中露善隣友好協力条約
中露善隣友好協力条約 | |
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条約署名後の江沢民とウラジーミル・プーチン | |
署名 | 2001年7月16日 |
署名場所 | モスクワ |
締約国 | 中華人民共和国とロシア連邦 |
中露善隣友好協力条約(ちゅうろぜんりんゆうこうきょうりょくじょうやく、ロシア語: Договор о Добрососедстве, Дружбе и Сотрудничестве Между Российской Федерацией и Китайской Народной Республикой、中国語: 中华人民共和国和俄罗斯联邦睦邻友好合作条约)は、2001年7月16日、中華人民共和国とロシア連邦の間で交わされた条約。有効期間は20年。江沢民中国共産党総書記とウラジーミル・プーチンロシア大統領が署名してから20周年となる2021年に習近平党総書記とプーチンが条約の延長を宣言した[1]。
概要
[編集]条約は、平和的関係と経済的関係、並びに外交関係と地理的関係に及んでいる。第9条は事実上の防衛協定であり、軍事的関係の強化が第7条と第16条に謳われている。第16条には、ロシアの軍事技術を中国に開示する旨が書かれている。
また、環境技術や省エネルギー技術にも及んでいる。第13条では国連安保理事会での協力も盛り込まれている[2]。
台湾問題の扱いに関して、ロシアは「奪うことができない中国の一部(第5条)」であり、「国家と領土の統一を実現する(第4条)」ことに全面協力する旨も書かれている。
想定される両国の利益
[編集]ジャーナリストのケネス・ティマーマンは2001年に次のように分析している[3]。
中国
[編集]- 中国人民解放軍には時代遅れな面があり、ロシアの軍事教練と軍事技術を取り入れることにより、その強化が期待できる。
- 中国はロシアから燃料、特に石油を安定して供給される。東シベリア・太平洋石油パイプラインなどを活用できる[4][5]。
- 中国の台湾政策の支持国となる。
ロシア
[編集]- ロシアはソビエト連邦の崩壊以降、資金調達に悩んでいる。そのため、
- ロシアの熟練技術者を派遣する、
- 軍事技術、知識を売る、
- 石油と天然ガスを売る、
という形で中国資本の取り入れを図っている。
アメリカへの対抗
[編集]中国とロシアは1999年のコソボ紛争でアメリカ合衆国主導の北大西洋条約機構(NATO)の軍事介入に反対し[6][7]、第二次チェチェン紛争でもロシアを中国は支持して欧米と対立を深めていた[8]。また、条約を結ぶ1ヵ月に中露はともに国境が接する中央アジアも引き入れてNATOに対抗する上海協力機構を設立していた[9]。中露関係の信頼醸成強化は双方が国境に軍事力を配備する負担を削減することにもつながる[10]。
その後の影響
[編集]- 2001年9月、朱鎔基総理とミハイル・カシヤノフ首相の会談で、アンガルスクから中国へのパイプライン建設を合意[11]。
- 2004年、中露間の国境問題を全面解決[12]。
- 2008年11月、胡錦濤国家主席(総書記)とドミートリー・メドヴェージェフ大統領が会談し、この条約の順調に実行されていることを確認[13]。
- 2010年11月、温家宝総理とプーチン首相とがサンクトペテルブルクで会談し、条約締結10周年で順調であることを確認[14]。
- 2021年7月、習近平国家主席(総書記)とプーチン大統領が会談し、条約の延長で合意した[1]。
参考文献
[編集]- ^ a b “中露首脳、会談で友好条約の延長宣言”. 産経新聞. (2021年6月28日) 2021年7月11日閲覧。
- ^ 兵頭慎治他 ロシアの国家安全保障戦略 p.118
- ^ Kenneth R. Timmerman China and Russia Align Against U.S
- ^ Chinadaily China, Russia to honor commitments on oil pipeline
- ^ Chinadaily Putin: oil pipeline will serve China first
- ^ "Yeltsin Warns of European War Over Kosovo". Reuters. 9 April 1999.
- ^ "Yeltsin warns of possible world war over Kosovo". CNN. 9 April 1999.
- ^ "Yeltsin wins Chinese support on Chechnya". Associated Press, December 9, 1999
- ^ “Declaration on the establishment of the Shanghai Cooperation Organization”. CCTV. (2001年6月15日) 2019年11月5日閲覧。
- ^ 平成20年版防衛白書 第I部4 ロシアとの関係
- ^ 近藤大輔 中国の石油市場動向と東アジア原油輸入ロジスティックスに関する調査
- ^ 兵頭慎治 史上初の中露合同軍事演習 加速するロシアの中国接近
- ^ 新華タイムズ 胡錦濤国家主席、メドベージェフ・ロシア大統領と会談
- ^ 人民網 温家宝総理、強固な中露関係が双方の利益に合致
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 条約全文
- "China, Russia Sign Good-Neighborly Friendship, Cooperation Treaty" — People's Daily
- "China, Russia Sign Good-Neighborly Treaty of Friendship, Cooperation" (details) — The Chinese Embassy in Norway
- "Anniversary of Sino-Russian Good-Neighborly Treaty Marked" — China Internet Information Center
- "China, Russia to promote military cooperation" — People's Daily
- Chinese, Russian leaders exchange new year's greetings" (2006) — Xinhua
- "Chinese president arrives in Moscow for state visit" (2005) — People's Daily
- "Hu: Sino-Russian ties enter a new phase" - ウェイバックマシン(2011年5月14日アーカイブ分) — Xinhua
- "Russian-Chinese border most problematic ecologically" — RIA Novosti
- "Post-Cold War Sino-Russian Relations: An Indian Perspective" — Institute for Defense Studies and Analyses
- "Challenges of the Sino-Russian Strategic Partnership" (PDF) — Center for Strategic and International Studies
- "Power Politics in Central Asia" — Harvard Asia Quarterly