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機能和声理論

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機能和声学から転送)

機能和声理論(きのうわせいりろん、: Funktionstheorie[注 1])は、ジャン=フィリップ・ラモーが和声のために諸三和音の各機能を、機能(: fonction)という言葉を使うことなく『和声論』(1722年)で個別化区分した後に、フーゴー・リーマン1893年に体系化し[1]ヴィルヘルム・マーラーがBeitrag zur durmolltonalen Harmonielehre[2][3]1931年に出版して拡大させた理論である[注 2]。日本ではHarmonielehreのlehreにあやかって「機能和声学」と呼ばれることがある。

経緯

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機能和声理論に基づくバッハのコラールの和声分析

キルンベルガーは、数字付き低音のみで和声を示す従来の方法から一歩抜きんでて、長旋法あるいは短旋法の音度に基づくローマ数字による和声分析を用いた。

その後、ザーロモン・ヤーダスゾーンはローマ数字に数字付き低音を同時に付記するなど細かい修正があった[4]が、ローマ数字による和声分析では不十分と感じたフーゴー・リーマンはローマ数字による音度ではなく、トニカを, ドミナントを, サブドミナントをとする記号を用いた。機能和声理論はフーゴー・リーマンからマックス・レーガー、そしてヘルマン・グラブナーへと継承されていった。

このリーマン理論をさらに合理性を保って完成させたのがヴィルヘルム・マーラーである。ヤーダスゾーン以来頻繁に用いられていた丸印を廃止しただけではなく、ナポリ6度に小さなを加え、またリーマンの理論ではイタリック体で表示されていたアルファベットをローマン体へ戻し[5]たことで、和声の識別がリーマンの分類よりも容易になった。画期的であったのが、自著 Beitrag zur durmolltonalen Harmonielehre へローマ数字による和声分析と機能和声学の記号の間の対照表を加えたことである[6]。マーラーのBeitrag zur durmolltonalen Harmonielehreは現在に至るまで何度も出典として引用されている[7][8]

その後、全音階和声で頻繁に発生する空虚五度に対してパウル・ヒンデミット[9]は和音のアルファベットをR, W, Kほかに変え[10]て、詳細な分類を試みた。

特徴

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ハ長調における主要三和音
イ短調和声短音階における主要三和音。短三和音は小文字、長三和音は大文字で示す。
長調では3度下の「並行和音」に「並行(パラレル)」を示す"p"を後置する。短三和音なので小文字で示す。ハ長調の音階上の並行和音は上のとおりである。
短調では3度上の「並行和音」に、長三和音なので大文字の"P"を後置する。イ短調の音階上の並行和音は上のとおりである。
ヘ長調の属7和音の表現例。右上に7の和音であることを示す7を書き、Dの下にバスが第3音なら3、第5音なら5、第7音なら7を書く。バスが第7音の場合は右上に7を書く必要がないので書かない。かつて第3音を示す際には3とイタリックであったが、新規に出版された教科書ではこの必要はなくなっている。
  • Iなどのローマ数字による和声分析をやめ、トニカ、ドミナント、サブドミナント、ドッペルドミナントで和音を区別する。大文字と小文字を両方使用する点は変更がない[11]
  • 音度のVIIに相当する和音は、ローマ数字による和声分析では「Ⅴ7の和音から根音を省略した形」であるとは認めなかった。機能和声理論ではDに斜線を入れて、その真下に3を入れ、右隣に7と書き、短縮ドミナント7の和音ドイツ語版と呼ぶ。

機能和声理論の習得

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ヴィルヘルム・マーラーの編み出した記号も時代によって変化[12]しており、Reinhard Amonはドッペルドミナントに対してDの二重重ねをやめて[13]いる。このほか、各種理論家も独自の細かい修正をフォントにまで加えている。ヴィルヘルム・マーラーの記号も、ディーター・デ・ラ・モッテ[14]ほかによる修正が加えられ[15]現在に至っている。読者の便宜を図って両方の和声学の記号を併記することも英語圏で行われている[16]ドイツでは機能和声理論の教程が著者を変えつつ現在も存続している。

ヴィルヘルム・マーラー式の和音記号に基づいた現代の教科書

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  • Christoph Hempel - Harmonielehre, Das große Praxisbuch Harmonie und Satz vom Choral bis zum Jazz. Mit über 1000 Musikbeispielen.
  • Thomas Krämer - Harmonielehre im Selbststudium.
  • Wilhelm Maler, G. Bialas, und J. Driessler - Beitrag zur durmolltonalen Harmonielehre I. Leuckart, München/Leipzig, 1967, ISBN 978-3-92058-7-004.
  • Wilhelm Maler, G. Bialas, und J. Driessler - Beitrag zur durmolltonalen Harmonielehre II. Leuckart, München/Leipzig, 1967, ISBN 978-3-92058-7-011.
  • Diether de la Motte - Harmonielehre (= dtv 30166). Gemeinschaftliche Original-Ausgabe, 13. Auflage. Deutscher Taschenbuch-Verlag u. a., München u. a. 2004, ISBN 3-423-30166-X.
  • Reinhard Amon - Lehr- und Handbuch zur Funktionstheorie und Funktionsanalyse, ISBN 978-3-70247-6-427.
  • Reinhard Amon - Lexikon der Harmonielehre, ISBN 978-3-47602-5-944.
  • Hermann Grabner - Handbuch der funktionellen Harmonielehre, ISBN 978-3-76492-112-5.
  • Jürgen Ulrich mit Dorothea Ohly (Herausgeber) und Joachim Thalmann (Herausgeber) - Harmonielehre für die Praxis: mit elementarer Satzlehre (Studienbuch Musik) ISBN 978-3-79578-738-7

参考文献

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  • Hugo Riemann - Vereinfachte Harmonielehre oder die Lehre von den tonalen Funktionen der Akkorde, London: Augener & Co., No.9197.
  • 島岡譲ほか - 和声 理論と実習 III
  • Wilhelm Maler, G. Bialas, und J. Driessler - Beitrag zur durmolltonalen Harmonielehre I&II. Leuckart, München/Leipzig, 1967.
  • Thomas Krämer - Harmonielehre im Selbststudium
  • L.K.Weber - Das ABC der Harmonielehre
  • Diether De La Motte=Jeffrey L.Prater - The Study Of Harmony (英語版)
  • Diether De La Motte - Harmonielehre (原著の1992年改訂版)
  • Christoph Hempel - Harmonielehre, Das große Praxisbuch Harmonie und Satz vom Choral bis zum Jazz. Mit über 1000 Musikbeispielen.
  • Reinhard Amon - Lehr- und Handbuch zur Funktionstheorie und Funktionsanalyse

関連項目

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脚注

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注釈

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  1. ^ ドイツ語を直訳すると機能理論である。
  2. ^ Beitrag zur durmolltonalen Harmonielehreは、後日Günter BialasとJohannes Driesslerによる補遺が追加されている。

出典 

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  1. ^ Hugo Riemann:Vereinfachte Harmonielehre oder die Lehre von den tonalen Funktionen der Akkorde, London: Augener & Co., No.9197, n.d. p.V-VIII.
  2. ^ Beitrag zur durmolltonalen Harmonielehre I”. www.amazon.com. www.amazon.com. 2021年6月17日閲覧。
  3. ^ Beitrag zur durmolltonalen Harmonielehre II”. www.amazon.com. www.amazon.com. 2021年6月17日閲覧。
  4. ^ 和声 理論と実習第3巻433ページ。
  5. ^ Beitrag zur durmolltonalen Harmonielehre I, p.VIII
  6. ^ Wilhelm Maler, G. Bialas, und J. Driessler - Beitrag zur durmolltonalen Harmonielehre I. Leuckart, München/Leipzig, 1967, ISBN 978-3-92058-7-004, p.VII-VIII.
  7. ^ Reinhard Amon: Lehr- und Handbuch zur Funktionstheorie und Funktionsanalyse, p.23
  8. ^ Thomas Krämer (b.1952), Harmonielehre im Selbststudium, p.67
  9. ^ Paul Hindemith (1895–1963)”. www.hkb-interpretation.ch. www.hkb-interpretation.ch. 2021年6月17日閲覧。
  10. ^ Diether De La Motte:Harmonielehre, p.271
  11. ^ Christoph Hempel - Harmonielehre, Das große Praxisbuch Harmonie und Satz vom Choral bis zum Jazz. Mit über 1000 Musikbeispielen. p.468
  12. ^ L.K.Weber Das ABC der Hamonielehre, pp.72-73,ナポリ6度をリーマン式に戻している。
  13. ^ Reinhard Amon - Lehr- und Handbuch zur Funktionstheorie und Funktionsanalyse p.11
  14. ^ ディーター=デ=ラ=モッテの和声記号”. note.com/hatoudon. note.com/hatoudon. 2021年6月17日閲覧。
  15. ^ Diether De La Motte:Harmonielehre, p.283
  16. ^ Jeffrey L.Praterによる英訳されたDiether De La Motteの和声学全編を参照のこと。