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燐灰石スーパーグループ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ベロフ石グループから転送)
燐灰石スーパーグループ
分類 リン酸塩鉱物
ケイ酸塩鉱物
硫酸塩鉱物
シュツルンツ分類 8.BN.05
9.AH.25
7.BD.20
化学式 A5(XO4)3Z
A: Ca, Pb, Sr, Ba, Y, La, Ce, Nd, Na, Bi, Th, Fe, REE, Ln
X: P, S, Si, As, V, B, Al
Z: F, Cl, (OH), O
結晶系 六方晶系
三方晶系
単斜晶系
対称 H-M記号: 6/m
空間群: P 63/m
晶癖 六角柱状結晶
偽六角板状結晶
へき開 {0001} 不明瞭
{1010} 悪い
断口 貝殻状
粘靱性 脆い
モース硬度 5
光沢 ガラス光沢
白・黄・緑・赤・青など
条痕
透明度 透明 - 半透明
蛍光 なし
文献 [1][2]
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
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燐灰石スーパーグループ (Apatite Supergroup) とは、鉱物グループの1つ[1]

概要

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燐灰石スーパーグループは、シュツルンツ分類ではリン酸塩鉱物を基本とするが、硫酸塩鉱物ケイ酸塩鉱物にも分類がまたぐグループである。これは、リン酸塩基硫酸塩基ケイ酸塩基が全て正四面体の構造をしており、大きさも似ているため、置換関係にあるためである。

結晶系は基本的には六方晶系であり、一部が三方晶系単斜晶系に属する。結晶の形は、石英の結晶の頭を縮めたような、六角柱に似た結晶で産出する。また、結晶の頭が平らとなった、六角板状結晶もしばしば見られる。色は非常に様々である[1][2]

化学式

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燐灰石スーパーグループの鉱物の基本的な組成式A5(XO4)3Z である[1]。ただし、結晶化学的には、組成式は A2A3(XO4)3Z と、Aが2つに分かれている[3]フッ素燐灰石 (Fluorapatite) [4]のように、5つとも全て同じ種類の原子が入る場合も多いため、分けられずにまとめられる場合が多い。ベロフ石グループ[5]、ヘディフェングループ[6]の全てとブリソ石グループの一部[7]、及び燐灰石グループの宮久石 (Miyahisaite) [8]はより結晶化学的に正しい組成式で記述されている。またトリトマイト (Tritomite-(Y)・(Y,Ca,La,Fe)5(Si,B,Al)3)(O,OH,F)13) [9]セリウムトリトマイト (Tritomite-(Ce)・(Ce,La,Y,Th)5(Si,B)3)(O,OH,F)13) [10]の組成式は上記のものと違うように見えるが、少し書き換えれば実際には同じであることが分かる[注釈 1]

Aには CaPbSr BaYLaCeNdNaBi が入る。希土類元素 (REE) 、ランタノイド (Ln) としてまとめられる事がある。また、不純物として ThFe が入る事がある。

Xには PSSiAsV が入る。また、不純物として BAl が入る事がある。

XにはFCl(OH) が入る。また不純物として O が入る事がある。

分類・種類

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燐灰石グループ

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燐灰石グループ (Apatite Group) の鉱物は12種類が独立種として登録されている。全ての鉱物がリン酸塩鉱物に属する[注釈 2]。結晶系は全ての鉱物が六方晶系に属する。

燐灰石グループの鉱物[11]
英名 和名 化学組成 結晶系 備考・注釈
Alforsite アルフォス石 Ba5(PO4)3Cl 六方晶系 [12]
Chlorapatite 塩素燐灰石 Ca5(PO4)3Cl 六方晶系 [13]
Fluorapatite フッ素燐灰石 Ca5(PO4)3F 六方晶系 断り無く「燐灰石」と言えば普通はフッ素燐灰石を指す。[4]
Hydroxylapatite 水酸燐灰石 Ca5(PO4)3(OH) 六方晶系 [14]
Johnbaumite ジョンバウム石 Ca5(AsO4)3(OH) 六方晶系 [15]
Mimetite ミメット鉱 Pb5(AsO4)3Cl 六方晶系 [16]
Miyahisaite 宮久石 (Sr,Ca)2Ba3(PO4)3F 六方晶系 日本産新鉱物[8]
Pyromorphite 緑鉛鉱 Pb5(PO4)3Cl 六方晶系 [17]
Stronadelphite ストロナデルフィ石 Sr5(PO4)3F 六方晶系 フッ素燐灰石ストロンチウム置換体。[18]
Svabite スヴァブ石 Ca5(AsO4)3F 六方晶系 [19]
Turneaureite ターノール石 Ca5(AsO4)3Cl 六方晶系 [20]
Vanadinite 褐鉛鉱 Pb5(VO4)3Cl 六方晶系 [21]
独立種ではない燐灰石グループの鉱物
変更後の名称 組成 変更後の名称 削除年 備考・注釈
英名 和名 英名 和名
Carbonate-fluorapatite 炭酸フッ素燐灰石 Ca5(PO4,CO3)3(F,O) Fluorapatite フッ素燐灰石 2008 Carbonate-rich Fluorapatite とも呼ばれる。[22]
Carbonate-hydroxylapatite 炭酸水酸燐灰石 Ca5(PO4,CO3)3(OH,O) Hydroxylapatite 水酸燐灰石 2008 Carbonate-rich Hydroxylapatite とも呼ばれる。[23]
Hydroxylapatite-M 単斜水酸燐灰石 Ca5(PO4)3(OH) Hydroxylapatite 水酸燐灰石 2010 当初は単斜晶系の水酸燐灰石として記載された。[24]
Johnbaumite-M 単斜ジョンバウム石 Ca5(AsO4)3(OH) Johnbaumite ジョンバウム石 2010 当初は単斜晶系のジョンバウム石として記載された。当初は Fermorite と呼ばれた。[25]
Mimetite-M 単斜ミメット鉱 Pb5(AsO4)3Cl Mimetite ミメット鉱 2010 当初は単斜晶系のミメット鉱として記載された。[26]

ベロフ石グループ

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ベロフ石グループ (Belovite Group) の鉱物は7種類が独立種として登録されている。全ての鉱物がリン酸塩鉱物に属する。結晶系はフルオロカファイト (Fluorcaphite) とフルオロストロファイト (Fluorstrophite) が三方晶系、その他の鉱物が六方晶系に属する[注釈 3]

ベロフ石グループの鉱物[5]
英名 和名 化学組成 結晶系 備考・注釈
Belovite-(Ce) ベロフ石 NaCeSr3(PO4)3F 三方晶系 [27]
Belovite-(La) ランタンベロフ石 NaLaSr3(PO4)3F 三方晶系 [28]
Carlgieseckeite-(Nd) カールギエセック石 NaNdCa3(PO4)3F 三方晶系 [29]
Deloneite デロネ石 (Na0.5REE0.25Ca0.25)(Ca0.75REE0.25)Sr1.5(CaNa0.25REE0.25)(PO4)3F0.5(OH)0.5 三方晶系 [30]
Fluorcaphite フルオロカファイト SrCaCa3(PO4)3F 六方晶系 名称は組成の頭文字をつなぎ合わせたもの。[31]
Fluorstrophite フルオロストロファイト SrCaSr3(PO4)3F 六方晶系 名称は組成の頭文字をつなぎ合わせたもの。[32]
Kuannersuite-(Ce) クアンナースイト石 NaCeBa3(PO4)3F0.5Cl0.5 三方晶系 [33]

ブリソ石グループ

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ブリソ石グループ (Britholite Group) の鉱物は7種類が独立種として登録されている。全ての鉱物がケイ酸塩鉱物に属する。結晶系は5種の鉱物が六方晶系に属する(トリトマイトとセリウムトリトマイトは不明)。

ブリト石グループの鉱物[7]
英名 和名 化学組成 結晶系 備考・注釈
Britholite-(Ce) ブリソ石 Ca2(Ce,Ca)3(SiO4,PO4)3(OH,F) 六方晶系 [34]
Britholite-(Y) イットリウムブリソ石 Ca2(Y.Ca)3(SiO4,PO4)3(OH,F) 六方晶系 日本産新鉱物。阿武隈石 (Abukumalite) とも呼ばれる。[35]
Fluorbritholite-(Ce) フッ素ブリソ石 Ca2(Ce,Ca)3(SiO4,PO4)3(F,OH) 六方晶系 [36]
Fluorbritholite-(Y) イットリウムフッ素ブリソ石 Ca2(Y,Ca,Ln)3(SiO4,PO4)3(F,OH) 六方晶系 イットリウムブリソ石の水酸基がフッ素に置換しており、2009年に承認[37]
Fluorcalciobritholite フッ素灰ブリソ石 (Ca,Ce)5(SiO4,PO4)3F 六方晶系 [38]
Tritomite-(Ce) セリウムトリトマイト (Ce,La,Y,Th)5(Si,B)3)(O,OH,F)13 六方晶系? 含有する放射性元素の影響でメタミクト化しているものが多く、結晶系の詳細など不明な点が多い[10]。「セリウムトリトメ石」とも。
Tritomite-(Y) トリトマイト (Y,Ca,La,Fe)5(Si,B,Al)3)(O,OH,F)13 六方晶系? セリウムトリトマイトと同様[9]
独立種ではないブリソ石グループの鉱物
変更後の名称 組成 変更後の名称 削除年 備考・注釈
英名 和名 英名 和名
Britholite-(La) ランタンブリソ石 Ca2(La,Ca)3(SiO4,PO4)3(OH,F) (承認されていない) (なし) 発見の報告があるが、承認されていない。[39]
Calciobritholite カルシオブリソ石 (Ca,Y)5(SiO4,PO4)3(OH) (承認されていない) (なし) 発見の報告があるが、承認されていない。[40]
UM2007-44-SiO:CaFREE (Ca,Ce)2(Nd,Y,Ce)3(SiO4,PO4)3(F,OH) (承認されていない) (なし) セリウムフッ素ブリソ石のネオジム卓越体。発見の報告があるが、承認されていない。[41]

エレスタド石グループ

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エレスタド石グループ (Ellestadite Group) の鉱物は4種類が独立種として登録されている。全ての鉱物がケイ酸塩鉱物に属する[注釈 4]。結晶系は全ての鉱物が六方晶系に属する。

エレスタド石グループの鉱物[42]
英名 和名 化学組成 結晶系 備考・注釈
Chlorellestadite 塩素エレスタド石 Ca5(SiO4)1.5(SO4)1.5Cl 六方晶系 合成実験では存在が示されていたが、ジョージア南オセチアの火山噴出物から発見され、2017年に承認された[43]。旧称Ellestadite-(Cl) 。
Fluorellestadite フッ素エレスタド石 Ca5(SiO4)1.5(SO4)1.5F 六方晶系 Ellestadite-(F) とも呼ばれる。[44]
Hydroxylellestadite 水酸エレスタド石 Ca5(SiO4)1.5(SO4)1.5(OH) 単斜晶系 Ellestadite-(OH) とも呼ばれる。1970年発見の日本産新鉱物とされていたが、1937年に記載されていた「エレスタド石」と同一と判明した。[45]
Mattheddleite マットヘドル石 Pb5(SiO4)1.5(SO4)1.5(Cl,OH) 六方晶系 水酸基卓越体の存在が推測されている[46]

ヘディフェングループ

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ヘディフェングループ (Hedyphane Group) の鉱物は7種類が独立種として登録されている。アイオロス石 (Aiolosite) 、カラコレス石 (Caracolite) 、セサノ石 (Cesanite) が硫酸塩鉱物、フッ素燐ヘディフェン(Fluorphosphohedyphane) 、ヘディフェン (Hedyphane) 、モレランド石 (Morelandite) 、燐ヘディフェン (Phosphohedyphane) はリン酸塩鉱物に属する。結晶系はカラコレス石が単斜晶系、その他の鉱物が六方晶系に属する。

ヘディフェングループの鉱物[6]
英名 和名 化学組成 結晶系 備考・注釈
Aiolosite アイオロス石 Na2(Na2Bi)(SO4)3Cl 六方晶系 [3]
Caracolite カラコレス石 Pb2Na3(SO4)3Cl 単斜晶系 燐灰石スーパーグループで唯一単斜晶系に属する鉱物。[47]
Cesanite セサノ石 Ca2Na3(SO4)3(OH) 六方晶系 [48]
Fluorphosphohedyphane フッ素燐ヘディフェン Ca2Pb3(PO4)3F 六方晶系 Phosphohedyphane-(F) とも呼ばれる。[49]
Hedyphane ヘディフェン Ca2Pb3(AsO4)3Cl 六方晶系 [50]
Morelandite モレランド石 Ca2Ba3(AsO4)3Cl 六方晶系 [51]
Phosphohedyphane 燐ヘディフェン Ca2Pb3(PO4)3Cl 六方晶系 [52]

日本産新鉱物

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燐灰石スーパーグループに属する、日本で発見された新鉱物は、1966年[53]福島県で発見されたイットリウムブリソ石 (Britholite-(Y)) [35]2011年大分県で発見された宮久石 (Miyahisaite) [8]がある。イットリウムブリト石は当初発見地にちなんで阿武隈石 (Abukumalite) [35]と呼ばれていた。

なお、1971年埼玉県で発見されたとされていた水酸エレスタド石 (Hydroxylellestadite) [45]は、2010年の再定義に伴って模式地がアメリカ・カリフォルニア州に変更された。

注釈

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  1. ^ トリトマイトの (O,OH,F) の数は 13 であり、これは 4×3+1 と等しく、燐灰石スーパーグループの A5(XO4)3Z に合わせ、書き換えることが出来る。
  2. ^ ジョンバウム石ミメット鉱スヴァブ石ターノール石は砒酸塩鉱物、褐鉛鉱はバナジン酸塩鉱物であるが、全てリン酸塩鉱物に属している。
  3. ^ 三方晶系と六方晶系は同一の結晶構造と見る場合もある、
  4. ^ エレスタド石グループの鉱物はケイ酸塩基と硫酸塩基が等量であるため、理屈上はどちらに分類されてもよい。実際にはケイ酸塩基が含まれている鉱物は、量に関わらず原則的にケイ酸塩鉱物に分類される傾向がある。

出典

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  1. ^ a b c d Apatite Supergroup mindat.org
  2. ^ a b Apatite Mineral Data Mineralogy Database
  3. ^ a b Aiolosite mindat.org
  4. ^ a b Fluorapatite mindat.org
  5. ^ a b Belovite Group mindat.org
  6. ^ a b Hedyphane Group mindat.org
  7. ^ a b Britholite Group mindat.org
  8. ^ a b c Miyahisaite mindat.org
  9. ^ a b Tritomite-(Y) mindat.org
  10. ^ a b Tritomite-(Ce) mindat.org
  11. ^ Apatite Group mindat.org
  12. ^ Alforsite mindat.org
  13. ^ Chlorapatite mindat.org
  14. ^ Hydroxylapatite mindat.org
  15. ^ Johnbaumite mindat.org
  16. ^ Mimetite mindat.org
  17. ^ Pyromorphite mindat.org
  18. ^ Stronadelphite mindat.org
  19. ^ Svabite mindat.org
  20. ^ Turneaureite mindat.org
  21. ^ Vanadinite mindat.org
  22. ^ Carbonate-rich Fluorapatite mindat.org
  23. ^ Carbonate-rich Hydroxylapatite mindat.org
  24. ^ Hydroxylapatite-M mindat.org
  25. ^ Johnbaumite-M mindat.org
  26. ^ Mimetite-M mindat.org
  27. ^ Belovite-(Ce) mindat.org
  28. ^ Belovite-(La) mindat.org
  29. ^ Carlgieseckeite-(Nd) mindat.org
  30. ^ Deloneite mindat.org
  31. ^ Fluorcaphite mindat.org
  32. ^ Fluorstrophite mindat.org
  33. ^ Kuannersuite-(Ce) mindat.org
  34. ^ Britholite-(Ce) mindat.org
  35. ^ a b c Britholite-(Y) mindat.org
  36. ^ Fluorbritholite-(Ce) mindat.org
  37. ^ Fluorbritholite-(Y) mindat.org
  38. ^ Fluorcalciobritholite mindat.org
  39. ^ Britholite-(La) mindat.org
  40. ^ Calciobritholite mindat.org
  41. ^ UM2007-44-SiO:CaFREE mindat.org
  42. ^ Ellestadite Group mindat.org
  43. ^ Chlorellestadite mindat.org
  44. ^ Fluorellestadite mindat.org
  45. ^ a b Hydroxylellestadite mindat.org
  46. ^ Mattheddleite mindat.org
  47. ^ Caracolite mindat.org
  48. ^ Cesanite mindat.org
  49. ^ Fluorphosphohedyphane mindat.org
  50. ^ Hedyphane mindat.org
  51. ^ Morelandite mindat.org
  52. ^ Phosphohedyphane mindat.org
  53. ^ Britholite-(Y) Mineral Data Mineralogy Database

関連項目

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