ヴォルム写本
ヴォルム写本(ラテン語:Codex Wormianus[1]、アイスランド語:Ormsbók[2]、写本番号:AM 242 fol[1])とは、アイスランドに伝わっていた羊皮紙の写本である。1350年頃の成立と見られている[3]。
1623年にアイスランドの学者からデンマークのルーン文字研究者オール・ヴォームに贈られたことから、この名前で呼ばれている。スノッリ・ストゥルルソンの『エッダ』を現在に伝える重要な写本の一つである。ヴォーム写本[4]、ヴォルム本[1][5]、ウォルム写本[6]、ウォルミアヌス写本[7]とも。
来歴
[編集]デンマークの学者オール・ヴォーム(Ole Worm, 1588年 - 1654年)はルーン文字の研究を行っていたが、古ノルド語(ルーン文字石碑に残された碑文などは、ルーン文字を用いた書かれた古ノルド語の文章であった)がアイスランド語に近いことに気付き、1623年にアイスランドの学者に協力を求める手紙を送った。その結果オール・ヴォームは、ホーラル監督管区 (Hólar) の司教ソルラークル・スクルーラソン(Þorlákur Sklúlason, 1597年 - 1656年)や、ソルラークルを通して作家アルングリームル・ヨーンスソン(Arngrímur Jónsson, 1568年 - 1648年)などの知遇を得ることができ、そしてアルングリームルの発案でソルラークルからオール・ヴォームにアイスランド語の写本が贈られることとなった。このとき贈られた写本が、今に言う『ヴォルム写本』である。
現在はコペンハーゲン大学のアルナマグネア研究所所蔵となっている[3]。
内容
[編集]この写本には、アイスランドの詩人スノッリ・ストゥルルソンが著した詩の教本『エッダ』が収められていた。
また『エッダ』の他にも、ルーン文字の音価などに関する論文が4点(『第一文法論文』他)収められていたという。
脚注
[編集]- ^ a b c 菅原訳 ノルダル『巫女の予言』p.62 の表記。
- ^ 菅原訳 ノルダル『巫女の予言』p.9 の表記。
- ^ a b skaldic - AM 242 fol (W) - Codex Wormianus
- ^ 荒川訳 エーノクセン『ルーン文字の世界』p.205,索引の表記。
- ^ 菅原邦城訳、エリアス・ヴェセーン『北欧の言語』(東海大学出版会、1973年)p.43 に見られる表記。
- ^ 伊藤盡訳、テリー・グンネル「エッダ詩」(青土社『ユリイカ』第39巻第12号、2007年10月、pp.121-137)p.130,135 に見られる表記。
- ^ 山室静・米原まり子訳、キーヴィン・クロスリィ=ホランド『北欧神話物語』(青土社、1992年新版第3刷、ISBN 978-4791751495)p.281 などに見られる表記。
参考文献
[編集]- ラーシュ・マーグナル・エーノクセン(荒川明久訳)『ルーン文字の世界 歴史・意味・解釈』国際語学社、2007年(原著1998年)、ISBN 978-4-87731-359-3。
- シーグルズル・ノルダル(菅原邦城訳)『巫女の予言 エッダ詩校訂本』東海大学出版会、1993年、ISBN 4-486-01225-9。
外部リンク
[編集]- skaldic poetry project: AM 242 fol (W) - Codex Wormianus - 写本のスキャン画像を公開しているサイト。