シェルピンスキー数
シェルピンスキー数(シェルピンスキーすう、Sierpinski number)とは、全ての自然数 n に対して k × 2n + 1 が合成数(素数ではない 2 以上の整数)となるような正の奇数 k のことである。
言い換えると、k がシェルピンスキー数ならば次の集合の元は全て合成数となる。
1960年に、ポーランドの数学者ヴァツワフ・シェルピンスキ (Waclaw Sierpinski, 1882–1969) は、全ての n について k × 2n + 1 が決して素数とならない正の奇数 k が無限にあることを証明した。
1962年に、ジョン・セルフリッジ (John Selfridge) は 78557 がシェルピンスキー数であることを示した。つまり、Sn = 78557 × 2n + 1 は常に合成数となる。なぜならば、簡単な議論によって Sn は 3, 5, 7, 13, 19, 37, 73 のいずれかで割り切れることが分かるからである。例えば n が偶数ならば Sn は 3 で割り切れ、n が 4 で割って 1 余る数ならば Sn は 5 で割り切れる。
知られているシェルピンスキー数は以下のように続く。
- 78557, 271129, 271577, 322523, 327739, 482719, 575041, 603713, 903983, 934909, … (オンライン整数列大辞典の数列 A076336)
シェルピンスキーの問題
[編集]78557 がシェルピンスキー数であることは証明されているが、この数が最小のシェルピンスキー数であるかどうかはまだ分かっていない。最小のシェルピンスキー数を求める問題を、シェルピンスキーの問題という。
Seventeen or Bust
[編集]k | n | k × 2n+1 の桁数 | 発見日 |
---|---|---|---|
46157 | 698207 | 210,186 | 2002年11月27日 |
65567 | 1013803 | 305,190 | 2002年12月3日 |
44131 | 995972 | 299,823 | 2002年12月6日 |
69109 | 1157446 | 348,431 | 2002年12月7日 |
54767 | 1337287 | 402,569 | 2002年12月22日 |
5359 | 5054502 | 1,521,561 | 2003年12月6日 |
28433 | 7830457 | 2,357,207 | 2004年12月30日 |
27653 | 9167433 | 2,759,677 | 2005年6月8日 |
4847 | 3321063 | 999,744 | 2005年10月15日 |
19249 | 13018586 | 3,918,990 | 2007年5月5日 |
33661 | 7031232 | 2,116,617 | 2007年10月30日 |
10223 | 31172165 | 9,383,761 | 2016年10月31日 |
分散コンピューティングによるプロジェクト "Seventeen or Bust" では、シェルピンスキーの問題の解決を目的として、78557 より小さいシェルピンスキー数の候補に対して素数の検索を行っている。プロジェクト名の由来は、プロジェクトを開始した2002年3月の時点で17個の候補があったためである。検索している全ての候補について素数が発見されたならば 78557 が最小のシェルピンスキー数ということになる。
このプロジェクトにより、2016年10月の時点で12個の素数が発見されており、2016年11月現在、素数となる数が見つかっていない k は、21181, 22699, 24737, 55459, 67607 の5個である。
2004年12月30日には、k = 28433 の系列で2,357,207桁の素数 28433 × 27830457 + 1 が発見された。発見時には、38番目のメルセンヌ素数である 26972593 - 1(2,098,960桁)を抜いて、当時知られていた素数の中では4番目に大きなものとして記録された。2007年5月5日には、k = 19249 の系列で3,918,990桁の素数 19249 × 213018586 + 1 が発見された。2012年6月の時点で知られている素数の中では10番目に大きい(9番目までは全てメルセンヌ素数)。
2016年10月31日には、k = 10223 の系列で9,383,761桁の素数 10223 × 231172165 + 1 が発見された。2016年11月の時点で知られている素数の中では7番目に大きい(6番目までは全てメルセンヌ素数)。[1]。
リーゼル数
[編集]リーゼル数 (Riesel number) とは、シェルピンスキー数と似た定義の数であり、全ての自然数 n に対して k × 2n − 1 が合成数となる正の奇数 k である。スウェーデンの数学者ハンス・リーゼルに因む。知られているリーゼル数は
- 509203, 762701, 777149, 790841, 992077, … (A101036)
と続く。509203 が最小のリーゼル数かどうかは知られていない。シェルピンスキー数に対する Seventeen or Bust と同様の取り組みとして、リーゼル数に対しては Riesel Sieve Project が立ち上げられ、その後 PrimeGrid が作業を引き継いでいる。509203 より小さく、k × 2n − 1 の形で素数となるものが見つかっていない k は2020年12月の時点で48個ある[2][3]。
ブリエ数
[編集]ブリエ数 (Brier number) とは、シェルピンスキー数でもあり、リーゼル数でもある数である。つまり、全ての自然数 n に対して k × 2n + 1 および k × 2n − 1 が合成数となる正の奇数 k のことである。
知られているブリエ数は 3316923598096294713661, 10439679896374780276373, 11615103277955704975673, … (A076335) と続く。これより小さなブリエ数があるかどうかは分かっていない。
脚注
[編集]- ^ The Prime Pages, The Top Ten Record Primes
- ^ PrimeGrid, Message 145638
- ^ PrimePages, The Prime Database: 146561 *2^11280802-1
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Weisstein, Eric W. "Sierpinski Number of the Second Kind". mathworld.wolfram.com (英語).
- The Prime Golssary, Sierpinski number
- Seventeen or Bust
- PrimeGrid, Seventeen or Bust and the Sierpinski Problem
- Weisstein, Eric W. "Riesel Number". mathworld.wolfram.com (英語).
- The Prime Golssary, Riesel number
- PrimeGrid, About the Riesel Problem
- Wilfrid Keller, The Riesel Problem: Definition and Status
- The prime puzzles & Problem connection, Problem 29.- Brier Numbers