法 (文法)
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(叙法から転送)
文法範疇 |
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典型的には形態統語的な範疇 |
典型的には形態意味的な範疇 |
形態意味的な範疇 |
法(ほう)、またはムード(英: mood)とは言語学で使われる用語で、文法範疇の一つである。叙法とも[1]。文が表す出来事の現実との関係(事実的 (英: realis) (en) か反事実的 (英: irrealis) (en) か)や意図、聞き手に対する態度などを表す。特に動詞の形態に反映された場合のことを言うが、モダリティ(法性)と同義で語られることもある。断定、疑義、命令、可能・必然 (epistemic)[要出典]、許可・義務 (英: deontic)、願望・要求 (propositional attitude)[要出典] などにかかわる。
印欧語の「直説法」、「命令法」、「接続法」、「希求法」、「条件法」、「禁止法」などがこれにあたる。
法は同じく動詞の文法範疇である時制・相とまとめてTAM (Tense-Aspect-Modality) とも呼ばれる[2][3]。
文法用語としての英語mood(述べ方)は、フランス語のmode(方式)の訛形であるが、他方でゲルマン語に起源を持つmood(気分)からも意味的な影響を受けている。
日本語
[編集]日本語においては「行く」(意志・命令・疑問など)「行こう」(意志・勧誘)「行け」(命令)「行くな」(否定命令=禁止)「行ったら」「行けば」(仮定・放任)「行かない」(否定)「行きたい」(希求)のように動詞活用形や助動詞、終助詞といった文末の形態の違いが法に関わり[4]、命題を包むような形で法が実現されていると分析されている[誰によって?]。
英語
[編集]下の例は英語の「直説法」と「仮定法」の対比を示す。
- 直説法
- As I wasn't born two hundred years ago, I didn't succeed to the throne.
- 「200年前に生まれなかったので、王様にならなかった」
- 仮定法(動詞の形態)
- If I had been born two hundred years ago, I would have succeeded to the throne.
- 「200年前に生まれていたら王様になったのに」
- 仮定法(助動詞、あるいは原形)
- His majesty requested of me that I (should) succeed to the throne.
- 「王は私に王位を継いでくれるよう頼んだ」
脚注
[編集]- ^ moodの意味 - 英和辞典 - コトバンク
- ^ Bybee & Perkins 1994.
- ^ Velupillai 2012, p. 194.
- ^ 益岡・田窪(1991:104–120)。
参考文献
[編集]- Bybee, Joan; Perkins, Revere; Pagliuca, William (1994). The Evolution of Grammar. Chicago: University of Chicago Press. ISBN 0-226-08665-8
- Velupillai, Viveka (2012). An Introduction to Linguistic Typology. Amsterdam: John Benjamins Publishing Company. doi:10.1075/z.176. ISBN 978-90-272-1198-9
- 益岡隆志、田窪行則 共著『基礎日本語文法』くろしお出版、1991年。ISBN 4-87424-036-4
関連書籍
[編集]- Palmer, F. R. (2001) Mood and Modality. Cambridge University Press.