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Smoothened

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
スムーズンドから転送)

スムーズンド(英:Smoothened)とは7回膜貫通タンパク質(GPCR)の仲間でFrizzledファミリーに属し、ヘッジホッグシグナル伝達経路を担う膜タンパク質である。略称はSmoである。構造上、GPCRに分類され、Wnt受容体(Frizzled)とも配列類似性が高いために何らかの受容体とも考えられるが、現在のところその内因性リガンドには議論の余地がある。スムーズンドはカタカナ表記されることよりもローマ字表記されることが多いのでそれに倣い以下の表記は"Smoothened"に統一する。髄芽腫基底細胞癌などに関与していることが知られる。

機能

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ヘッジホッグシグナルの概要。Smoothened(黒色)はヘッジホッグシグナルがないとPatched(水色)に抑制されるが、ヘッジホッグシグナルが入ると抑制が外れてSmoothenedが活性化する。

Smoothened (Smo)は、12回膜貫通タンパク質であるPatched(パッチト)の下流にありヘッジホッグ(Hh)のシグナルがないときにはPatchedに抑制されているが、Patchedにヘッジホッグが結合するとPatchedの抑制が外れてSmoothenedが活性化し、ジンクフィンガー型転写因子GliショウジョウバエではCubitus interruptus (Ci))を賦活する。転写因子Gliの標的となる遺伝子としては、サイクリンD1D2N-MycBcl-2VegfSnail1Elk2PDGFRαなどがある[1]。Smoothenedの活性化にはステロール類が必要であり[2]、Smoothenedにステロールが結合すると活性型のコンフォメーションに変化すると考えられる。そのため、コレステロールの代謝に異常があるスミス・レムリ・オピッツ症候群ではヘッジホッグ経路に異常が生じる。

Smoothenedがどのような仕組みでPatchedにより制御を受けるかは、はっきりしていない。ヘッジホッグがリガンドとして存在しない場合はSmoothenedの細胞膜への移行を抑制しシグナル伝達を抑えるとされるが[3]、それ以外にもPatchedが生成した小分子がSmoothenedを抑制しているのではないかとも考えられており[4]よくわかっていない。また、SmoothenedはGliを普段抑えているSufu(Suppressor of fused)を抑制することでGliの核内移行を促進すると考えられているが[5]詳細は不明である。

構造

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SmoothenedはFrizzledと構造上よく似ており、大きくいって、膜貫通領域とそれよりN末端側の高システイン領域(cysteine rich domain: CRD)がある。膜貫通領域は他のGPCRと同じく7箇所の膜を貫通する部分があり、高システイン領域(CRD)はジスルフィド結合が複数あり、FrizzledではWntが結合するところとされる領域である[6]ショウジョウバエのSmoothenedではC末端側のCos2に結合できる領域があるが、脊椎動物のそれにはない[7]

リガンド

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Smoothenedのアンタゴニストとしてはシクロパミンビスモデギブ(GDC-0449)があり、それらやその類似物質が髄芽腫や進行性の基底細胞癌などの治療薬の候補となっている。逆にアゴニストとしてはプルモルファミンが知られる[8]ビスモデギブ(GDC-0449)で治療していると、ヒトのSmoothenedの473番目のアミノ酸(D473)に変異が入り効かなくなるので、この部位が薬剤耐性獲得に重要な役割を果たしているとされる[9]

出典

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  1. ^ Barbara Stecca and Ariel Ruiz i Altaba, Context-dependent Regulation of GLI Code in Cancer by HEDGEHOG and Non-HEDGEHOG Siganals. Journal of Molecular Cell Biology(2010),2,84-95 PMID 20083481
  2. ^ Cooper MK, Wassif CA, Krakowiak PA, Taipale J, Gong R, Kelley RI, Porter FD, Beachy PA. A defective response to Hedgehog signaling in disorders of cholesterol biosynthesis. Nat Genet. 2003 Apr;33(4):508-13. Epub 2003 Mar 24. PMID 12652302
  3. ^ Denef N, Neubüser D, Perez L, Cohen SM. Hedgehog induces opposite changes in turnover and subcellular localization of patched and smoothened.Cell. 2000 Aug 18;102(4):521-31. PMID 10966113
  4. ^ Taipale J, Cooper MK, Maiti T, Beachy PA.Patched acts catalytically to suppress the activity of Smoothened.Nature (2002) Aug 22;418(6900):892-7.PMID 12192414
  5. ^ Svärd J, Heby-Henricson K, Persson-Lek M, Rozell B, Lauth M, Bergström A, Ericson J, Toftgård R, Teglund S.Genetic elimination of Suppressor of fused reveals an essential repressor function in the mammalian Hedgehog signaling pathway.Dev Cell. 2006 Feb;10(2):187-97.PMID 16459298
  6. ^ Bhanot, P. et al. A new member of the frizzled family from Drosophila functions as a Wingless receptor.Nature. 1996 Jul 18;382(6588):225-30. PMID 8717036
  7. ^ Huangfu D, Anderson KV. Signaling from Smo to Ci/Gli: conservation and divergence of Hedgehog pathways from Drosophila to vertebrates.Development. 2006 Jan;133(1):3-14.PMID 16339192
  8. ^ Sinha S, Chen JK. Purmorphamine activates the Hedgehog pathway by targeting Smoothened. Nature Chemical Biology 2, 29 - 30 (2005) PMID 16408088
  9. ^ Yauch RL, Dijkgraaf GJ, Alicke B, Januario T, Ahn CP, Holcomb T, Pujara K, Stinson J, Callahan CA, Tang T, Bazan JF, Kan Z, Seshagiri S, Hann CL, Gould SE, Low JA, Rudin CM, de Sauvage FJ. Smoothened mutation confers resistance to a Hedgehog pathway inhibitor in medulloblastoma. Science. 2009 Oct 23;326(5952):572-4. Epub 2009 Sep 2. PMID 19726788

外部リンク

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