コンテンツにスキップ

フーガ・マジステール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

フーガ CM.170 マジステール

ベルギー空軍の曲技飛行隊「レ・ディアブル・ルージュ」の塗装が施されたマジステール

ベルギー空軍の曲技飛行隊「レ・ディアブル・ルージュ」の塗装が施されたマジステール

フーガ CM.170 マジステール(Fouga CM.170 Magister)は、フランスフーガ社で開発されたジェット練習機英語版

概要

[編集]

本機は、最初からジェットエンジンを動力とする練習機として開発された世界初の機体である(それ以前のジェット練習機は、戦闘機から派生したT-33のように、最初から練習機として開発されていた訳ではなかった)。形態の特徴は110度のV字型尾翼と主翼付根に2基のジェットエンジンを持つことである。また全高が低いため、背の高いパイロットなら地上から直接搭乗することができた。試作機は1952年7月23日に初飛行。

その優れた操縦性と燃費の良さから、ベルギーイスラエルブラジル他多くの国に輸出された。曲技飛行能力にも優れていたため、フランス空軍曲技飛行隊パトルイユ・ド・フランスでも1964年から1980年まで使用された。ドイツフィンランド、イスラエルではライセンス生産もされた。フランスでの生産は1969年末まで行われたが、フーガは1958年ポテに買収され、その後1967年シュドになり、さらに1970年アエロスパシアルとなったため、機名は何度も変わっている。

軽攻撃機としても運用可能であり、コンゴ動乱ではカタンガ政府軍がコンゴ国連軍への攻撃に使用されてそれになりに活躍したが、スウェーデン空軍サーブ 29 トゥンナンによって全て地上で破壊された。第三次中東戦争ではイスラエル空軍が軽攻撃機として使用し、MiG-21と空中戦も行った。

本機は50年近くもの長きに渡って運用された。フランス空軍から最後の機体が退役したのは1996年のことで、イスラエルでは近代化改修によって2000年代に入ってもしばらく使われていた。

派生型

[編集]
CM.175 ゼフィール
ポテ・ハインケル CM.191
  • CM.170-1:チュルボメカ マルボレII エンジンを搭載した初期生産型。761機製造。
  • CM.170-2:エンジンを出力4.7kNのマルボレIIAに換装したタイプ。137機製造。
  • CM.173 シュペル・マジステール(Super Magister):出力5.1kNのマルボレVIエンジン2機と射出座席を装備した機体。試作機が1機のみ製造。
  • CM.175 ゼフィール(Zephyr)フランス海軍向けにアレスティング・フックを装備した艦上練習機型。30機製造。
  • CM.191:ポテハインケルが共同開発したビジネスジェット機型。コックピットがサイド・バイ・サイド式に変更され、4人が搭乗できる。顧客があまりにも少なかったことから、試作のみに終わる。
  • IAI ツヅキット(Tzukit):軽攻撃能力向上を目的として主翼下のハードポイントを強化した、イスラエル空軍の近代化改修機。ツヅキットとはツグミの一種。
  • フーガ 90:マジステールの後継として開発。エンジンを出力7.6kNのチュルボメカ アスタファンIVGに換装し、キャノピーを広視界型に変更、アビオニクスも近代化する予定であったが、発注を得られなかった。

運用国

[編集]

ヨーロッパ

展示されるフランス空軍機
旧西ドイツ軍機

アフリカ

中近東、アジア

イスラエル空軍のツヅキット

中南米

ブラジル空軍のT-24

仕様 (CM.170-1)

[編集]
三面図
三面図
  • 乗員:2名
  • 全長:10.06 m
  • 全幅:12.15 m(主翼端増槽含む)
  • 全高:2.80 m
  • 翼面積:17.30 m2
  • 空虚重量:2,150 kg
  • 最大離陸重量:3,200 kg
  • 動力:チュルボメカ マルボレII ターボジェットエンジン × 2
  • 定格推力:3.92 kN × 2
  • 最大速度:715 km/h
  • 実用上昇限度:11,000 m
  • 航続距離:1,200 km(増槽使用時)
  • 武装:機首に7.5mmまたは7.62mm機関銃(弾丸200発)2基を搭載可能。また、100 kgまでの武装(50kg無誘導爆弾、ロケット弾)を2箇所のハードポイントに搭載

関連項目

[編集]