出入禁止
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
出入禁止(でいりきんし)は、施設の管理者が特定の状態・属性などに該当する者、もしくは特定個人を対象に、施設内の立ち入りを中止・禁止する、あるいはサービスの提供を中止・拒否・停止する行為。
概要
[編集]施設側に不利益な行為をする可能性のある者、他の利用者に迷惑がかかる可能性がある者、立ち入っただけで施設管理権を侵害する者を事前に排除するために行われる。略称、出禁(しゅっきん、できん、でっきん)。施設側が求める出入禁止を無視して無許可で侵入する、またはサービスを要求する場合、状況や程度によっては建造物侵入罪、住居侵入罪、不退去罪、業務妨害罪、強要罪、ストーカー規制法違反など[1][2]に問われる可能性がある。
不特定多数の出入りを禁じる区域設定については、立入禁止区域の記事を参照のこと。
施設側から見る出入禁止の例
[編集]飲食店など
[編集]民法の契約の自由の原則に基づき、店側の裁量権で特定の者との契約を拒否するもの。いわゆる一見さん、ドレスコードに基づく入店禁止も含む。基本的には店長やオーナーなどの責任者に権限があるので、例えばコンビニの場合、責任者不在のときに迷惑客が来店してもアルバイト店員が出入禁止を言い渡すことはできない。また、旅館やホテルでは2023年の旅館業法の改正により、迷惑客の宿泊を拒否できるようになった[3]。
公共施設
[編集]市役所など多くの公共施設には、条例等で施設内の禁止行為、違反者の出入禁止措置を含む管理規則が定められている[4]。
病院
[編集]日本では、医師法、厚生省通達(昭和24年)により応召義務が定められており、一般的に医師は診療行為を求められた際に拒めないとされてきたが、2019年、厚生労働省は新たな通達の中で、応召義務の範囲を国と医師の関係のみに限定。医師や病院側が特定の患者に出入り禁止を求めることが容易になった。2020年には、青森県内の病院が特定の患者名を指名して出入禁止を行う事例も現れた[5]。
銭湯
[編集]銭湯など入浴施設では、公衆浴場法により伝染病に罹っている者の入浴拒否、不衛生な行為をするものに対する制止など、出入禁止を含む必要な措置や対策を講じることが義務とされている。
対象者側からみる出入禁止の例
[編集]粗暴な行為や迷惑行為を働く者
[編集]日本プロ野球やJリーグでは、応援規定[6]や観戦マナー[7]の違反や粗暴な行為を働く私設応援団または特定の者に対して、主催者側から会場への出入禁止が申し渡されることがある[8]。
未成年、若齢者
[編集]パチンコ店や風俗店など風俗営業を行う店は、18歳未満の者が客として入場することを風俗営業法で禁止している。映画館では、映画のレイティングシステムに基づき入場禁止を行うことがある。
暴力団関係者
[編集]全都道府県が定めている暴力団排除条例では、事業者は契約を結ぶ相手方に暴力団関係者でないことの確認を取ることが求められており、ホテルやゴルフ場などで事実上暴力団関係者の出入を禁止する手段となっている。暴力団関係者が身分を偽って利用した場合、後に詐欺罪で摘発される可能性がある[9]。
刺青をした者
[編集]海水浴場では地元の自治体が条例を定めて、刺青が見える(見せている)者の出入りを禁じている例がある[10]。 また、日帰り温泉やサウナなど銭湯と比べて公共性の低い温浴施設でも、出入りを禁じている例が多い[11]。
記者
[編集]記者会見場では、不都合、不利益な報道、質問を行う記者に対して主催者側が出入禁止を命じることがある[12][13]。また、発売前の製品を入手し記事化したことがきっかけでGizmodoに対してAppleの製品発表会を出入り禁止にした、という例もある[14]。
仕事上のトラブルに関連した者
[編集]タレントの例では、特定のテレビ局の番組に出演しないことをもって出入禁止と表現することがある。この場合、過去のトラブルに起因してテレビ局側がタレントに仕事のオファーをかけない[15]、またはタレント側がオファーを受けない[16]など状況は様々。
一般企業の例では、事故や不祥事や問題を起こした相手先の社員や、モラルに問題がある相手先の社員に言い渡す事が多く、人材派遣、日々紹介派遣の仕事の例では、派遣先や紹介先の方針に従わない派遣元の社員または紹介元の社員や事故、不祥事、モラル等の問題を起こした派遣元の社員または紹介元の社員に対して派遣先や日々紹介先から「現場NG」と言う用語を用いて派遣元または紹介元の会社を通じて出入り禁止を言い渡す事が多い。
出入禁止に関連する問題
[編集]身体障碍者の出入禁止
[編集]バリアフリー法、身体障害者補助犬法などで、公共施設等では身体障碍者を理由に出入禁止とすることができないとされているが、業務に著しい支障を及ぼす恐れがある場合などは除外されることもあり、施設管理者と利用者との間で軋轢が生じることがある[17]。
刺青文化の違い
[編集]入浴施設では、日本の刺青文化とは異なるタトゥーをした外国人を一律に排除して軋轢が生じることがある[18]。
人権侵害に抵触する場合
[編集]人種や国籍、身体的特徴をもって出入禁止とする場合、人権侵害として社会問題に発展することがある[19]。
脚注
[編集]- ^ “アイドルに握手会で求婚し出入り禁止の男を逮捕 「7年に及ぶストーカー」に恐怖の声”. ニコニコニュース (2017年6月21日). 2020年4月3日閲覧。
- ^ “「入れさせろ」商業施設“出禁”の高1生、警備員暴行で逮捕”. 神戸新聞NEXT (2018年8月4日). 2020年4月3日閲覧。
- ^ “泥酔、土下座の要求……「迷惑客」の宿泊拒否 国が指針たたき台”. 朝日新聞DIGITAL (2023年9月5日). 2023年10月14日閲覧。
- ^ “福岡市庁舎管理規則”. 福岡市 (1992年3月30日). 2020年4月3日閲覧。
- ^ “病院入り口に「立ち入り禁止」の貼り紙 名指しの男性は”. 朝日新聞 (2020年4月1日). 2020年4月3日閲覧。
- ^ “試合観戦 暴力団等排除活動 特別応援許可規程”. NPB. 2020年4月3日閲覧。
- ^ “観戦マナー”. Jリーグ. 2020年4月3日閲覧。
- ^ “鹿島、サポーター1名を無期限入場禁止に…試合後、選手へ氷投げ込み”. サッカーキング (2018年4月19日). 2020年4月3日閲覧。
- ^ “東京都暴力団排除条例 Q&A”. 警視庁ホームページ (2018年6月26日). 2020年4月3日閲覧。
- ^ “安全で快適な逗子海水浴場の確保に関する条例及び施行規則”. 逗子市ホームページ (2019年4月30日). 2020年4月3日閲覧。
- ^ “入れ墨は「温泉NG」なのに「銭湯OK」の意外なワケ”. プレジデントオンライン (2019年12月26日). 2024年6月25日閲覧。
- ^ “トランプ氏、CNN記者と会見で口論 出入り禁止に”. 朝日新聞 (2018年11月8日). 2020年4月3日閲覧。
- ^ “「くず」「出禁」…立憲・安住氏、新聞記事を論評し掲示”. 朝日新聞 (2020年2月4日). 2020年4月3日閲覧。
- ^ “Appleが米Gizmodoのプレスパス発行を拒否、「iPhone 4」発表前に試作品をゲットしたのが原因か”. GIGAZINE (2010年6月8日). 2023年6月20日閲覧。
- ^ “テレ東を出禁になった本当の理由”. エンタメRBB (2021年5月16日). 2021年5月15日閲覧。
- ^ “「テレ東はこっちから出入り禁止」”. J-castニュース (2014年1月14日). 2020年4月3日閲覧。
- ^ “「車いす入店拒否」騒動振り返る 「ほとんど心神喪失状態にあった」”. J-castニュース (2012年12月20日). 2020年4月3日閲覧。
- ^ “マオリ女性入浴拒否、東京五輪控え「多様な文化への敬意、対応策必要」” (2013年9月13日). 2020年4月3日閲覧。
- ^ “試合で差別的横断幕「JAPANESE ONLY」”. huffingtonpost (2014年3月9日). 2020年4月3日閲覧。
関連項目
[編集]- 新橋ストーカー殺人事件 - 出入禁止が契機となった事件
- 二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律 - 二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律
- 映画のレイティングシステム - コンピュータゲームのレイティングシステム - これらによって、観覧やプレイを年齢に応じて規制する。
- BAN
- ブラックリスト - ロックアウト
- 閉鎖都市 - 立ち入り禁止 - 通行止め - 交通規制 - 女人禁制
- アクセス禁止
- モラル
- 企業コンプライアンス
- 企業倫理