晩課
晩課(ばんか、ロシア語: Вечерня)は晩の奉神礼(正教会)、および夕の祈り(カトリック教会、聖公会など)をいう。英語の"Vespers"に対応する、各教派に共通する訳語であるが、教派によって構成はかなり異なっている。
音楽作品についてはラテン語("Vesperae")からそのまま転写してヴェスペレと呼ばれる事がある。聖公会でのイーブンソング(夕の礼拝)に相当する。
東西教会の別を問わず、教会暦は日没を一日の区切りとするため、いずれの教派においても、日没後に行われる晩課は、一日の初めの時課となる。
正教会
[編集]晩課は、聖詠・讃詞・連祷によって構成される。晩課と早課は、讃詞・連祷の占める割合が他の時課に比べて大きい。
日没後に初めて行われる晩課は、正教会の時課の中でも一日のうちの初めに行われるものとなる。天地創造、人類の陥罪(かんざい)、イイスス・ハリストス(イエス・キリストのギリシャ語読み)による救いを記憶する内容となっている。
被造物の数々が歌われる第103聖詠が冒頭に置かれ、これが天地創造を記憶するものとなっている。
- 第十四カフィズマ - 第103聖詠が収められている。
また、イエルサリムの総主教ソフロニイによる聖歌「穏やかなる光(聖ソフロニイの祝文)」が、夕暮れの光にイイスス・ハリストスを喩えて歌っており、直接見る事の出来ない神が、藉身して人性をとり、目に見える姿になってこの世に到来した事を歌っている。
基本構造
[編集]晩課には大きく分けて、平日晩課・小晩課・大晩課がある。
以下は主日前晩(土曜日夕方)に行われる大晩課の形式である。
- 首誦聖詠:第103聖詠(詩篇104)を歌う(または誦読する)。
- 坐誦経《カフィズマ》:指定された聖詠を誦読する。徹夜祷に際しては歌う。
- 「主や爾に呼ぶ」に、讃頌《スティヒラ》:第140・141・129聖詠を句とし、間に讃頌を挟む。
- 聖ソフロニイの祝文「聖にして福たる」:聖入がある場合には歌われる。
- 提綱《ポロキメン》:この晩課のテーマ。神品と詠隊が応答する。(大斎期には「アリルイヤ」を歌う)
- 喩言《パレミヤ》:祭日には特に、合う旧約の指定個所を誦読する。
- 誦読「主や我等を守り罪なくして此の晩」
- リティヤ:祭日などに。熱切なる祈祷。
- 聖抱神者シメオンの祝文「主宰や、今爾の言に循ひ」
- 聖三祝文~天主経
- 発放讃詞《トロパリ》:此の日に歌うべきを歌う。
- 五餅の祝福:リティヤを行なった場合にはこれも。主食への祝福から参祷者の祝福へ。
イエルサリムの総主教聖ソフロニイの祝文
[編集]— 時課經(日本正教会・1884年版、一部の旧字体を常用漢字で代用、振り仮名を一部現代仮名遣いにするなどして引用)
聖 にして福 たる常生 なる天 の父 の聖 なる光榮 の穏 かなる光 イイススハリストスや我等 日 の入 りに至 り晩 の光 を見 て神父 と子 と聖神 を歌 ふ生命 を賜 ふ神 の子 や爾 は何時 も敬虔 の聲 にて歌 はるべし故 に世界 は爾 を崇讃 む
カトリック教会
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
他教派の晩の祈り
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
参考文献
[編集]- ミハイル・ソコロフ著、木村伊薩阿克訳『正教奉神礼』日本正教会(明治24年3月)