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シグマ型コルベット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シグマ型フリゲートから転送)
シグマ型コルベット
「スルターン・イスカンダル・ムダ」
基本情報
建造所 オランダの旗 ロイヤル・シェルデ造船所
運用者  インドネシア海軍
 モロッコ海軍
 メキシコ海軍
就役期間 2005年 - 現在
建造数 10隻
要目
#諸元表を参照
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シグマ型コルベット (Sigma class corvette) は、オランダが開発したコルベット/軽フリゲート。21世紀初頭より輸出市場に投入され、既にインドネシアモロッコおよびメキシコが導入している。

設計

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シグマ型は、オランダロイヤル・シェルデ 造船所が、主として中小国への輸出向けに開発したコルベット/軽フリゲートである。シグマ(SIGMA)とは、Ship Integrated Geometrical Modularity Approach(モジュラー構造統合式艦艇)の略とされているが、シグマという語はギリシャ文字Σを意味しており、この文字も数学で「総和」を表す記号として使われている。その名の通り、高度なモジュラー化設計を導入しており、モジュールの組み合わせを変えることで相手(国)のニーズに応じて容易にサブタイプを派生させ、製造コストの低減と需要や汎用性の増大を図っている。また、造船所の呼称によるタイプ・ナンバーは、全長と全幅がそのまま使われており、例えば全長91メートル、全幅13メートルのディポネゴロ級は9113型と呼ばれている。

船体

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船型としては長船首楼型を導入しており、艦首から艦尾まで長大なナックルを設けている。船体には高度なステルス化設計が導入されている。

機関としてはディーゼルエンジンが採用されており、煙突2本が並列に配置されている。また、船首楼後方の後甲板は飛行甲板となっており、大型の9813型では、船首楼後部に格納庫を設けている。一方、小型のディポネゴロ級 (9113型) は格納庫を持たないが、必要に応じて機材を露天係止して運用したり他艦艇・他基地の機体を受け入れたりできるよう、飛行甲板は確保されている。

装備

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現在までに発注されたシグマ型は、いずれも、同国製のTACTICOSを中核として、双方向の戦術データ・リンクを備えた戦闘情報システムを構築している。

艦載砲として、イタリアオート・メラーラ 76 mm 砲1門を艦首に搭載する。オート・メラーラ 76 mm 砲は世界各国の艦艇に採用された軽量速射砲であり、ステルス性の高い多角形の砲塔を採用しているケースもあるが、本型には旧来の丸みを帯びた砲塔を搭載している[1]

武装に関しては、小型のディポネゴロ級 (9113型)は比較的軽装備であり、艦対艦ミサイルエグゾセ MM40連装発射機2基[1]のみ、個艦防空ミサイルはマトラ・テトラル個人携行地対空ミサイルを艦載化した簡易型で、捜索レーダーも、低空警戒/対水上兼用のMW-08のみとなっている。エグゾセ MM40は当初ブロック2が搭載されていたが、2019年9月に実施された演習において、ブロック3の射撃が初めて確認された[2]

一方、モロッコ海軍向けの9813型は排水量2,100トンと、より大型でフリゲート並みのキャパシティを持つことから重装備となっており、本格的な個艦防空ミサイルであるVL MICA NAVALVLSと、中型の哨戒ヘリコプターを搭載することが計画されている。また、いずれの型も、自艦装備の対潜兵装として、タレス UMS4132 キングクリップ船底装備ソナーとB515 3連装短魚雷発射管を搭載しており、短魚雷としては、典型的な輸出用魚雷であるA.244/S、または新型のMU90 インパクトを使用する。このように、フランスないし大陸ヨーロッパ製兵器の運用を主眼としている。

諸元表

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9113型 9813型 10513型 10514型
満載
排水量
1,719 t[1] 2,075 t 2,335 t 2,400 t
全長 90.7メートル (298 ft) 97.91メートル (321.2 ft) 105.11メートル (344.8 ft) 105.14メートル (344.9 ft)
全幅 13.02メートル (42.7 ft)
吃水 3.6メートル (12 ft) 3.75メートル (12.3 ft)
機関 SEMT ピルスティク 20PA6Bディーゼルエンジン×2基 (合計出力 22,000bhp)
スクリュープロペラ×2軸
最大速力 28ノット (52 km/h) 30ノット (56 km/h)
巡航速力 18ノット (33 km/h)
航続距離 4,000海里 (7,400 km) / 18ノット (33 km/h)
兵装 76mm 単装速射砲×1基
デネルベクターG12
20mm単装機銃
×4基
20mm単装機銃×2基
マトラ・テトラル
4連装近SAM発射機×2基
VL-MICA短SAM VLS×12セル
エグゾセMM40ブロック2 SSM連装発射筒×2基
B515 3連装短魚雷発射管×2基
艦載機 ヘリコプター甲板のみ ヘリコプター×1機
C4I TACTICOS戦術情報処理装置リンク Y
レーダー MW-08 低空警戒/対水上 SMART-S Mk.2 3次元
スペリー ブリッジマスターE 航法レーダー
ソナー キングクリップ 船底装備式
電子戦 タレスDR-3000 電波探知装置 タレス・ヴィジル電波探知装置 n/a
ラカル・スコーピオン 電波妨害装置
DLT-12T デコイ発射機 SKWS デコイ発射機

同型艦一覧

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インドネシア

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インドネシア海軍の9113型
「366 スルターン・ハサヌディン」
艦番号 艦名 建造所 起工 進水 就役
9113型
365 ディポネゴロ
KRI Diponegoro
ロイヤル・シェルデ造船所 2005年
3月24日
2006年
9月16日
2007年
7月5日
366 スルターン・ハサヌディン
KRI Sultan Hasanuddin
2005年
3月24日
2006年
9月16日
2007年
11月24日
367 スルターン・イスカンダル・ムダ
KRI Sultan Iskandar Muda
2006年
5月8日
2007年
11月24日
2008年
10月18日
368 フランス・カイシエポ
KRI Frans Kaisiepo
2006年
5月8日
2008年
6月28日
2009年
3月7日
10514型
331
KRI Raden Eddy Martadinata
ロイヤル・シェルデ造船所
PT PAL インドネシア造船所
2014年
4月16日
2016年
1月18日
2017年
4月7日
332
KRI Gusti Ngurah Rai
2016年
1月18日
2016年
9月29日
2018年
1月10日

モロッコ

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艦番号 艦名 建造所 起工 進水 就役
10513型
613 ターリク・ベン=ズィヤード
Tarik Ben Ziyad
ロイヤル・シェルデ造船所 2009年
4月15日
2010年
7月12日
2011年
9月10日
9813型
614 スルターン・ムーラーイ・イスマーイール
Sultan Moulay Ismail
ロイヤル・シェルデ造船所 2009年
3月
2011年
2月4日
2012年
3月10日
615 アラル・ベン・アブダラー
Allal Ben Abdellah
2009年
9月
2011年
10月4日
2012年
9月8日

メキシコ

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艦番号 艦名 建造所 起工 進水 就役
10514型
101 レフォルマドール
ARM Reformador
→ ベニート・フアレス
ARM Benito Juárez
ロイヤル・シェルデ造船所
メキシコ第20海軍省造船所
2017年
8月17日
2018年
11月23日[3]
2018年
11月23日

脚注

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出典

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  1. ^ a b c 写真:福島良治/MINDEF SINGAPORE「ディテール拝見! シンガポール国際観艦式参加の珍しいフネブネ」 『世界の艦船』通巻868号(2017年11月号) 海人社 P.62-63
  2. ^ Ridzwan Rahmat (2019年9月9日). “Indonesia conducts first firing of Exocet MM40 Block 3 from SIGMA corvette”. janes.com. 2024年10月23日閲覧。
  3. ^ https://navaltoday.com/2018/11/23/mexican-navy-launches-arm-reformador/

参考文献

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  • 岡部いさく「再び甦るコルベット 見直される存在意義」『世界の艦船』第698集、海人社、2008年11月、76-81頁。 
  • 編集部「新型コルベットの技術」『世界の艦船』第698集、海人社、2008年11月、82-87頁。 
  • 福好昌治「コルベット輸出市場を概観する」『世界の艦船』第698集、海人社、2008年11月、88-91頁。 
  • Royal Schelde (2004年). “Schelde Naval Patrol Series” (JPG) (英語). 2009年9月3日閲覧。
  • Joris Janssen Lok/Defense Technology International (2009年). “Schelde Sees Bright Future for Sigma Modular Ship” (HTML) (英語). 2009年9月3日閲覧。

関連項目

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ドイツブローム・ウント・フォスが設計した輸出用フリゲート。艦体にもいくつかの派生形があるほか、兵装がユニット化されている。
ドイツのブローム・ウント・フォスとホヴァルツヴェルケが設計した輸出用軽フリゲート/コルベット。モジュール設計を導入しており、本型とほぼ同大である。