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独立機関式冷房装置

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

独立機関式冷房装置(どくりつきかんしきれいぼうそうち)とは、バス車両や鉄道車両などで、走行用機関とは別の専用機関を動力源として利用する冷房装置の一種である。サブエンジン式冷房装置とも呼ばれる。鉄道車両では自車で動力装置を持たない客車に搭載されるが、気動車に搭載されることもある。

これに対し、機関直結式冷房装置は車両本体の走行用エンジンを冷房装置の動力源として利用するもので、単に「直結式」とも呼ばれる。

概要

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機関直結式冷房装置は走行用エンジンを空調コンプレッサーの動力源とするが、冷房装置を稼働させると動力性能が低下する難点があった。このためコンプレッサーの動力源を別に設けることで、走行条件に左右されず安定した冷却能力を確保するために独立機関式冷房装置が開発された。

安定した冷却能力の確保という点から、大型トラック冷凍冷蔵車でもサブエンジン式保冷装置を採用する事例が見られる。

動力源は、乗用車SUV、小型トラックフォークリフト、産業機器に使用される小排気量ディーゼルエンジンを採用することが多い。

一例として、三菱ふそう・エアロキング(初期型:P-MU515TAおよびU-MU525TA)では、三菱・ジープで採用されていた三菱・4DR5型直列4気筒OHV、2,659 cc)を冷房用エンジンとして搭載していた[1](MU612系およびMU66JSは異なるエンジンを搭載)。

また、デンソーのバス用エアコンに組み合わせる豊田自動織機2DZディーゼルエンジンは、直列4気筒排気量2000cc、最高出力32kWである。

バス

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直結式とサブエンジン式における外見上の違い(紫枠部分がトランクルーム、橙枠部分がエアコン。相鉄自動車臨港バス
冬期に備え取り下ろしたユニット

路線バスでは、低床化や省スペース化の観点から冷房装置は機関直結式がほとんどで、独立機関式は路線バスの冷房化が始まった1970年代に見られた程度であったが、日本国内の観光バス高速バスでは広く普及した。

1960年代に国鉄バスで高速バス用車両(国鉄専用型式)を開発した際は、試作車および名神高速線向けでは機関直結式を採用したが、勾配区間ではトルク不足に悩まされ、更に市街地では渋滞で思うように冷房を使用できずバッテリー上がりを起こしやすかった。この反省から東名高速線向け車両の開発にあたって冷房には独立機関式が採用され、当時の日本国内の観光・高速バスでは標準的となった。

しかし日本国内でも、床下荷物室の容量アップのため、空港リムジンバスを中心に直結式冷房が採用されていた。

2000年代に入ると、高速バスの高トルク化が進み上述の欠点が解消されたほか、CO2排出量やメンテナンスコスト低減の観点から機関直結式が見直されたこと、更には日本国外の観光・高速バス車両では機関直結式が主流であることから、日野・セレガ/いすゞ・ガーラの2代目モデルや、三菱ふそう・エアロエースポスト新長期規制対応車では独立機関式エアコンの設定をやめ、機関直結式エアコンに一本化している。

観光バス・高速バスにおけるエアコン駆動方式の比較と特質
機関直結式 サブエンジン式 サブエンジン式エアコン採用時のポイント
騒音・振動 小さい 大きい サブエンジンからの騒音・振動が出る
整備費用 安い 高い サブエンジンの整備が必要となる
燃料消費量 少ない 多い サブエンジン消費分が必要になるため相対的に高燃費
荷物室の
容積
多い 少ない 荷物室部分をエアコン(サブエンジン)室に利用する
送風の
立ち上がり
早い 僅かに遅い エバポレーターと客室の距離が遠い
車高 取り付け位置と形状による そのまま エアコン本体を荷物室に載せるため、車高は変わらない
車両重量 軽い 重い サブエンジンの分重量が増すが少しの差である
動力性能 僅かに低下する そのまま 冷房用エンジンで駆動しなおかつ荷物室設置のため
重心が変わらず安定性やハンドリングに影響はない
冷却能力の
安定性
走行状況による 一定 冷房用エンジンで駆動するため
渋滞などでも回転状態が一定で冷却能力はそのまま
運行中に走行用エンジンを停止させても冷房は安定である

鉄道車両

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日本国有鉄道(国鉄)では昭和34年から10系客車寝台車食堂車および特別二等車において本格的に冷房装置が搭載されることになり、4PQエンジンに発電機を搭載して自車のみに給電する発電装置を床下に搭載していた。

その後、マロネ40キハ58系の優等車両にも搭載されることになり、4PQエンジンを気動車用に設計変更した小型軽量の三菱日本重工4DQ-11P形水冷直列4気筒ディーゼルエンジンとDM72形発電機を使用した発電装置を1等車/グリーン車の初期冷房車や冷房改造車に搭載したほか、作業員の発汗による郵便物の汚損対策として郵便車にも搭載された。 普通車についてはスペースの問題で各車両に発電機を搭載することができなかったため、スペースのある駆動用エンジン1基の車両に発電装置を搭載し、複数の車両を給電することになった。水冷V型8気筒ディーゼルエンジンで連続定格90 PSダイハツ工業製4VK形発電装置(発電機形式: DM83形(2極)、三相交流400 V・50 Hz・70 kVA)にAU13形クーラーを搭載するようになった。4VKはキハ58系2000番台キハ65形などの3両給電用に採用された。

民営化前年の昭和61年よりバスで多用されているサブエンジン式の冷房装置を改良したAU34型冷房装置がキハ31形キハ38形で採用されたのを皮切りに、国鉄分割民営化後はJRにおいて一部の国鉄気動車の冷房化改造で採用された。

私鉄ではトヨタ・2Jトヨタ・2DZが代表的で、トヨタ・2Jは小湊鉄道キハ200形関東鉄道キハ300形(1989年から1993年までの施工車)、トヨタ・2DZは関東鉄道キハ300形(1994年以降の施工車)で採用された。

鉄道車両で基本的に車両の床下に搭載されるが、2機関装備の気動車など床下にスペースがない場合は床上に機器室を設け、そこに搭載する場合もある。JR北海道のお座敷気動車のキロ59形、キハ56形550番台の冷房化の際にこの方法が用いられた。

1枚目:サブエンジン式冷房装置を床上に搭載したキハ56形550番台。先頭車両後部のルーバー部分に冷房装置が搭載されている。
2枚目:快速「ミッドナイト」用改造車のキハ27形500・550番台。キハ27は走行用エンジン1基のため、側面はすっきりしている。
3枚目キハ38形の車内。冷房装置AU34は26,000kcal/hと冷却能力が低いため、扇風機も併設されている。
4枚目キハ31形の車内。キハ38形同様、扇風機が併設されている。

脚注

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  1. ^ 『バスラマエクスプレス11 The King』p.8、ぽると出版

関連項目

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