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バーソルフ級カッター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
バーソルフ級巡視船から転送)
バーソルフ級カッター
基本情報
船種 大型海洋保安カッター (WMSL, Maritime Security Cutter, Large)
運用者  アメリカ沿岸警備隊
就役期間 2008年 - 現在
前級 ハミルトン級
次級 アーガス級英語版
要目
基準排水量 3,206トン
満載排水量 4,112トン
全長 127.4 m
最大幅 16.5 m
深さ 6.42 m
機関方式 CODAG方式
主機
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力
  • ディーゼル: 19,310 hp
  • ガスタービン: 30,565 bhp
速力 28ノット
航続距離 12,000海里
乗員 126名 (士官19名/下士官13名/水兵94名)
兵装
搭載機 HH-65救難ヘリコプター×2機
レーダー
電子戦
対抗手段
  • AN/SLQ-32(V)2電波探知装置
  • Mk.53 NULKA デコイ発射機×2基
  • Mk.137 6連装デコイ発射機×2基
  • テンプレートを表示

    バーソルフ級カッター(バーソルフきゅうカッター)は、アメリカ沿岸警備隊の保有する大型海洋保安カッター: Maritime Security Cutter, Large, WMSL)の船級。いずれも著名な沿岸警備隊員に由来して命名されていることから、アメリカ海軍協会(USNI)やジェーン海軍年鑑ではレジェンド型カッター英語: Legend class cutter)とも称される[1]。計画名はNSC(National Security Cutter)[2][3]

    これまで沿岸警備隊が建造したカッターで最大の船である[1]ハミルトン級の更新用として、2008年より順次就役しつつあり、最終的には9隻の建造が計画されている。

    来歴

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    本級は、アメリカ沿岸警備隊が21世紀初頭より整備を開始した統合ディープウォーター・システム計画英語版の一環であり、その外洋における中核となることが構想されている。

    当初は、アメリカ海軍沿海域戦闘艦と同一の設計に基づいての建造が計画されていたが、沿海域戦闘艦計画の遅延などもあり、最終的には沿岸警備隊独自の設計によって進められることとなった。建造は、ノースロップ・グラマンが一括して行なっており、ミシシッピ州パスカグーラ造船所で建造されている[1]

    設計

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    遠縁の姉妹に当たる海軍の沿海域戦闘艦が非常に先進的な設計を模索していたのに対し、本級は従来通りのモノハル船型を採用しているが、設計にあたってはやはりステルス艦化が志向された。船質は鋼とされた。なお初期建造艦2隻では深刻な構造疲労が認められたことから、3番艦では設計変更が行われた[2]。ただしそれでも、就役直後の2012年初頭に行われた検査では深刻な腐食や亀裂、孔食が発見され、ドック入りを余儀なくされた[3]

    本級はクルーローテーション制度を導入し、年間230日、最大で連続185日という長期間の配備を予定している[2]。このことから居住性にも意が払われており、居住区は4人船室を採用、またラウンジ3室およびフィットネスルーム1室が設けられている。寝台は148名分が確保されているほか、造船所による試験では、最大250名分まで拡張可能とされた[3]

    主機はCODAG方式を採用しており、巡航機としてはV型20気筒MTU 20V1163ディーゼルエンジン(単機出力9,655馬力; デトロイトディーゼルによるライセンス生産機)、加速機としてはゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジン(30,565馬力)を使用する[3]。また精密な操艦が要求される状況に備えてバウスラスターを備えている[2]

    電源としては、キャタピラー3512ディーゼル発電機3基を搭載する[4]

    装備

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    本級は、沿岸警備隊が構築を進めているC4ISRシステムであるCGC2(Coast Guard Command and Control)に対応した能力を備えている[4]。本級のシステムは、イージスシステムのベースライン9と共通のソフトウェア資産を用いている[5]。またリンク 11に対応しており、海軍の艦艇とも情報共有が可能である[6]

    レーダーとしては、3次元式のTRS-3D/16ESと低空警戒・砲射撃指揮用のAN/SPQ-9B、対水上捜索・航海用のAN/SPS-73が搭載される[2][3]電子戦支援用として、AN/SLQ-32(V)2電波探知装置を搭載する[3]

    艦砲としては、海軍の沿海域戦闘艦と同様に70口径57mm単装速射砲(Mk.110; ボフォースMk.3)を搭載する。本級ではMk.160射撃盤が搭載されており[4]、Mk.46光学方位盤のほか、AN/SPQ-9Bも射撃指揮に用いられる。また近接防空用としてファランクス 20mmCIWSを備えているが、これは対水上射撃にも対応したブロック1Bとされている[3]電子攻撃用としては、従来と同様のMk.137 6連装 デコイ発射機に加えて、新型のNULKAアクティブデコイのためのMk.53連装発射機も搭載された[3]

    本級は、艦尾に複合艇の揚降を行うためのスリップ・ウェイを有しており、11メートル型複合艇まで対応できる。通常はCB-OTH 2隻とSRP 1隻が搭載・収容されている[3]

    船尾甲板には15m×24mのヘリコプター甲板が設置されている。艦載の救難ヘリコプターとして、HH-65 ドルフィンを2機搭載することができる。また場合によっては、HH-65を1機に減らして、かわりに無人航空機(UAV)2機を搭載することもある[3]

    同型艦

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    本級は8隻の建造が予定されたが、予算減から6隻に削減された。しかし議会の沿岸警備隊系議員が反対したことから、8隻の建造計画が復活した[1]。その後も建造は続いている。

    一覧表

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    # 艦名 起工 進水 就役 母港
    WMSL-750 バーソルフ
    USCGC Bertholf
    2005年
    3月29日
    2006年
    9月29日
    2008年
    8月4日
    カリフォルニア州
    アラメダ
    WMSL-751 ウェイシー
    USCGC Waesche
    2006年
    9月11日
    2008年
    7月12日
    2010年
    5月7日
    WMSL-752 ストラットン
    USCGC Stratton
    2009年
    7月20日
    2010年
    7月23日
    2012年
    3月31日
    WMSL-753 ハミルトン
    USCGC Hamilton
    2012年
    9月5日
    2013年
    8月10日
    2014年
    12月6日
    サウスカロライナ州
    チャールストン
    WMSL-754 ジェームズ
    USCGC James
    2013年
    5月17日
    2014年
    5月3日
    2015年
    8月8日
    WMSL-755 マンロー
    USCGC Munro
    2014年
    11月5日
    2015年
    9月12日
    2017年
    4月1日
    カリフォルニア州
    アラメダ
    WMSL-756 キンボール
    USCGC Kimball
    2016年
    3月4日
    2016年
    12月17日
    2019年
    8月24日
    ハワイ州
    ホノルル
    WMSL-757 ミジェット
    USCGC Midgett
    2017年
    1月27日
    2017年
    11月22日
    WMSL-758 ストーン
    USCGC Stone
    2018年
    9月14日
    2019年
    10月4日
    2021年
    3月19日
    サウスカロライナ州
    チャールストン
    WMSL-759 カルフーン
    USCGC Calhoun
    2021年
    7月23日
    2022年
    4月2日
    2024年
    4月20日
    WMSL-760 フリードマン
    USCGC Friedman

    運用史

    [編集]

    就役後、本級は環太平洋合同演習(リムパック)にも毎回参加しており、1番艦バーソルフは2012年と2018年、2番艦ウェイシーは2014年、3番艦ストラットンは2016年、6番艦マンローは2020年のリムパックに参加し、2014年のリムパックでは、ウェイシーが巡視船隊の旗艦を務めた[1]。1番艦バーソルフは、2014年に沿岸警備隊史上最長となる140日の哨戒航海を達成した[1]

    2019年3月18日、アメリカ第7艦隊司令部は、3月3日にバーソルフが佐世保基地に配備されたと発表した[7]。バーソルフは同艦隊の指揮下で北朝鮮による瀬取りの警戒監視活動にあたる。

    脚注

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    出典

    [編集]
    1. ^ a b c d e f 海人社 2014.
    2. ^ a b c d e Saunders 2009, p. 963.
    3. ^ a b c d e f g h i j Wertheim 2013, pp. 910–911.
    4. ^ a b c アメリカ沿岸警備隊 (2016年). “NATIONAL SECURITY CUTTER” (PDF) (英語). 2017年8月28日閲覧。
    5. ^ Chuck Hill (2016年10月6日). “AUGMENT NAVAL FORCE STRUCTURE BY UPGUNNING THE COAST GUARD” (英語). 2017年8月28日閲覧。
    6. ^ アメリカ国土安全保障省 (2014年10月28日). “U.S. Coast Guard Command, Control, Communication, Computers, Intelligence, Surveillance, and Reconnaissance Modernization” (PDF) (英語). 2017年8月28日閲覧。
    7. ^ U.S. Coast Guard Enforces North Korea Sanctions in East China Sea”. 2019年3月22日閲覧。

    参考文献

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    • Saunders, Stephen (2009). Jane's Fighting Ships 2009-2010. Janes Information Group. ISBN 978-0710628886 
    • Wertheim, Eric (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World (16th ed.). Naval Institute Press. ISBN 978-1591149545 
    • 海人社(編)「海外艦艇ニュース 米コーストガードの近況」『世界の艦船』第808号、海人社、2014年12月、162-163頁。 

    関連項目

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    外部リンク

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