ポリュビオスの暗号表
ポリュビオスの暗号表(または ポリュビオスの換字表、Polybius square または、Polybius checkerboard)は、古代ギリシアの歴史家、ポリュビオスによって発明された換字式暗号の一種である。
暗号化
[編集]最初に行われた文字がギリシア文字であったが、どんな文字にも転用可能である。例えば、アルファベット(以後、ラテン文字を指す)で見れば、
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
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1 | A | B | C | D | E |
2 | F | G | H | I,J | K |
3 | L | M | N | O | P |
4 | Q | R | S | T | U |
5 | V | W | X | Y | Z |
の、表を使い、例えば「AND」を暗号化するときは「11 33 14」とする。5×5の升に入っていることから「square(正方形)」と付いているが、アルファベットでは、26文字であり、上の表においてもJが抜けている。このときは、暗号「24」をIとJのどちらかとし、文脈に拠る。しかし、これを避けて、6×5、5×6に拡張する場合もある。このような問題は、(発明者であるポリュビオスが使っていた)ギリシア文字は24文字であった点に起因する。なお、IとJを重ねて1つの升に入れる考え方は、例えばプレイフェア暗号でも使われている。
行や列を増やせば文字数の多い言語にも対応可能であり、アルファベット以外でも成り立つ。日本の「忍びいろは」や「字変四八」は、同様の暗号の例である。これらはポリュビオスとは別に、1000年以上後になって独自に発明された。
安全性
[編集]Aを11に変えるという作業は、単一換字式暗号と理論上は同じであるため(暗号化後が数字かアルファベットかの違い)、頻度分析で容易に解読することが出来る。しかし、その可塑性という面で、例えばADFGVX暗号では第一段階として使われている。つまり単体でみれば、平文を晒すことと同義のような暗号だが、様々な暗号に復号しやすいといったメリットにおいて、ある暗号方式の「一部」とすれば、現代でも使える技術である。
登場する作品
[編集](発表年順)
- 五十音順。厳密に言えば他の暗号方法も混ざっている。頻度分析を使わずに解読するために工夫が施されている。乱歩曰く「暗号がただむずかしいばかりで、味もそっけもない。」(桃源社版『江戸川乱歩全集』の「あとがき」)
- 江戸川乱歩著『算盤が恋を語る話』初出:「写真報知」1925年(大正14年)3月15日
- ジャッカ―電撃隊『第30話 死を呼ぶ暗号!猛毒コブラツイスト』1977年(昭和52年)11月
- PSYCHO-PASS サイコパス 3 『第1話 ライラプスの召命』2019年 (令和元年)10月
- 五十音順。
関連項目
[編集]参考文献
[編集]- 英語版Wikipedia「Polybius square」
- 英語版Wikipedia「Cryptography in Japan」
- 江戸川乱歩著『江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者』光文社 ISBN 4-334-73716-1