コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ウラジーミル・プロップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
昔話の形態学から転送)
ウラジーミル・プロップ
1928年
人物情報
生誕 (1895-04-29) 1895年4月29日
ロシアの旗 ロシア サンクトペテルブルク
死没 1970年8月22日(1970-08-22)(75歳没)
学問
研究分野 文学民俗学
研究機関 レニングラード大学
テンプレートを表示

ウラジーミル・ヤコヴレヴィチ・プロップ英語: Vladimir IAkovlevich Propp, 1895年4月29日 - 1970年8月22日)とは、ソビエト連邦昔話研究家である。

概要

[編集]

1895年、ロシア帝国サンクトペテルブルクに生まれる。1932年からレニングラード大学(現サンクトペテルブルク大学)で教鞭を執った。

後に言うところの構造分析を昔話に適用した。たとえば魔女や王様、動物など昔話に登場する主人公は彼らが誰であるかを問題にするかぎりほぼ無限に存在するが、彼らが何を行い、物語内でどんな機能[1]を果たしているかを分析すると、ごくわずかな項で分類できることなどを発見した。主著である『昔話の形態学』は、1928年に出版された当時は全く反響を呼ばなかったが、1958年に英訳が出版されるや数多くの言語に翻訳されるようになり、現在では構造主義の先駆的仕事として評価されている。

昔話の形態学 (Morphology of the Folktale)

[編集]

昔話の構造31の機能分類

  0.導入(α)

  1. 家族の一人が家を留守にする(不在、β)
  2. 主人公にあることを禁じる(禁止、γ)
  3. 禁が破られる(侵犯、δ)
  4. 敵が探りをいれる(探りだし、ε)
  5. 敵が犠牲者について知る(漏洩、ζ)
  6. 敵は犠牲者またはその持ち物を入手するために、相手をだまそうとする(謀略計、η)
  7. 犠牲者はだまされて、相手に力を貸してしまう(幇助、θ)
  8. 敵が家族のひとりに、害や損失をもたらす(加害、A)、家族の成員の一人に何かが欠けている。そのものが何かを手に入れたいと思う。(欠如、a)
  9. 不幸または不足が知られ、主人公は頼まれるか、命じられて、派遣される(仲介・連結の契機、B)
  10. 探索者が反作用に合意もしくはこれに踏み切る(対抗開始まった反作用、C)
  11. 主人公は家を後にする(出発、↑)
  12. 主人公は試練をうけ、魔法の手段または助手を授けられる(寄与者の第一の機能、D)
  13. 主人公は将来の寄与者の行為に反応(主人公の反応、E)
  14. 魔法の手段を主人公は手に入れる(呪具の贈与達獲得、F)
  15. 主人公が探しているもののある場所に、運ばれ、つれて行かれる。(二つの国の間の空間移動、G)
  16. 主人公とその敵が直接に戦いに入る(闘い、H)
  17. 主人公に標がつけられる、傷を負う。(標づけ、J)
  18. 敵対者が敗北する(勝利、I)
  19. 初めの不幸または欠落がとりのぞかれる(不幸または欠落の解消、K)
  20. 主人公は帰還する(帰還、↓)
  21. 主人公は迫害や追跡をうける(迫害、追跡、Pr)
  22. 主人公は追跡者から救われる(救助、Rs)
  23. 主人公は、気付かれずに家または他国に到着する(気付かれない到着、O)
  24. 偽の主人公が、不当な要求をする。(不当な要求、L)
  25. 主人公に難題を課す(難題、M)
  26. 難題が解かれる(解決、N)
  27. 主人公が気付かれる(発見・認知、Q)
  28. 偽の主人公や敵、加害者が暴露される(正体露見、Ex)
  29. 主人公に新たな姿が与えられる(変身、T)
  30. 敵が罰される(処罰、U)
  31. 主人公は結婚し、即位する(結婚、W)

七つの行動領域

  1. 敵対者(加害者)
  2. 贈与者(提供者)
  3. 助力者
  4. 王女(探求される者)とその父親
  5. 派遣者(送り出す者)
  6. 主人公(探求者もしくは犠牲者)
  7. 偽主人公

プロップによる研究成果は収集した昔話の構造を分解し共通点を抽出して得られたものだが、逆にこの構造をテンプレートにして具体的な出来事や登場人物を埋めていくことで、誰でも比較的簡単にファンタジーのプロットを作れることが知られており、映画やライトノベルやゲームシナリオといった娯楽作品の創作にまつわるハウツー本の中で紹介されることがある[2][3][4][5]

著書邦訳

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ ロマン・ヤコブソンは「ロシアの昔話について」において、プロップらの「言う機能とは、筋に対する意味という見地から定義される登場人物の行為のことである」と説明している。アファナーシエフ『ロシア民話集(上)』(中村喜和編訳)岩波文庫 1988年、第2刷、374頁。ISBN 4-00-326421-5
  2. ^ 朱鷺田祐介「§2-3-4 ファンタジーの物語」『ファンタジーメイキングガイド』新紀元社〈Fantasy Making Series〉、1990年12月17日、64-65頁。ISBN 4-915146-41-3 
  3. ^ 近藤功司冒険企画局「第8回 昔話に学べ! その2……西洋編」『それでもRPGが好き!』(電子書籍版)KADOKAWA富士見ドラゴンブック〉、2013年11月14日(原著1993年12月25日)。ISBN 4-8291-4278-2 
  4. ^ 大塚英志「第3講 方程式でプロットがみるみる作れる」『物語の体操 みるみる小説が書ける6つのレッスン』朝日新聞社〈朝日文庫〉、2003年4月30日(原著2000年12月)、88-94頁。ISBN 4-02-264300-5 
  5. ^ 「こんな本が欲しかった!!」ハリウッド現役脚本家が書いた理論書を創作クラスタが絶賛する理由――ロングセラーの1冊『物語の法則』”. カドブン. KADOKAWA (2020年9月4日). 2021年1月30日閲覧。

参考文献

[編集]

関連書籍

[編集]

脚注

[編集]