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ミンネ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
宮廷愛から転送)

ミンネ:Minne)は、中世ヨーロッパの騎士道精神に基づく恋愛である。ドイツ以外の国々では、Amour courtois, Courtly love宮廷の愛宮廷恋愛宮廷風恋愛)などと呼ばれる。

概要

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「ミンネ」 (minne)は中高ドイツ語で「回想、記憶」「友愛、愛情、好意、精神的な愛」を意味し、神の人間への愛、人間の神と隣人への愛も意味するが、とりわけ男女間の愛、性愛を意味する。この場合、精神的なものと官能的なものが含まれている[1]。 この語は、19世紀以来ドイツ文学史において、宮廷文学において多様にテーマ化された「愛」に対する用語として使われている。宮廷文化において、その社交の場において、体験ではなくフィクションを歌う歌やロマンの中に設定されている、一種の「暗黙の前提」「約束事」としての、高位の貴婦人に対する騎士の恋愛奉仕を指している。奉仕に対する報酬としては、アルブレヒト・フォン・ヨーハンスドルフの歌で、婦人が報酬を切望する相手に答える、「優れた人となり、高潔な心を持」つ、というような「道徳的浄化」「社会的向上」「騎士道的自己完成」「人格陶冶」の要素があった[2]

ドイツのミンネザングにおいて重要なテーマとなる「高いミンネ」 (hohe minne) は、宮廷恋愛が肉体性を失い、精神性のほうへ一極化してしまった結果のものであり、「高いミンネ」を歌った最高の詩人は「ウィーン宮廷の桂冠詩人」(de:Peter Wapnewski)ラインマル・フォン・ハーゲナウである。また、「高いミンネ」ではなく宮廷詩の精神と官能の一致する愛、いわゆる「低いミンネ」 (niedere minne) を歌ったのがヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデである。そして、夜明けを告げる夜警の歌に気づき、貴婦人の許を去る騎士、別れに臨んで一層激しく燃える愛を歌った(Tageliedと呼ばれる後朝の歌)のがヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハである。

騎士は身分の高い女性(既婚の場合も多い)を崇拝し、奉仕することを誇りとした。ドイツの宮廷でミンネの歌ミンネザング (Minnesang) を歌った上記のような詩人ミンネゼンガーと呼ばれている。

11世紀後半から12世紀頃、南フランスを中心にして宮廷風恋愛をテーマとする詩歌が発展し始めた[3]。『トリスタンとイゾルデ』などに見られるように、宮廷風恋愛はしばしば君主を夫とする妻(妃)と君主に仕える騎士の間の愛をさした。その場合、両者の関係は基本的に不倫となる[4]。これには、政略結婚が一般的で、君主と妻の間の愛が、多くの場合おそらく薄かったと思われる時代背景も関係していよう[5]。もっとも、ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハの『パルチヴァール』の主人公の妻への愛のように、当時の宮廷文学において称揚される愛が、すべて不貞・不倫・姦通を意味するものでもない。同じ作者の『ティトゥレル』(Titurel I.1,4) では、老人となった聖杯王ティトゥレルが王位を息子のフリムテルに譲る際に、「まことに、われら一族一人残らず真実と誠のミンネを永久に受け継がなければならない」と諭している[6]

関連項目

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脚注

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  1. ^ ヴェルナー・ホフマン、石井道子、岸谷敞子、柳井尚子訳著『ミンネザング(ドイツ中世恋愛抒情詩撰集)』大学書林 (2001) p.267. - Thomas Bein: Walther von der Vogelweide. Stuttgart: Reclam (Universal-Bibliothek; Nr. 17601: Literaturstudium) 1997. ISBN 3-15-017601-8. S. 99. - 伊東泰治・馬場勝弥・小栗友一・松浦順子・有川貫太郎編著『中高ドイツ語小辞典』(Mittelhochdeutsch-Japanisches Taschenwörterbuch)同学社(1991);『新訂・中高ドイツ語小辞典』同学社(2001)pp.383-384. - Max Wehrli: Deutsche Lyrik des Mittelalters. Auswahl und Übersetzung. Zürich: Manesse Verlag, 1955. S. 514.
  2. ^ 高津春久編訳『ミンネザング(ドイツ中世叙情詩集)』郁文堂 (1978)p.117. - ヴェルナー・ホフマン、石井道子、岸谷敞子、柳井尚子訳著『ミンネザング(ドイツ中世恋愛抒情詩撰集)』大学書林 (2001) p.269.
  3. ^ 川崎佳代子 2009, p. 144.
  4. ^ 川崎佳代子 2009, p. 144-145.
  5. ^ 川崎佳代子 2009, p. 145.
  6. ^ 伊藤泰治, 馬場勝弥, 小栗友一, 有川貫太郎, 松浦順子「ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ ティトゥレル (1)」『言語文化論集』第1巻、名古屋大学、1980年、239頁、CRID 1573105976607820288ISSN 03886824NAID 110000963304 

参考文献

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関連文献

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