コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

日本語放送

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日本語放送局から転送)

日本語放送(にほんごほうそう)とは、広義では日本語による放送全てを指すが、狭義では日本国外からの日本向けの日本語による国際放送を指す。以下では後者について説明する。

沿革

[編集]

草創期

[編集]

日本向け日本語放送は、1942年開始のアメリカのVOA(ボイス・オブ・アメリカ)、同年開始のソビエト連邦モスクワ放送1943年開始のイギリスBBCワールドサービスなどが存在した。

第二次世界大戦中のことであり、いずれも連合国の敵国である大日本帝国に対する宣伝放送(プロパガンダ)を目的にしていた。太平洋戦争末期には、VOA(ボイス・オブ・アメリカ)は日本への空襲予告も行っていた。日本では短波放送の受信は、放送受信機関であるラヂオプレスを除き、一般国民は短波放送の受信は禁止されていたので、一部の人々は隠れて受信していた。この時代に敵国の放送の受信が発覚したら、スパイ容疑で特別高等警察(特高警察)に連行されて厳しい処罰(最悪の場合は死刑)になる可能性もあった。

一般国民の短波ラジオの所持や受信禁止されていることを承知していたアメリカ軍は、サイパン島を占拠すると、中波(AMラジオ)による日本語放送も開始した。AMラジオでも受信できるため、日本はこれに対して妨害電波(ジャミング)で対抗した。

もちろん、これに対して日本側もアメリカ人向けの「ラジオ・トウキョウ」(現在のNHKワールド・ラジオ日本)」の英語放送で「ゼロ・アワー」を実施していた。→詳細は東京ローズを参照。

最盛期

[編集]

1945年8月15日の日本の敗戦によって一般国民の短波放送の受信禁止が解除された。アメリカのVOA(ボイス・オブ・アメリカ)は、1970年に「日本国内でアメリカ事情が充分に紹介されている」として日本向け日本語放送を廃止した。それまでの日本語放送は、宣伝放送(プロパガンダ)という負のイメージが強かったが、1970年代半ば~1980年代初めに日本での「BCLブーム」が起こり世界各国が日本語放送を開始した。欧米諸国では短波放送の受信(BCL)は、大人の趣味として認識されていたが、日本では聴取者層は小学生中学生などの若年層が中心であった。好きな外国語の言葉を口ずさんで見せる小学生も現れた。芸人のタモリは北京放送のモノマネを持ち芸としていた。

第二次世界大戦後の1950年代1990年代初めの東西冷戦の世界情勢を反映して、東側諸国(社会主義諸国)から、日本を含めた西側諸国(資本主義諸国)への宣伝放送(プロパガンダ)を実施していた。日本を含めた西側諸国(資本主義諸国)も対抗して東側諸国(社会主義諸国)への宣伝放送(プロパガンダ)を実施していた。また、キリスト教系などの宗教団体による宗教放送(FEBCHCJBなど)の日本語放送なども存在していた。ソビエト連邦(現在のロシア)のモスクワ放送(現在のロシアの声)、中華人民共和国(中国)の北京放送(現在の中国国際放送)、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の朝鮮中央放送(現在の朝鮮の声放送)などが日本向け日本語放送の宣伝放送(プロパガンダ)を実施していた。

衰退期

[編集]

1980年代の改革開放1990年代初めのソビエト連邦や東欧諸国での相次ぐ社会主義政権の崩壊によって東側の宣伝放送が終息。また1ドル360円の固定相場から変動相場に移行したことで日本人が海外旅行に行きやすくなり、BCL以外での海外情報も増えた。娯楽や通信手段も多様化し、1990年代半ば以降からのインターネットの普及などの影響によって聴取者数は急速に減少していった。

日本語放送の老舗であったオーストラリアラジオ・オーストラリアドイツ(旧西ドイツ)のドイチェ・ヴェレイギリスBBCワールドサービスも次々に1990年代初めに日本語放送を廃止した。その後開局した日本語放送は、モンゴルモンゴルの声など僅かであり、日本の近隣諸国からの放送が中心となっている。2000年代以降には、世界各国で短波放送を縮小または廃止してインターネット放送が実施されるようになった。  

日本向け日本語国際放送を実施する放送局

[編集]

アジア

[編集]

オセアニア

[編集]

アメリカ

[編集]

ヨーロッパ

[編集]

※印は国営または公営放送を示す。

かつて日本向け日本語国際放送を実施していた放送局

[編集]

アジア

[編集]

オセアニア

[編集]

ヨーロッパ

[編集]

アメリカ

[編集]

その他

[編集]

※印は国営または公営放送を示す。

参考文献

[編集]
  • 『電波で巡る国ぐに』 久保田博南(著) コロナ社 1991年出版、ISBN 4-339-07663-5
  • 『世界を聴こう - 短波放送の楽しみ方』 赤林隆仁(著) コロナ社 1993年出版、ISBN 4-339-07670-8
  • 『簡単BCL入門 世界の放送を受信せよ!』 紺野敦(著)・工藤和穂(著) CQ出版 2007年出版、ISBN 4-789-81326-6
  • 『決定版!BCL受信バイブル』 ラジオライフ編集部(著) 三才ブックス 2018年出版、ISBN 4-866-73051-X
  • 『令和版BCLマニュアル』 山田耕嗣(原著) 電子工作マガジン編集部編(著) 電波新聞社 2019年出版、雑誌コード 06390

脚注

[編集]
  1. ^ 2021 年 10 月 31 日から 2022 年 3 月 26 日までの番組表において、Language「Jpn」が打ち消され、「MUSIC」とされた[1](2021 年 12 月 8 日閲覧)。なお、Frequency 欄が「―」であり、それ以前からインターネット放送のみとなっていたものと考えられる[2]。『月刊短波』2021 年 12 月号(第 2 版)、日本短波クラブ(2021 年 12 月 8 日閲覧)
  2. ^ 2015 年より日本語ポッドキャスト配信が行われた。『CQ ham radio WEB MAGAZINE』、「今月のターゲット局:Voice of Turkey(トルコ)」(2019年05月19日)CQ 出版社[3](2021 年 12 月 8 日閲覧)

関連項目

[編集]

外部サイト

[編集]