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全球団勝利

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
全球団から勝利から転送)

全球団勝利(ぜんきゅうだんしょうり)とはプロ野球の公式戦で投手が組織に所属する全ての球団から勝利を挙げることである。

日本プロ野球

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日本野球機構(NPB)におけるこの記録が注目され始めたのは、1978年渡辺秀武ロッテオリオンズに移籍し、すでにその時点で日本ハムファイターズ以外の当時NPBに存在していた11球団から勝利投手となっていたので、「史上初」の記録を達成するのではないかと当時の『週刊ベースボール』誌上で取り上げられたことが、初期のものとして確認できる。宇佐美徹也『プロ野球記録大鑑』(講談社、1993年ISBN 4-06-206108-2)によると、その後、野村収古賀正明1983年に記録を達成し、渡辺[注 1]江夏豊[注 2]宮本幸信吉見祐治清水直行小林宏之下柳剛帆足和幸増井浩俊(外国人はライアン・グリンブライアン・ウルフデニス・サファテ)などがあと1球団で達成できたが果たせなかった。

日本野球連盟のリーグ分裂1950年)以降、セ・パ交流戦が実施される前年(2004年)までは、公式戦のない別リーグのチームから勝利を挙げることは難しかったが、交流戦開始により達成が容易となったことから、記録としての価値を落としたとの指摘がある[1]

達成者

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セ・パ12球団制となった1958年以降、2023年6月現在で以下の20名の選手が達成している[2][3]

選手名の太字表記はNPB在籍現役選手、球団名の太字表記は達成時の所属球団を示す。所属球団はNPB球団のみ表記。

選手 所属球団 達成日 対戦相手 備考 通算勝利数
野村収 大洋ホエールズ(1969年 - 1971年)
ロッテオリオンズ(1972年 - 1973年)
日本ハムファイターズ(1974年 - 1977年)
横浜大洋ホエールズ(1978年 - 1982年)
阪神タイガース(1983年 - 1986年)
1983年5月15日 大洋 日本プロ野球初
セ・パ交流戦導入以前の達成
121勝
古賀正明 太平洋クラブライオンズ
クラウンライターライオンズ
(1976年 - 1978年)
ロッテオリオンズ(1979年)
読売ジャイアンツ(1980年)
横浜大洋ホエールズ(1981年 - 1984年)
1983年10月4日 巨人 セ・パ交流戦導入以前の達成 38勝
武田一浩 日本ハムファイターズ(1988年 - 1995年)
福岡ダイエーホークス(1996年 - 1998年)
中日ドラゴンズ(1999年 - 2001年)
読売ジャイアンツ(2002年)
2002年5月7日 中日 セ・パ交流戦導入以前の達成 89勝
門倉健 中日ドラゴンズ(1996年 - 1999年)
大阪近鉄バファローズ(2000年 - 2003年)
横浜ベイスターズ(2004年 - 2006年)
読売ジャイアンツ(2007年 - 2008年)
2005年8月20日 中日
セ・パ交流戦導入以降で初
76勝
吉井理人 近鉄バファローズ(1984年 - 1994年)
ヤクルトスワローズ(1995年 - 1997年)
オリックス・ブルーウェーブ
オリックス・バファローズ
(2003年 - 2007年)
千葉ロッテマリーンズ(2007年)
2006年3月29日 楽天 [注 3] 89勝
工藤公康 西武ライオンズ(1982年 - 1994年)
福岡ダイエーホークス(1995年 - 1999年)
読売ジャイアンツ(2000年 - 2006年)
横浜ベイスターズ(2007年 - 2009年)
埼玉西武ライオンズ(2010年)
2007年7月24日 巨人
13球団から初
交流戦とは無関係に達成
1988年に身売りした阪急ブレーブス、南海ホークスからの勝ち星を得た最後の現役選手でもあった
224勝
久保康友 千葉ロッテマリーンズ(2005年 - 2008年)
阪神タイガース(2009年 - 2013年)
横浜DeNAベイスターズ(2014年 - 2017年)
2009年7月14日 中日 97勝
藤井秀悟 ヤクルトスワローズ
東京ヤクルトスワローズ(2000年 - 2007年)
北海道日本ハムファイターズ(2008年 - 2009年)
読売ジャイアンツ(2010年 - 2011年)
横浜DeNAベイスターズ(2012年 - 2014年)
2010年5月3日 ヤクルト [注 4] 83勝
石井一久 ヤクルトスワローズ
東京ヤクルトスワローズ(1992年 - 2001年、2006年 - 2007年)
埼玉西武ライオンズ(2008年 - 2013年)
2010年5月19日 ヤクルト [注 5] 143勝
杉内俊哉 福岡ダイエーホークス
福岡ソフトバンクホークス(2002年 - 2011年)
読売ジャイアンツ(2012年 - 2018年)
2012年7月27日 広島
全球団敗戦も達成している[4]
142勝
セス・グライシンガー 東京ヤクルトスワローズ(2007年)
読売ジャイアンツ(2008年 - 2011年)
千葉ロッテマリーンズ(2012年 - 2014年)
2012年8月14日 ソフトバンク 外国人初 64勝
木佐貫洋 読売ジャイアンツ(2003年 - 2009年)
オリックス・バファローズ(2010年 - 2012年)
北海道日本ハムファイターズ(2013年 - 2015年)
2013年5月20日 巨人 62勝
涌井秀章 埼玉西武ライオンズ (2005年 - 2013年)
千葉ロッテマリーンズ(2014年 - 2019年)
東北楽天ゴールデンイーグルス(2020年 - 2022年)
中日ドラゴンズ(2023年 - )
2014年4月15日 西武 単独リーグ所属での達成は史上初[5] (現役)
寺原隼人 福岡ダイエーホークス
福岡ソフトバンクホークス(2002年 - 2006年)
横浜ベイスターズ(2007年 - 2010年)
オリックス・バファローズ(2011年 - 2012年)
福岡ソフトバンクホークス(2013年 - 2018年)
東京ヤクルトスワローズ(2019年)
2014年4月16日 楽天
最後の13球団から達成者
73勝
大竹寛 広島東洋カープ(2003年 - 2013年)
読売ジャイアンツ(2014年 - 2021年)
2014年4月26日 広島 102勝
ジェイソン・スタンリッジ 福岡ソフトバンクホークス(2007年 - 2008年)
阪神タイガース(2010年 - 2013年)
福岡ソフトバンクホークス(2014年 - 2015年)
千葉ロッテマリーンズ(2016年 - 2017年)
2014年6月9日 阪神 75勝
林昌範 読売ジャイアンツ(2002年 - 2008年)
北海道日本ハムファイターズ(2009年 - 2011年)
横浜DeNAベイスターズ(2012年 - 2017年)
2014年6月21日 西武
現時点で達成者の中で最少の通算勝利数
22勝
金子千尋 オリックス・バファローズ(2005年 - 2018年)
北海道日本ハムファイターズ(2019年 - 2022年)
2019年4月18日 オリックス 達成時の登録名は「金子 弌大」 130勝
岸孝之 埼玉西武ライオンズ(2007年 - 2016年)
東北楽天ゴールデンイーグルス(2017年 - )
2022年6月9日 広島 [6] (現役)
西勇輝 オリックス・バファローズ(2009年 - 2018年)
阪神タイガース(2019年 - )
2023年6月14日 オリックス [3] (現役)

[7]

あと1球団で達成する選手

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NPB所属の現役選手のみ。現在の所属球団から勝利で達成の場合は除く。「 - 」以下の球団から勝利すれば達成。

以下は2005年の近鉄消滅以降

参考記録

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1957年以前も含め、最も多くの球団から勝ち星を挙げたのは緒方俊明ヴィクトル・スタルヒンの15球団だが、ともに自らが在籍した西日本パイレーツ(緒方)・トンボユニオンズ(スタルヒン)が短期で消滅(存在期間は西日本:1950年のみ、トンボ・高橋:1954年-1956年)したため、全球団勝利には至っていない。

全球団セーブ

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江夏豊が最初に達成。その後、マーク・クルーンデニス・サファテ増井浩俊秋吉亮が達成している[11]。いずれも12球団との対戦による全球団セーブであり、大阪近鉄バファローズと東北楽天ゴールデンイーグルス両球団対戦を含む13球団セーブの達成者はいない。

増井浩俊は、全球団セーブのほか全球団ホールドも達成。なお、勝利については東京ヤクルトスワローズを除く11球団から挙げたが、ヤクルトからは勝ち星を挙げられず[12]、全球団勝利・全球団セーブ・全球団ホールドの快挙は達成できないまま現役引退した。

全球団敗戦

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江夏豊と西勇輝が12球団の対戦で達成。杉内俊哉が13球団の対戦で達成している[4]

メジャーリーグベースボール

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全30球団からを勝ち星を挙げると達成となる。2023年5月現在、メジャーリーグベースボールではこれまで21人が達成している[13][14]

dagger アメリカ野球殿堂選出
double-dagger 現役選手
選手 達成日 所属球団 対戦相手 スコア 備考
アル・ライター 2002年4月30日 ニューヨーク・メッツ アリゾナ・ダイヤモンドバックス 10-1
ケビン・ブラウン 2004年3月31日 ニューヨーク・ヤンキース タンパベイ・デビルレイズ 12-1 東京での開幕シリーズ
テリー・マルホランド 2004年7月19日 ミネソタ・ツインズ デトロイト・タイガース 3-1
カート・シリング 2004年9月10日 ボストン・レッドソックス シアトル・マリナーズ 13-2
ウッディ・ウィリアムズ 2006年9月26日 サンディエゴ・パドレス セントルイス・カージナルス 7-5
ジェイミー・モイヤー 2008年5月26日 フィラデルフィア・フィリーズ コロラド・ロッキーズ 20-5
ランディ・ジョンソンdagger 2009年4月19日 サンフランシスコ・ジャイアンツ アリゾナ・ダイヤモンドバックス 2-0
バリー・ジト 2010年6月12日 サンフランシスコ・ジャイアンツ オークランド・アスレチックス 5-4
ハビアー・バスケス 2010年7月21日 ニューヨーク・ヤンキース ロサンゼルス・エンゼルス 10-6
ビセンテ・パディーヤ 2010年8月10日 ロサンゼルス・ドジャース フィラデルフィア・フィリーズ 15-9
デレク・ロウ 2012年5月10日 クリーブランド・インディアンス ボストン・レッドソックス 8-3
A.J.バーネット 2012年7月21日 ピッツバーグ・パイレーツ マイアミ・マーリンズ 5-1
ダン・ヘイレン 2013年8月9日 ワシントン・ナショナルズ フィラデルフィア・フィリーズ 9-2
カイル・ローシュ 2015年6月26日 ミルウォーキー・ブルワーズ ミネソタ・ツインズ 10-4
ティム・ハドソン 2015年7月26日 サンフランシスコ・ジャイアンツ オークランド・アスレチックス 4-3
ジョン・ラッキー 2016年4月18日 シカゴ・カブス セントルイス・カージナルス 5-0
マックス・シャーザーdouble-dagger 2016年5月11日 ワシントン・ナショナルズ デトロイト・タイガース 3-2 1試合20奪三振、完投勝利で達成
バートロ・コローン 2017年8月20日 ミネソタ・ツインズ アリゾナ・ダイヤモンドバックス 12-5
ザック・グレインキーdouble-dagger 2019年9月14日 ヒューストン・アストロズ カンザスシティ・ロイヤルズ 6-1
ゲリット・コールdouble-dagger 2021年7月10日 ニューヨーク・ヤンキース ヒューストン・アストロズ 1-0
ジャスティン・バーランダー 2023年5月10日 ニューヨーク・メッツ シンシナティ・レッズ 2-1

あと1球団勝利で達成

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2023年9月時点で、6人の現役選手が29球団から勝利。「 - 」以下の球団から未勝利。

日本人で達成した選手はいないが、上述のようにダルビッシュが残り1球団、引退選手では野茂英雄は古巣のロサンゼルス・ドジャース、黒田博樹はデトロイト・タイガースを除く29球団から勝利している。

全球団セーブ

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全30球団からセーブを記録すると達成となる。2018年現在、16人が達成している。在籍球団が多く、交流戦も少ないために達成は難しいが、移籍の頻度が多いためにNPBより達成者数が多くなっている。

脚注

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注釈

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  1. ^ 1978年8月25日の日本ハム戦で、同点の状況で登板、9回表にリードをもらい、勝利投手の権利を得たが、その裏に逆転負けを喫し、そのままシーズンを終えた。翌1979年から引退まで日本ハムとの対戦がない広島東洋カープに在籍した。
  2. ^ 江夏は日本プロ野球史上初の「全球団からセーブ」を達成。宇佐美徹也『プロ野球記録大鑑』(講談社、1993年ISBN 4-06-206108-2) p.805
  3. ^ オリックス・ブルーウェーブ在籍時代に近鉄戦に登板しているが勝利はしていない。
  4. ^ 2001年の日本シリーズで近鉄相手に登板しているが勝利はしていない。
  5. ^ 2001年の日本シリーズで近鉄から勝利を挙げている。
  6. ^ ポストシーズンを含めれば、2013年の日本シリーズで巨人から2勝挙げている[8]

出典

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  1. ^ 今年も“苦労人”の記録正当に評価したい - 番記者わがままトーク(スポーツニッポン
  2. ^ 意外と奥が深い「全球団勝利」”. ベースボールキング (2017年1月6日). 2018年9月3日閲覧。
  3. ^ a b “【阪神】オリックスとの関西ダービー第2ラウンドを制し1勝1敗 西勇輝が12球団勝利達成”. 日刊スポーツ. (2023年6月14日). https://www.nikkansports.com/m/baseball/news/202306140001357_m.html 2023年6月14日閲覧。 
  4. ^ a b 達成者は「江夏豊」ともうひとりだけ… 「全球団に勝利」「全球団に敗戦」した投手 - デイリー新潮(2020年8月8日)
  5. ^ 涌井 史上13人目全球団勝利 単独リーグ所属では初スポーツニッポン2014年4月15日配信
  6. ^ 楽天・岸が全12球団から勝利 広島戦7回無失点で史上19人目の快記録、16年目で達成”. Full-Count (2022年6月9日). 2022年6月9日閲覧。
  7. ^ この節の出典は特記無い場合、パ・リーグ公式サイトのBLUE BOOK(2015年版)とする。
  8. ^ a b 残すはセ・リーグ球団のみ。交流戦で12球団勝利が期待されるパ・リーグの投手たち”. パ・リーグインサイト (2021年5月25日). 2022年6月9日閲覧。
  9. ^ “中日・松葉 史上20人目の全球団勝利は持ち越し 古巣を5回零封「緊張したが、持ち味は出せた」”. スポーツニッポン. (2023年6月4日). https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2023/06/04/kiji/20230603s00001173756000c.html 2023年6月14日閲覧。 
  10. ^ “阪神・大竹 全球団勝利へ、残るは古巣ソフトBだけ「強火をかけ続けられるように」 6月交流戦も燃える”. スポーツニッポン. (2023年5月28日). https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2023/05/28/kiji/20230528s00001173080000c.html 2023年6月14日閲覧。 
  11. ^ 『週刊ベースボール』2018年7月16日号「週間記録室」
  12. ^ “オリックス増井「全12球団から勝利・ホールド・セーブ」は来年以降に”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2021年5月30日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/202105300000345.html 2023年2月13日閲覧。 
  13. ^ 黒田 日本選手初の30球団勝利ならず…「ホームランが痛かった」スポーツニッポン2014年8月6日配信
  14. ^ Haren 13th pitcher to beat all 30 MLB teams

関連項目

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