プレミアム・エコノミー
プレミアム・エコノミーとは旅客機の座席の等級における中級客室のことであり、エコノミークラスとビジネスクラスの中間に位置づけられる。運賃、座席の座り心地、サービス水準なども両クラスの中間程度となる。エバー航空が1991年に導入したのが嚆矢とされる。
特色
[編集]ビジネスクラスの各種サービスの充実が進められた結果、ビジネスクラスとエコノミークラスのサービス内容(およびビジネスクラス運賃やエコノミークラス正規運賃とエコノミークラスの割引料金)に差がつきすぎてしまったため、各社が中長距離便において導入していった。
運賃に関しては、エコノミー正規運賃かそれに準ずる運賃でないと利用できないものから、割引運賃でも多少の差額を支払うことによって利用可能なものまで、さまざまな取扱がある。
座席に関しては、日本航空やブリティッシュ・エアウェイズなどのように専用のシートを開発し、専用のコンパートメント内で提供するものや、旧式のビジネスクラス座席を流用するものから、ユナイテッド航空やスカンジナビア航空などのように、エコノミークラスと同等の座席で前後間隔を多少広げただけの方法でエコノミークラスと差別化されたものなど、航空会社によってさまざまなサービスが存在している。多くの場合、座席前後幅(シートピッチ)は狭くても95cm程度で広い所では115cm以上となっており、居住性においては鉄道車両における特急列車・新幹線の普通車クラスからグリーン車クラスまで幅広く存在する(例えば、日本航空では約97~107cm、全日空では約97cm)。いずれの場合も肘掛けの幅を広く取られていることが多いため、標準的には概ね山陽新幹線や九州新幹線などで展開されている新幹線規格車両における横2+2列の普通車指定席のサービス水準に相当する。
また、一部のビジネス客重視路線においては、ビジネスクラスとプレミアムエコノミークラスのみとしている路線もある(例:シンガポール航空や全日空の一部の路線)
国際線での導入が中心であるが、国内線に於いても一部の航空会社で同等のクラスが設定されている。日本国内に於いては日本エアシステム(当時)が国内線にボーイング777(通称「レインボーセブン」)を導入した際に、同機材に限りエコノミークラスとスーパーシートの中間にあたるミドルクラスとしてレインボーシートを設定しており、1000円の追加料金で広いピッチの座席やボーナスマイルといったサービスが付帯されていた。日本航空ではエコノミークラスと「国内線ファーストクラス」の間のミドルクラスとして「クラスJ」と称する座席の広い上級クラスを提供しており[注釈 1]、エコノミークラスの料金に1000円の追加料金でシートピッチの広い座席に加えてマイル積算率が大きくなるサービスを設定している[注釈 2]。スカイマークは2014年6月から2015年1月まで運航していたエアバスA330型機の座席を、全席プレミアムエコノミー相当の上級クラス(グリーンシート)としていた[注釈 3] 尚、スカイマークは座席以外のサービス基準は国内線エコノミークラスと同等である。[注釈 4]
機内食についてはエコノミークラスと同等の場合が多いが、シャンパンや軽食などの提供で差をつけている会社も多い。また、空港ラウンジの使用や特設カウンターの提供、機内アメニティの提供を行なうケースもある[1]。
登場から10年以上が経過し、当初は初期のビジネスクラス同様座席程度の違いでしかなかったものが、座席幅の拡大や座席間隔の拡大、ソフトサービスの拡充、果てはニュージーランド航空のように座席配置そのものに大幅な変更を加え全ての座席が通路または窓側に来るように配置するなど、そのサービス面はかつてのビジネスクラス同様年々拡充傾向にある。
基本運賃番号は航空会社にもよるが、W,O,Tなどが割り当てられる。エコノミーと同じYを利用する場合もある。
エコノミークラスとの差異
[編集]エコノミークラスとの違いは以下の様なものが挙げられる[要出典]。ただし航空会社によってサービスは大きく異なる。
- フリークエントフライヤーや普通運賃で搭乗する旅行者へのアップグレード特典
- エコノミークラスと区切られた客室、足回りの広い座席(座席間隔は36–38インチ (91–97 cm)程度で、エコノミークラスより広く取られている)、足置き
- 充実の機内エンターテイメント
- 専属アテンダント
- 座り心地のよい座席、広めの横幅
- 個人用電源
- 個人用電話
- 専用の空港ラウンジ
- 優先搭乗
- 耳栓などの小間物類
- 充実した食事や飲み物類
- 荷物の重量制限の緩和
航空会社によってはエコノミークラス全体をプレミアムエコノミーとすることもある。例えばユナイテッド航空ではボーイング757-200型機運用の大陸横断便のエコノミークラスはすべてプレミアム・エコノミーとして運用した。
2012年10月よりキャセイパシフィック航空が現地のG.O.D.ブランドと共同でプレミアム・エコノミー客向けの小間物入れを配布している。一つ一つ繋げられるようになっていて、集めて飾る事もできるようになっている。初版は「喜」(往路)と「運」(復路)がテーマで、それぞれ中国の神々が機内で寛ぐ様子と、開運を表す雲があしらってある。プラスチックはは90%再生原料、歯ブラシはコーンスターチとセルロースを利用した環境負荷の少ないものが使われている。[2] [3]
シート配列
[編集]- 横6列の配置 (2-2-2配列) -ボーイング767 (ごく一部の航空会社のみ)
- 横7列の配置(2-3-2配列)-ボーイング787、エアバスA330、エアバスA340、エアバスA350 XWB(チャイナエアライン、ルフトハンザドイツ航空、スイス インターナショナル エアラインズ、エミレーツ航空のみ)、エアバスA380(2階席のみ)
- 横8列の配置(2-4-2配列)-ボーイング747、ボーイング777、ボーイング777X、エアバスA350 XWB(その他A350 XWB運用する航空会社のみ)、エアバスA380(1階席のみ)
運用する航空会社
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現在運用中の航空会社(一部)
[編集]- 『JALプレミアムエコノミー』(国際線)『クラスJ』(国内線) 日本航空
- 『プレミアムエコノミー』 全日本空輸、ヴァージン・アトランティック航空、タイ国際航空(一部路線)、ニュージーランド航空、カンタス航空、エールフランス、チャイナエアラインなど
- 『エリートクラス』 エバー航空(旧名は『エバーグリーン・デラックスクラス』)
- 『プレミアム・エコノミークラス』 キャセイパシフィック航空
- 『エグゼクティブエコノミー』 シンガポール航空(シンガポール~ロサンゼルスノンストップ便、シンガポール~ニューアーク間)
- 『エコノミープラス』 パキスタン国際航空
- 『ワールドトラベラープラス』 ブリティッシュ・エアウェイズ
- 『エコノミーエクストラ』 スカンジナビア航空(一部長距離便)
- 『クラシカ・プラス』 アリタリア-イタリア航空
- 『コンフォートクラス』 ターキッシュ エアラインズ、アエロフロート・ロシア航空
- 『エコノミーコンフォート』 アイスランド航空
- 『デルタ・コンフォートプラス』 デルタ航空
以前運用していた航空会社
[編集]関連項目
[編集]- レインボーシート
- 客室
- ファーストクラス
- 基本運賃番号
- JR旅客各社が展開する普通車指定席・座席定員制有料席。プレミアム・エコノミーと概念が類似している。[注釈 5]
- 近鉄80000系電車(愛称「ひのとり」)- 一般席はレギュラーシートを銘打っているが、従来の普通席よりも接客設備が飛躍的に向上しているため、レギュラーシートでありながら通常の特急料金に加えて100 - 200円の特別車両料金が別途加算される。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 「航空旅行ハンドブック ’11-‘12WINTER SCHEDULE」p34 プレミアムエコノミーの価値
- ^ Drescher, Cynthia (24 October 2012). “Cathay Pacific's Amenity Kits are Down with G.O.D.”. Jaunted (Condé Nast) 19 November 2012閲覧。
- ^ “Cathay Pacific unveils new inflight amenity kits designed by G.O.D for premium and economy class passengers”. Incentive Travel & Corporate Meetings. 2013年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年11月19日閲覧。