二重指数関数型数値積分公式
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二重指数関数型数値積分公式(にじゅうしすうかんすうがたすうちせきぶんこうしき、英: double exponential formula, 略してDE公式)とは変数変換に基づく数値積分の公式の一つである。この公式は森正武、高橋秀俊によって提案された。変換後の被積分関数が端点で二重指数関数的に減衰することが特徴である。数値積分の効率性の観点で、この公式がいろいろな点で使いやすく、非常に応用が利くと言われている。また、この公式は変換前の被積分関数が端点で特異性を持つときにも有効である。ただし、被積分関数によって適用できない場合があるので注意が必要である。
具体例
[編集]以下、いろいろな積分と、それに対応する二重指数関数型の変換を示す(森 (1998))。
台形公式への適用例
[編集]積分
の場合、変数変換
によって積分は次のような形になる。
これに、きざみ幅が等間隔である台形公式を適用すると、
を得る。さらに、この和を有限項までで打ち切ると、以下の数値積分公式が得られる:
- 。
ここで、は被積分関数の関数値を評価する回数である。とは、離散化誤差()と打ち切り誤差()がほぼ等しくなるように決める。
特殊関数への応用
[編集]二重指数関数型積分公式は、ガンマ関数[1]や変形ベッセル関数[2]、行列値関数[3][4]などの特殊関数の高精度計算・精度保証付き数値計算に応用されている。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ Yamanaka, Naoya; Okayama, Tomoaki; Oishi, Shin’ichi (2016). “Verified error bounds for the real gamma function using double exponential formula over semi-infinite interval”. Mathematical Aspects of Computer and Information Sciences: 6th International Conference, MACIS 2015, Berlin, Germany, November 11-13, 2015, Revised Selected Papers 6 (Springer International Publishing): 224-228. doi:10.1007/978-3-319-32859-1_19. ISBN 978-3-319-32859-1 .
- ^ Yamanaka N., Okayama T., Oishi S. (2017) Verified error bounds for the modified Bessel function of the second kind using double exponential formula over semi-infinite interval, International Workshop on Numerical Verification and its Applications 2017 (INVA 2017), Miyakojima, Okinawa, Japan (Mar. 14–18, 2017).
- ^ 立岡文理, 曽我部知広, 宮武勇登, 張紹良「二重指数関数型数値積分公式を用いた行列実数乗の計算」『日本応用数理学会論文誌』第28巻第3号、日本応用数理学会、2018年、142-161頁、CRID 1390282763047834624、doi:10.11540/jsiamt.28.3_142、ISSN 2424-0982。
- ^ Fuminori Tatsuoka; Tomohiro Sogabe; Yuto Miyatake; Shao-Liang Zhang (2020). “Algorithms for the computation of the matrix logarithm based on the double exponential formula”. Journal of Computational and Applied Mathematics 373: 112396. doi:10.1016/j.cam.2019.112396. ISSN 0377-0427 . "Numerical Analysis and Scientific Computation with Applications" arXiv:1901.07834.
参考文献
[編集]- 森正武『数値解析 (第2版)』共立出版、2002年。
- Hidetosi Takahasi and Masatake Mori: Error Estimation in the Numerical Integration of Analytic Functions, Report of the Computer Centre, University of Tokyo, Vol.3 (1970), pp.41-108.
- H. Takahasi and M. Mori: Estimation of Errors in the Numerical Quadrature of Analytic Functions, Applicable Analysis, Vol.1 (1971) 201-229.
- Masatake Mori and Makoto Natori: Error Estimation in the Linear Approximation of Analytic Functions, Rep. Compt. Centre, Univ. Tokyo, Vol.4 (1971-1972), pp.1--17.
- 高橋秀俊「数値積分法の迷信」、数学セミナー、1971年3月号、日本評論社。また高橋秀俊:「数理と現象」,岩波書店(1975年1月10日)、頁157–168にも再録。
- Takahasi, Hidetosi; Mori, Masatake (1974). “Double exponential formulas for numerical indefinite integration”. Publications of the Research Institute for Mathematical Sciences (国立大学法人 京都大学数理解析研究所) 9 (3): 721-741. CRID 1390001204957327360. doi:10.2977/prims/1195192451. ISSN 0034-5318 .
- Davis, Philip J.; Rabinowitz, Philip; 森正武『計算機による数値積分法』日本コンピュータ協会, 科学技術出版社 (発売)〈コンピュータ・サイエンス研究書シリーズ〉、1981年2月。doi:10.11501/12623382。NDLJP:12623382 。
- 森正武「二重指数関数型変換のすすめ(数値計算アルゴリズムの研究)」『数理解析研究所講究録』第1040巻、京都大学数理解析研究所、1998年4月、143-153頁、CRID 1050001202061919360、hdl:2433/62026、ISSN 1880-2818。
- 森正武「数値解析における二重指数関数型変換の最適性」『数学』第50巻第3号、日本数学会、1998年、248-264頁、CRID 1390001205066239872、doi:10.11429/sugaku1947.50.248、ISSN 0039470X。
- 渡辺二太「二重指数関数型数値積分公式について」『核融合研究』第63巻第5号、プラズマ・核融合学会、1990年、397-411頁、CRID 1390282681489156480、doi:10.1585/jspf1958.63.397、ISSN 04512375。