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ハヤブサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シマハヤブサから転送)
ハヤブサ
ハヤブサ
ハヤブサ Falco peregrinus
保全状況評価[1][2]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: ハヤブサ目 Falconiformes
: ハヤブサ科 Falconidae
: ハヤブサ属 Falco
: ハヤブサ F. peregrinus
学名
Falco peregrinus Tunstall, 1771
和名
ハヤブサ
英名
Peregrine Falcon
黄:繁殖地、青:越冬地、緑:周年生息地

ハヤブサ(隼、鶻、鸇、Falco peregrinus)は、ハヤブサ科ハヤブサ属に分類される鳥類である。

種小名peregrinusは「外来の、放浪する」の意味である[3]。和名の由来は、飛行速度の速さから「速飛翼(はやとびつばさ)、速翼(はやつばさ)」が転じて「はやぶさ」になったとされる[4]

急降下時の最高速度は時速300キロメートル以上にも達し、世界最速の動物の一つとして知られる[5][6][7]

分布

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地球上の南極大陸を除く地域に分布する[8]。英名「Peregrine Falcon」は「放浪者」という意味も持ち、砂漠からツンドラ地帯、大都市まで幅広く生息する[6]

  • F. p. furuitii シマハヤブサ

日本(北硫黄島<絶滅?>)[9]

寒冷地に分布する個体群は、冬季になると温帯域や熱帯域へ移動し越冬する[10]。日本では亜種ハヤブサが周年生息(留鳥)し、冬季に亜種オオハヤブサが越冬のため稀に飛来する(冬鳥)[11]

形態

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メスの方が大型になり[10]、全長はオス38-45センチメートル、メス46-51センチメートル程度である[8]。翼開張時は84-120センチメートル[8]。体重0.5-1.3キログラム[10]。頭部の羽衣は黒い。頬に黒い髭状の斑紋が入る[8]。体上面や翼上面の羽衣は青みがかった黒[11]。喉から体下面の羽衣は白く、胸部から体側面にかけて黒褐色の横縞が入る[8][11]

眼瞼は黄色く[8]虹彩は暗褐色[11]。嘴の色彩は黒く、基部は青灰色[11]。嘴基部を覆う肉質(蝋膜)は黄色[8][11]

分類

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各亜種の営巣地

ハヤブサは19亜種に分けられる[10]

  • Falco peregrinus anatum  アメリカハヤブサ
  • Falco peregrinus calidus  ウスハヤブサ
  • Falco peregrinus furuitii  シマハヤブサ
  • Falco peregrinus harterti シベリアハヤブサ
  • Falco peregrinus japonensis ハヤブサ
  • Falco peregrinus pealei  オオハヤブサ
  • Falco peregrinus peregrinus Tunstall, 1771
  • Falco peregrinus tundrius  ツンドラハヤブサ - など

生態

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ヒトが建設した高層ビル群での営巣例も確認されているものの、自然界でのハヤブサは、河川、湖沼、海岸などの周辺に生息する。

猛禽類であり、食性は動物食で、主にスズメハトムクドリヒヨドリなどの体重1.8キログラム以下の鳥類を食べる[10]ネズミや魚類やトカゲなども食べることもある。獲物となるヒヨドリやハトなど中型の鳥を見通しの良い場所で探し、足で掴んだり、蹴ったりして仕留める[12]ほか、水面に叩きつけて捕える[11]。水平飛行時の速度は100 km/h 前後[3]、急降下時の速度は最高約400 km/h にもなるとされる[4]

繁殖形態は卵生。巣を作らずに(人工建築物に卵を産んだり、他の鳥類の古巣を利用した例もある[11])、日本では3月か4月に、3個か4個の卵を断崖の窪みに産む[10]。主にメスが抱卵し、抱卵期間は29-32日[10]。雛は孵化してから35-42日で巣立つ[10]。生後2年で性成熟する[10]

ヒトとの関係

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開発や採掘による生息地の破壊などにより生息数は少なくなっている[9]1993年絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行に伴い亜種シマハヤブサと亜種ハヤブサが、日本における希少野生動植物種に指定されている[9]イギリスでは、太陽光発電所太陽光パネルに糞をするカモメを追い払うために、ハヤブサを定期的に放している発電所が存在する[13]。その一方で、現代の都市部は彼らが営巣する断崖絶壁に類似した高層ビルが多く、また獲物の小鳥やネズミなども確保できることから、高層ビルに生活圏を移して個体数を増加させつつあるとの指摘もなされている。

古来より鷹狩で用いられる鳥としても知られ、愛好する鷹匠も多い[6]

また、その飛行速度からしばしば速さの象徴としても扱われる。1999年に「Frightful」と名付けられたハヤブサが最高時速320キロメートルを記録し「最も速い鳥(急降下時)」としてギネス世界記録に登録された[7][5]。なお、実験上の最高速度は時速398キロメートルであるとされている[7]。また、水平飛行時における世界最速の動物は、最高時速170キロメートルのハリオアマツバメである[5]

絶滅環境省レッドリスト[9]
  • F. p. japonensis ハヤブサ
絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト[9]

画像

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関連項目

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参考文献

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  1. ^ CITES homepage
  2. ^ The IUCN Red List of Threatened Species
    • BirdLife International 2009. Falco peregrinus. In: IUCN 2010. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2010.2.
  3. ^ a b 安部直哉 『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社、2008年、266-267頁。
  4. ^ a b 十勝の川の生き物たち 十勝の川生物図鑑”. 国土交通省北海道開発局帯広開発建設部. 2023年5月20日閲覧。
  5. ^ a b c Canon Bird Branch Project「鳥のヒミツをときあかせvol.3 地球上で一番速い生きものは?」”. Canon. 2023年5月21日閲覧。
  6. ^ a b c Webナショジオ動物大図鑑「ハヤブサ」”. ナショナルジオグラフィック. 2023年5月21日閲覧。
  7. ^ a b c ギネスワールドレコーズ公式サイト「Fastest bird (diving)」”. ギネス世界記録. 2023年5月21日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g 五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』、文一総合出版、2004年、56-57頁。
  9. ^ a b c d e 環境省 自然環境局 生物多様性センター
  10. ^ a b c d e f g h i 黒田長久 監修、C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科7 鳥類I』、平凡社、1986年、182頁。
  11. ^ a b c d e f g h 真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、174-175頁。
  12. ^ 柴田佳秀 著、樋口広芳 編『街・野山・水辺で見かける野鳥図鑑』日本文芸社、2019年5月、351頁。ISBN 978-4537216851 
  13. ^ CASSIE WERBER (2014年8月4日). “英国が太陽光発電のホットスポットに”. ウォール・ストリート・ジャーナル. http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303513604580070541989783432 2014年8月11日閲覧。