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トヨタ・ダイナミックフォースエンジン

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

トヨタ・ダイナミックフォースエンジンとはトヨタ自動車トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)戦略の下に開発されたエンジン。

概要

高効率、低燃費を徹底的に追求すると同時に、ダイレクト感があり、滑らかで気持ちの良い加速性能を目指し、走りと環境性能を両立させるエンジンとして、トヨタ社内で放置されていた膨大な量の基礎研究やレース[注釈 1][1]で得た知見を詰め込んで開発された。基本的には現在流行のダウンサイジングコンセプトよりも『ライトサイジングコンセプト』の考え方であり、自然吸気を主眼としている[2]

具体的には空気吸入量の増大のためのタンブル流(縦渦)の改善を主眼に、1) バルブ挟角の拡大、2) ボア・ストローク比のロング化、3) ポート端部形状の変更とシート内径の拡大、4) 新D-4S(マルチホールインジェクター)採用などを行い、「高速燃焼」を実現した[3]。元々トヨタは2010年代に入ってから、既存のNR型ZR型KR型などにタンブル流を意識した改良を施して40%あるいはそれに近い燃焼効率を達成していた[4][5]が、ダイナミックフォースエンジンは基本設計からタンブル流を重視して開発されている点が大きく異なる。特にバルブ挟角は冷却損失低減のために狭くするのが定石の中、タンブル流のためにあえて広げているのは画期的な点といえる[6]

こうした工夫により、カムリのハイブリッドモデルに採用されたM25A-FXSでは最大燃焼効率41%を記録した。またエンジンのみのグレード(いわゆるコンベンショナルモデル)においても従来型を大きく凌ぐ低燃費を実現している[7]

開発生産においてもTNGA戦略に基づく完全新設計となる。これまで排気量や各国の規制対応に比例して膨大な数になったエンジン規格を整理し、燃焼形式・共通形状の部品・生産工程のモジュール化・相似形化を増やした上で、1気筒あたり排気量500 ccを基本として気筒数を増減することで車両サイズに対応し、生産性の向上と経費削減を図る、いわゆる『モジュラーエンジン』である。

2017年6月にカムリに搭載されたA25A型を皮切りに、V35A型M20A型が登場している。また、2019年10月16日には4代目ヤリス(日本向け仕様は初代扱い)に先行搭載が決定したトヨタオリジナルの新型直列3気筒DOHC12バルブガソリンエンジンのM15A型が公式発表された[8]

このダイナミックフォースエンジンシリーズより、エンジン型式命名規則も変更されることとなった。

ダイナミックフォーススポーツエンジン

ダイナミックフォース・スポーツ・エンジンは、ダイナミックフォースエンジンのスポーツ版として開発されたエンジンの呼称である[9]。ダイナミックフォースエンジンと同様の効率の良さを持ち、それがパワーを引き出すことにつながっているとされる。2020年の東京オートサロンでの世界初公開に先駆け、世界ラリー選手権(WRC)に参戦するヤリスをベースとするスポーツカーとして位置付けられているGRヤリスのプロトタイプに、M15A型に排気量拡大とボールベアリングターボチャージャーを組み合わせて強大なトルクとパワーを叩き出す拡張を行った直列3気筒 1.6リットルターボエンジンを搭載していることが2019年12月に公表され[9]、2020年1月10日に開幕した東京オートサロン2020にて、形式は「G16E-GTS」と発表された[10]

系譜

バリエーション一覧

M15A型

M15A-FKS

M15A-FXE

G16E型

G16E-GTS

M20A型

M20A-FKS

M20A-FXS

  • 名称:Dynamic Force Engine 2.0
  • 種類:直列4気筒DOHC16バルブ
    ハイブリッド車専用エンジン
  • 排気量:1,986cc
  • 内径×行程:80.5×97.6mm
  • 圧縮比:14
  • 主要燃費向上策
    • D-4S,VVT-iE,ミラーサイクル
  • 出力・トルク
    • 最高出力 107kW/6,000rpm
    • 最大トルク 188N·m/4,400rpm
  • 搭載車種

T24A型

T24A-FTS

A25A型

A25A-FKS

  • 名称:Dynamic Force Engine 2.5
  • 種類:直列4気筒DOHC16バルブ
    ガソリン車専用エンジン
  • 排気量:2,487cc
  • 内径×行程:87.5mm×103.4mm
  • 圧縮比:13
  • 主要燃費向上策
    • D-4S,VVT-i,ミラーサイクル
  • 出力・トルク
    • 最高出力 151kW(203PS)/6,600rpm
    • 最大トルク 250N·m(25.5kgf·m)/4,800rpm
  • 搭載車種

A25A-FXS

  • 名称:Dynamic Force Engine 2.5
  • 種類:直列4気筒DOHC16バルブ
    ハイブリッド車専用エンジン
  • 排気量:2,487cc
  • 内径×行程:87.5mm×103.4mm
  • 圧縮比:14
  • 主要燃費向上策
    • D-4S,VVT-iE,ミラーサイクル
  • 出力・トルク
    • 130kW(177PS)/5,700rpm・220N·m(22.5kgf·m)/3,600 - 5,200rpm
    • 135kW(183PS)/6,000rpm・221N·m(22.5kgf·m)/3,800 - 5,400rpm
  • 搭載車種

F33A型

F33A-FTV

  • 名称:Dynamic Force Engine 3.3
  • 種類:V型6気筒DOHC24バルブ(ディーゼルエンジン)
  • 排気量:3345cc
  • 内径×行程:86.0mm ×96.0mm
  • 主要燃費向上策
    • コモンレール式燃料噴射システム
  • 出力・トルク
    • 最高出力 227kW(309PS)/4,000rpm
    • 最大トルク 700N·m(71.4kgf·m)1,600-2,600rpm
  • 搭載車種
    • ランドクルーザー(FJA300W)

V35A型

V35A-FTS

脚注 

  1. ^ トヨタ・新型プリウスが搭載する4気筒2.0Lエンジン[M20A]
  2. ^ Motor fan illustrated vol.155 2019年8月10日 三栄書房刊
  3. ^ トヨタ自動車株式会社 2016年12月5日 Dynamic Force Engine( トヨタ自動車株式会社 2016年12月5日〜) - YouTube
  4. ^ “トヨタ、熱効率38%などを達成した新型アトキンソンサイクル低燃費エンジン説明会”. Car Watch. (2014年4月11日). https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/643910.html 
  5. ^ “新型「プリウス」は目標燃費40km/lをどうやって達成するのか”. Monoist. (2015年10月14日). https://monoist.itmedia.co.jp/mn/spv/1510/14/news056_3.html 
  6. ^ “内燃機関超基礎講座”. Motorfan. (2021年5月28日). https://motor-fan.jp/tech/10014786 
  7. ^ 例えば車重1,330 kg・2WDのカローラクロスの1.8Lモデル(2021年9月 - 2023年10月発売モデルの2ZR-FAEバルブマチックエンジン)はWLTCモード総合14.4 km/Lなのに対し、車重1,570 kg・4WDのRAV4(M20A型ダイナミックフォースエンジン)は15.2 km/Lと上回っている
  8. ^ “トヨタ、新型「ヤリス」世界初公開。12月中旬国内発表、2020年2月中旬発売 TNGAの「GA-Bプラットフォーム」に新開発1.5リッターエンジン搭載”. Car Watch (インプレス). (2019年10月16日). https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1212959.html 
  9. ^ a b “【試乗インプレ】トヨタ、「GR ヤリス プロトタイプ」。市販予定、WRCに直結した3気筒 1.6リッターターボのスーパー4WDマシン”. Car Watch (インプレス). (2019年12月20日). https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/1225795.html 
  10. ^ “【速報】トヨタは272PS/370Nmの「GR ヤリス」世界初公開。First Editionは396万円から”. (2020年1月10日). https://car.watch.impress.co.jp/docs/event_repo/tokyoautosalon2020/1228519.html 

注釈

  1. ^ 高速タンブル流を実現するためのレーザークラッドバルブシートが一例

関連項目