ムモンハビロキバガ
ムモンハビロキバガ | ||||||||||||||||||||||||
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成虫(性別不明)
頭部の独特な模様(終齢幼虫)
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Scythropiodes lividula (Meyrick, 1932) | ||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||
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和名 | ||||||||||||||||||||||||
ムモンハビロキバガ
(旧名) ムモンヒロバキバガ |
ムモンハビロキバガ(無紋羽広牙蛾、学名:Scythropiodes lividula)は、チョウ目ヒゲナガキバガ科に属する小型のガの一種である。和名は長年 ムモンヒロバキバガ が使用されていたが、ムモンハビロキバガ に変更[1]された。
分布
[編集]本州、四国、九州[2][3][4]、石垣島、朝鮮半島南部、中国[4]に分布している。
形態
[編集]開張は雄雌とも16.4-20.7mm[4][5][6]。静止時の全長(頭部(含:下唇髭)端-翅端)は11mmほど[7]。前翅は黄土色を帯びた灰色、前縁は細く黄土色で縁取られている[3]。翅を閉じたとき両前翅中央やや後方に小さな黒点が1つある[8]。
下唇髭(ラビアル・パルプス(labial palpus))(注[9])が前方に長く曲がって上向しており[10][11]、これがイノシシが持つようなやや反り返ったキバに見える。静止時ほぼフラットなドーム状に翅を伏し閉じる[12]。触角は黄土色で糸状、静止時の全長の半分強程度の長さ[13]があり、静止時 前翅前縁に沿って後方へと伸ばす[12]。
終齢幼虫は体長約19mm[14]。幼虫の頭部には歌舞伎役者の隈取りに似る褐色でほぼ左右対称な独特の模様(雲状紋[15][16][17])がある。
蛹は茶褐色で体長10mm前後[3]。
生態
[編集]年1回の発生[2][14]。成虫は6-7月と8-9月にも採集されることより年2回以上発生している可能性がある[4][18]。幼虫は4月頃から現れる[3]。幼虫は非常に広食[14]であり、様々な葉の縁を折り曲げ[2]たり、綴り合せ[2][3][4][14]たり、巻いたり[3][4][14]して巣(シェルター[19])をつくる。葉でできた巣の中で蛹になる[20]。卵[14]もしくは若齢幼虫[3][14]で越冬すると考えられている。
寄主植物
[編集]アサダ[3][4]、 コナラ属[4]、 カシ[14]、 ミズナラ[3]、 コナラ[3]、 ウラジロガシ[3]、 アラカシ[3]、 クリ[3][4]、 アキニレ[2][14]、 エノキ[4][14]、 シロダモ[4][14]、 マンサク[3][4]、 キンキマメザクラ[3]、 リンゴ[2][4]、 セイヨウリンゴ[3]、 ナシ[2][14]、 マルバシャリンバイ[2][14]、 シャリンバイ[3][4]、 ビワ[4][14]、 ヌルデ[4][14]、 ツバキ[14]、 ヤブツバキ[3][4]、 グミ[2][14]、 ナワシログミ[3][4]、 ナツハゼ[3][4]、 カキノキ[2][14]などがある。
ギャラリー
[編集]-
終齢幼虫
-
簀巻きの巣
(古い巣から乗換え後) -
簀巻きの巣内での幼虫の体勢
注釈
[編集]- ^ 『日本の鱗翅類』 p.621 140.ムモンハビロキバガ(改称)
- ^ a b c d e f g h i j 『日本産蛾類大図鑑 第1巻:解説編』 p.273 ムモンヒロバキバガ
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 『日本の鱗翅類』 p.621 140.ムモンハビロキバガ
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 『日本産蛾類標準図鑑Ⅲ』 p.220 ムモンハビロキバガ
- ^ 『日本産蛾類大図鑑 第1巻:解説編』p.273 ムモンヒロバキバガ 「開張 18-20mm.」
- ^ 『日本の鱗翅類』 p.621 140.ムモンハビロキバガ 「開張 18-21mm.」
- ^ 『みんなで作る日本産蛾類図鑑』 ムモンヒロバキバガ Scythropiodes lividula (Meyrick, 1932) 写真
- ^ 『日本産蛾類標準図鑑Ⅲ』 p.220 ムモンハビロキバガ 「中室端に1黒点がある.」
- ^ 下唇髭(ラビアル・パルプス(labial palpus))は、昆虫の系統により様々な形状だが、アゲハチョウ上科では複眼の下に位置し巻取られたゼンマイ状の口吻(ガレア)を半ば収納し左右から挟み支える形状の器官.
- ^ 『日本の鱗翅類』 p.618 ハビロキバガ亜科
- ^ 『日本産蛾類大図鑑 第1巻:解説編』p.272 ヒゲナガキバガ科 「下唇髭は長く,上向きに曲がる.」
- ^ a b 『日本の鱗翅類』 p.967 写真140.Scythropiodes lividula (d)adult,resting posture
- ^ 『日本産蛾類標準図鑑Ⅲ』 p.219 ハビロキバガ亜科 「触角は前翅の2/3から1/2程度」
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 『原色日本蛾類幼虫図鑑(下)』
- ^ この模様を図鑑では雲に例える場合が多い.
- ^ 『日本の鱗翅類』 p.620 Fig.III-33 A. head frontal, p.621 140.ムモンハビロキバガ 「頭部は光沢のない淡灰褐色で…黒褐色の不規則な雲状紋がある.」
- ^ 『原色日本蛾類幼虫図鑑(下)』「頭部は光沢のない淡灰褐色で,黒褐色の乱れた雲状の斑紋がある。」
- ^ 『日本の鱗翅類』 p.621 140.ムモンハビロキバガ 「化性ははっきりしない.」
- ^ 『日本の鱗翅類』 p.967 写真140.Scythropiodes lividula (a)larval shelter
- ^ 『日本の鱗翅類』 p.967 写真140.Scythropiodes lividula (c)pupa
参考文献
[編集]- 六浦晃 ほか (1969-3-20). “211.ムモンヒロバキバガ”. 『原色日本蛾類幼虫図鑑(下)』. 保育社. pp. 110-111. ISBN 4-586-30047-7
- 森内茂 (1982-9-20). “40.LECITHOCERIDAE ヒゲナガキバガ科 ムモンヒロバキバガ”. 『日本産蛾類大図鑑 第1巻:解説編』. 講談社. pp. 272-273. ISBN 4-06-1240374
- 斉藤寿久 (2011-2-20). “ヒゲナガキバガ科 ハビロキバガ亜科 140.ムモンハビロキバガ”. 『日本の鱗翅類-系統と多様性』. 東海大学出版会. pp. 618,620-621,967. ISBN 978-4-486-01856-8
- 広瀬俊哉,那須義次,坂巻祥孝,岸田泰則 (2013-2-12). “ヒゲナガキバガ科 ハビロキバガ亜科 ムモンハビロキバガ”. 『日本産蛾類標準図鑑Ⅲ』. 学研教育出版. pp. 219-220. ISBN 978-4-05-405109-6
- “『ムモンヒロバキバガ Scythropiodes lividula (Meyrick, 1932)』”. みんなで作る日本産蛾類図鑑. 2023年3月31日閲覧。