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ザポリージャ原子力発電所

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ザポリージャ原子力発電所
6基の原子炉が存在する
ザポリージャ原子力発電所の位置(ウクライナ内)
ザポリージャ原子力発電所
ウクライナにおけるザポリージャ原子力発電所の位置
ザポリージャ原子力発電所の位置(ザポリージャ州内)
ザポリージャ原子力発電所
ザポリージャ原子力発電所 (ザポリージャ州)
正式名称 Запорізька АЕС
 ウクライナ
所在地 エネルホダル
座標 北緯47度30分44秒 東経34度35分09秒 / 北緯47.51222度 東経34.58583度 / 47.51222; 34.58583 (ザポリージャ原子力発電所)座標: 北緯47度30分44秒 東経34度35分09秒 / 北緯47.51222度 東経34.58583度 / 47.51222; 34.58583 (ザポリージャ原子力発電所)
現況 不明
着工 1981
運転開始 1985
事業主体 エネルゴアトム
原子炉
運転中 6 × 1,000 MWe
種類 VVER
原子炉製造元 Mintyazhmash
タービン製造元 Electrotyazhmash
発電量
定格出力 6,000 MWe
2010年11月21日現在
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ザポリージャ原子力発電所(ザポリージャげんしりょくはつでんしょ、ウクライナ語: Запорізька АЕС)は、ウクライナザポリージャ州エネルホダルに存在する原子力発電所。ヨーロッパ最大の原子力発電所であり、また、世界で3番目に大きな原子力発電所である。発電所はウクライナ中央部、ドニエプル川カホフカ貯水池の岸に存在する。近くにはザポリージャ火力発電所が存在する。「ザポリッジャ原発」[1]「ザポロジエ原子力発電所」[2][3]と表記されることもある。

6基のVVER-1000を擁し、それぞれおおよそ総電気出力1,000MWeで合計6,000MWeが発電できる[4]。最初の5基は1985年から1989年の間に連続して稼働を開始し、6号機は1995年に追加された。同原発はウクライナ国内の原発の半分にあたる電力を生成している。ウクライナの全電力の5分の1を供給していると言われる[5]

原子炉

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原子炉 原子炉形式 正味発電量
(MW)
総発電量
(MW)
建設開始 電力網同期 商用運転 設計寿命
1号機
(ZAPOROZHYE-1)[6]
VVER-1000/320 950 1,000 1980年
4月1日
1984年
12月10日
1985年
12月25日
2015年
12月23日
2号機
(ZAPOROZHYE-2)[7]
1981年
1月1日
1985年
7月22日
1986年
2月15日
2016年
2月19日
3号機
(ZAPOROZHYE-3)[8]
1982年
4月1日
1986年
12月10日
1987年
3月5日
2017年
3月5日
4号機
(ZAPOROZHYE-4)[9]
1983年
4月1日
1987年
12月18日
1988年
4月14日
2018年
4月4日
5号機
(ZAPOROZHYE-5)[10]
1985年
11月1日
1989年
8月14日
1989年
10月27日
2020年
5月27日
6号機
(ZAPOROZHYE-6)[11]
1986年
6月1日
1995年
10月19日
1996年
9月16日
2026年
10月21日

2022年ロシアのウクライナ侵攻

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2022年2月24日、ロシアウクライナへの侵攻を開始[12]。同年3月4日午前2時頃(ウクライナ時間)、地元のエネルゴダールのオルロフ市長がフェイスブックへの投稿で「敵の容赦ない砲撃で、ザポリージャ原子力発電所が火事だ」と述べた。ドミトロ・クレーバ外相も砲撃により火災が発生しているとTwitterで述べた[13]国際原子力機関(IAEA)は、主要設備に影響はないとウクライナ当局から報告を受けたと述べた[14]。火災が発生したのは訓練用の建物とされる。4日午後、ウクライナ当局はザポリージャ原発がロシア連邦軍に制圧されたと発表した[15]

リモートセンシング企業であるマクサー・テクノロジーズ社によって撮影された2022年8月19日衛星写真からは懸念すべき重大な損傷は一切確認できないことが発表された[16]。しかし、ザポリージャ原発への攻撃は続き、国際原子力機関(IAEA)は8月29日に調査団を派遣することを決定した。IAEAの調査団は9月1日にザポリージャ原発に到着した。しかし同日には砲撃を受け、原子炉1基が緊急停止に至ったともされるが[17]、原発を管理するエネルゴアトムは翌日には復旧したこと発表した[18]

9月6日、IAEAによる報告書が公表され、施設はロシア軍の管轄下であることが認められ、6基ある原子炉の内の一基がウクライナ人従業員によって稼働中であるとされた。施設運用に関し人員が限定される上、強い圧力の下にあることでヒューマンエラーが起きやすい状況に関し懸念を発表し、周辺を安全区域に設定すべきであると述べている。なお、どちらの勢力による攻撃なのかには言及しておらず、双方に対し施設への攻撃は「危険な火遊びである」と自制を求める声明を発表した[19][20][21]。また、このIAEAの報告書に対し、ロシアのラブロフ外相はIAEAに提供したウクライナ側が砲撃したとするデータへの説明が行われていないとして、追加の説明を求めている[22]

9月11日、唯一稼働していた6号機の運転を停止したことが発表された[23]

2023年5月時点でも約2500人のロシア軍兵士が駐留を続けている。施設の周囲に地雷を敷設、建物には射撃スペースや無人機の侵入を妨害するネットを設置している。同月22日には7回目となる外部電源喪失状態に陥った[24]

2023年6月、カホフカダム破壊事件が発生。カホフカ貯水池の水位が低下し、直接発電所の冷却水を取水することができなくなった。しかしながらウクライナ原子力企業エネルゴアトムは、発電所に併設した貯水池には水が十分にあり「状況は安定している」としている[25]。また、同月15日、IAEA事務局長のラファエル・グロッシが貯水池を視察し、当面の安全性を確認した[26]

2023年7月29日、国際原子力機関は、ロシア側が停止している4号機の原子炉を意図的に100度を上回る高温状態にしていると発表。ウクライナ側は原子力災害のリスクを下げるため、100度以下の冷温状態に戻すよう要求した[27]

脚注

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  1. ^ ザポリッジャ原発所長をロシアが拘束 ウクライナ当局が発表”. BBCニュース (2022年10月2日). 2022年10月2日閲覧。
  2. ^ ザポロジエ原発の安全地帯、ウクライナの砲撃阻止が目的=ロシア」『Reuters』2022年12月8日。2022年12月29日閲覧。
  3. ^ ウクライナ原発、核廃棄物保管庫に「覆い」 無人機攻撃防御と主張」『Reuters』2022年12月18日。2023年1月17日閲覧。
  4. ^ Nuclear Power Plants in Lithuania & Ukraine”. 2012年12月9日時点のNuclear Power Plants in Lithuania & Ukraine オリジナルよりアーカイブ。2020年8月閲覧。
  5. ^ ザポリージャ原発付近の戦闘停止、環境放射線は通常の水準 ウクライナ”. CNN (2022年3月4日). 2022年3月5日閲覧。
  6. ^ Nuclear Power Reactor Details - ZAPOROZHYE-1”. Power Reactor Information System. International Atomic Energy Agency (IAEA). 2020年8月30日閲覧。
  7. ^ Nuclear Power Reactor Details - ZAPOROZHYE-2”. Power Reactor Information System. International Atomic Energy Agency (IAEA). 2020年8月30日閲覧。
  8. ^ Nuclear Power Reactor Details - ZAPOROZHYE-1”. Power Reactor Information System. International Atomic Energy Agency (IAEA). 2020年8月30日閲覧。
  9. ^ Nuclear Power Reactor Details - ZAPOROZHYE-4”. Power Reactor Information System. International Atomic Energy Agency (IAEA). 2020年8月30日閲覧。
  10. ^ Nuclear Power Reactor Details - ZAPOROZHYE-5”. Power Reactor Information System. International Atomic Energy Agency (IAEA). 2020年8月30日閲覧。
  11. ^ Nuclear Power Reactor Details - ZAPOROZHYE-6”. Power Reactor Information System. International Atomic Energy Agency (IAEA). 2020年8月30日閲覧。
  12. ^ “プーチン大統領 軍事作戦実施表明 “ウクライナ東部住民保護””. NHK. (2022年2月24日). https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220224/k10013498841000.html 2022年2月27日閲覧。 
  13. ^ “【速報中】ロシア軍が欧州最大級の原発攻撃か ウクライナ外相が警告”. 朝日新聞. (2022年3月4日). https://www.asahi.com/articles/ASQ340HMPQ33UHBI063.html 2022年3月4日閲覧。  ““ザポリージャ原発 ロシア軍の攻撃受け火災” ウクライナ外相”. NHK. (2022年3月4日). https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220304/k10013513381000.html 2022年3月4日閲覧。  “ウクライナのザポリージャ原子力発電所で火災 町長「砲撃やめろ」”. CNN. (2022年3月4日). https://www.cnn.co.jp/world/35184424.html 2022年3月4日閲覧。 
  14. ^ “主要設備に影響はないとIAEA”. 共同通信. (2022年3月4日). https://web.archive.org/web/20220304030610/https://nordot.app/872310887114883072 2022年3月4日閲覧。 
  15. ^ 【速報】ザポリージャ原発をロシア軍が制圧 ウクライナ原子力規制当局”. テレビ朝日 (2022年3月4日). 2022年3月5日閲覧。
  16. ^ Maxarのツイート(1560665913203904515)
  17. ^ IAEA調査団、ザポリージャ原発「調査開始」...到着前に砲撃で原子炉1基が緊急停止
  18. ^ “ザポリージャ原発、砲撃で停止の原子炉1基が復旧…調査「4~5日まで」”. 読売新聞. (2022年9月2日). https://www.yomiuri.co.jp/world/20220902-OYT1T50316/ 2022年9月3日閲覧。 
  19. ^ “ザポリージャ原発 IAEA 安全区域設定の提案も双方主張に隔たり”. NHK. (2022年9月7日). https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220907/k10013806821000.html 2022年9月8日閲覧。 
  20. ^ “IAEA、ザポリージャ原発の報告書を6日公表へ 国連安保理に説明”. 朝日新聞. (2022年9月6日). https://www.asahi.com/articles/ASQ9633C8Q96UHBI004.html?iref=comtop_BreakingNews_list 2022年9月8日閲覧。 
  21. ^ “UN calls for demilitarised zone around Zaporizhzhia nuclear plant” (英語). The Guardian. (2022年9月7日). https://www.theguardian.com/world/2022/sep/06/iaea-gravely-concerned-about-damaged-zaporizhzhia-nuclear-power-plant 2022年9月8日閲覧。 
  22. ^ “Russia requests 'explanations' from IAEA on Zaporizhzhia report” (英語). Reuters. (2022年9月7日). https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-iaea-lavrov-idAFKBN2Q80FM 2022年9月8日閲覧。 
  23. ^ “ザポリージャ原発、全面停止 ウクライナ”. AFP. (2022年9月11日). https://www.afpbb.com/articles/-/3423266 2022年9月19日閲覧。 
  24. ^ ザポリージャ原発を要塞化、ロシア軍が地雷や塹壕…駐留2500人超え”. 読売新聞 (2023年5月23日). 2023年5月24日閲覧。
  25. ^ IAEA事務局長、ゼレンスキー大統領と会談へ ダム決壊の影響出たザポロジエ原発対応で協議か”. 日刊スポーツ (2023年6月13日). 2023年6月14日閲覧。
  26. ^ IAEA事務局長、ザポリージャ原発と近隣の貯水池視察「冷却水は当面確保できる」”. 読売新聞 (2023年6月15日). 2023年7月9日閲覧。
  27. ^ ザポリージャ原発4号機、高温停止状態に…ウクライナ当局が100度以下の「冷温停止」要求”. 読売新聞オンライン (2023年7月31日). 2023年7月31日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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