFA会長のアレクサンダー・チェフェリンは、彼らが「ヨーロッパのサッカーファミリー」に戻ることを歓迎する声明を発表した[17]。アーセナル、リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナム・ホットスパーもその日のうちに脱退し、チェルシーは4月21日の早朝に脱退した[18]。イングランドのクラブの撤退を受けて、スーパーリーグは4月21日、「現在の状況を考慮し、サッカー界全体の連帯感を強化しつつ、ファンに最高の体験を提供するという目標を常に念頭に置きながら、プロジェクトを再構築するための最も適切な手段を再考する」と述べた。 ユヴェントスの会長であり、スーパーリーグの副会長を務める予定のアンドレア・アニェッリは、この失敗をイギリスのEU離脱のせいとして、その日のうちに、イングランドの6つのクラブが撤退したことで、スーパーリーグのプロジェクトが現在の形で進む可能性は低いと付け加えたが、彼はまだこのプロジェクトを信じていた[19]。この後1時間も経たないうちに、アトレティコ・マドリードとインテル・ミラノの両チームがスーパーリーグからの撤退を正式に発表、ACミランもその直後に撤退を表明した[20]。さらに、2023年7月13日にはユヴェントスも脱退手続きを始めたことを表明した[21]。
創設クラブ
[編集]本大会の創設メンバーとして12のクラブが発表され、開幕前にさらに3つのクラブが加わることになる。イングランドの「ビッグ6」をはじめ、スペインの3クラブ、イタリアの3クラブが含まれている。設立された15のクラブは、大会に永続的に参加し、組織を統括することになる[9]。
- アーセナル
- チェルシー
- リヴァプール
- マンチェスター・シティ
- マンチェスター・ユナイテッド
- トッテナム・ホットスパー
- インテル・ミラノ
- ユヴェントス
- ミラン
- アトレティコ・マドリード
- バルセロナ
- レアル・マドリード
バイエルン・ミュンヘン、ボルシア・ドルトムント、パリ・サンジェルマンの3チームはスーパーリーグの初期メンバーとして発表されておらず、3チームともこの大会を公に非難しているが、これらのチームは招待されていたのではないかと推測されていた。スーパーリーグのフロレンティーノ・ペレス会長は、この3クラブが創設クラブの一員として招待されていなかったことを示唆した。
大会形式
[編集]本大会には、設立された15のクラブを含む20チームが参加する。残りの5チームは、前シーズンの成績をもとにした予選方式で決定される。8月以降、チームは10チームずつ2つのグループに分けられ、クラブが国内リーグに参加できるように、ミッドウィークにホームアンドアウェイの試合を行う。各グループの上位3チームが準々決勝に進出し、各グループの4位と5位のチームが2本勝負のプレーオフを行い、最後の2つの準々決勝進出チームを決定する。残りの試合はシーズン末の4週間に行われ、準々決勝と準決勝は2本勝負、5月の決勝は中立地で1本勝負で行われる[9]。
賞金
[編集]この大会では、クラブへの連帯支払いに上限を設けず、リーグの収益に応じて増加させることを特徴としている。また、創設クラブには、インフラ投資計画とCOVID-19パンデミックの影響を相殺するために35億ユーロが支払われる[9]。アメリカの投資銀行大手のJPモルガン・チェースは、このスーパーリーグ計画に50億ドルの資金提供を約束したと言われている[22]。
経営陣
[編集]役職 | 名前 | その他の役職 |
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会長 | フロレンティーノ・ペレス | レアル・マドリード会長 |
副会長 | アンドレア・アニェッリ | ユヴェントス会長 |
ジョエル・グレーザー | マンチェスター・ユナイテッドの共同経営者 | |
ジョン・W・ヘンリー | リヴァプールのディレクター | |
スタン・クロエンケ | アーセナルのオーナー |
批判
[編集]創設クラブとなるプレミアリーグ6クラブの各サポーター団体も強く反対を表明した[23]。
マンチェスター・ユナイテッド元監督のアレックス・ファーガソンは「世界中のファンたちは今の大会のありのままを愛しているのだ」と述べ、否定的な見解を示した[24]。アーセナル元監督のアーセン・ベンゲルも批判意見を述べた[25]。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領とイギリスのボリス・ジョンソン首相[26]もこの計画に反対を表明した[27]。
脚注
[編集]- ^ “Super League suspended: Why English clubs pulled out, and what's next for them and UEFA” (英語). ESPN.com (2021年4月21日). 2021年4月22日閲覧。
- ^ “Football: Uefa winning `super league' war” (英語). The Independent (2011年10月23日). 2021年4月22日閲覧。
- ^ “Agnelli’s Super League insights suggest battles with Uefa are not over” (英語). the Guardian (2021年4月21日). 2021年4月22日閲覧。
- ^ “European Super League: Splits emerge among breakaway clubs but one 'Big Six' board member vows not to back down” (英語). Sky Sports. 2021年4月22日閲覧。
- ^ “Barcelona president Bartomeu resigns” (英語). BBC Sport 2021年4月19日閲覧。
- ^ “FIFAが”スーパーリーグ構想”にけん制…6大陸連盟会長との連名で声明発表”. サッカーキング (2021年1月21日). 2021年4月21日閲覧。
- ^ Reporter, Martyn Ziegler, Chief Sports. “European Super League would have six Premier League teams – each paid up to £310m to join” (英語). ISSN 0140-0460 2021年4月19日閲覧。
- ^ Panja, Tariq (2021年4月18日). “Top European Soccer Teams Form Breakaway League” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331 2021年4月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g h “The Super League - Press Release”. thesuperleague.com. 2021年4月19日閲覧。
- ^ “UEFA set to approve new Champions League format next week”. AP NEWS (2021年4月16日). 2021年4月19日閲覧。
- ^ “UEFA、各協会と共同で欧州スーパーリーグ構想を非難…強硬措置も示唆”. サッカーキング (2021年4月19日). 2021年4月21日閲覧。
- ^ “欧州スーパーリーグとは?構想の全貌、参加チームまとめ|問題点は? | Goal.com”. www.goal.com. 2021年4月22日閲覧。
- ^ “スーパーリーグ創設に関する議論についての声明”. Borussia Dortmund (2021年4月20日). 2021年4月21日閲覧。
- ^ “FCバイエルンはスーパーリーグに反対”. FC Bayern Munich. (2021年4月20日) 2021年4月21日閲覧。
- ^ “サッカー、欧州スーパーリーグ計画をパリ・サンジェルマンが拒否”. Bloomberg.com. 2021年4月21日閲覧。
- ^ Twomey, Liam. “Chelsea to withdraw from European Super League” (英語). The Athletic. 2021年4月22日閲覧。
- ^ “Ceferin welcomes Manchester City back into European football family” (英語). MARCA (2021年4月20日). 2021年4月22日閲覧。
- ^ “European Super League: John W Henry apologises to Liverpool's fans, players and staff for signing up to competition” (英語). Sky Sports. 2021年4月22日閲覧。
- ^ “Juventus chief blames Brexit for Super League collapse” (英語). POLITICO (2021年4月21日). 2021年4月22日閲覧。
- ^ “ESL cannot now proceed - Agnelli” (英語). BBC Sport 2021年4月22日閲覧。
- ^ “ユヴェントス、欧州スーパーリーグ構想からの脱退手続き開始の声明を発表| Goal.com”. www.goal.com. 2023年9月9日閲覧。
- ^ “European Super League - the key questions: What is it? Who is involved? How likely?” (英語). Sky Sports. 2021年4月19日閲覧。
- ^ “「究極の裏切り」「死を意味する」プレミア6クラブのサポーターが欧州スーパーリーグ参加表明のクラブに憤慨”. 超ワールドサッカー (2021年4月20日). 2021年4月21日閲覧。
- ^ “「CL決勝の夜はいつも特別だった」…名将ファーガソンが物議の欧州スーパーリーグ構想に見解”. 超ワールドサッカー (2021年4月19日). 2021年4月21日閲覧。
- ^ “元アーセナル指揮官のヴェンゲル氏、ESL構想を批判「悪い考えである」”. サッカーキング (2021年4月20日). 2021年4月21日閲覧。
- ^ “「国内のファンを悩ませる」イギリスのジョンソン首相も欧州スーパーリーグ構想に反対”. 超ワールドサッカー (2021年4月19日). 2021年4月21日閲覧。
- ^ “Soccer Fans React To The New 'Super League' News” (英語). The Spun (2021年4月18日). 2021年4月19日閲覧。