クロバネキノコバエ
クロバネキノコバエ科 | |||||||||||||||||||||||||||
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Bradysia praecox
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クロバネキノコバエは、双翅目クロバネキノコバエ科(Sciaridae)に属する昆虫の総称。クロキノコバエともいう。
シイタケや花卉、農作物などを食害する農業害虫、衛生害虫として知られる。
分類
[編集]世界で約2400種が記録されているが、未記載種を含めると5000-10000種になると考えられている[1]。記録されている種は、旧北区で約900種、新北区で約150種ほどであるが、実際には旧北区にあと約600種は未記載種がいると見込まれており、新北区や亜熱帯地域にも未知の種が多くいることが推測されている[1]。
クロバネキノコバエ科の分類は、双翅目の中でも「問題児[2]」とされており、分類体系は混乱している。本科はケバエ下目に属し、タマバエ科やキノコバエ科と近縁とされているが、高次分類にも問題が残されており、また属の定義も不十分である[1]。さらに亜科や族といった下位分類についてもほとんど検討が進んでいない[3]。
生態
[編集]成虫は体長1-6mmの種が多いが、まれに約10mmになる種もいる[1]。翅は透明または褐色、黒色であり、まれに斑点や暗色の帯が生じる[1]。湿った土中の有機物をエサに成長する[4]。
卵はふつう産卵後4-7日で孵化する[2]。幼虫は朽木や樹皮の内部などで生活し、8-20日で4齢となる[2]。蛹の期間は通常3-5日続き、その後羽化する[2]。
幼虫が集団で行進することが知られており、軍隊の行進を連想させることから「armyworm」と呼ばれている。我が国では,北海道,秋田県,宮城県,群馬県,神奈川県、兵庫県でこの集団行進が確認されている[5]。
生態には不明な点も多いが、森林内で有機物の分解や花粉の媒介等に関与していると考えられている[4]。
人間との関係
[編集]針などはなく人体に直接の危害を与える昆虫ではない[4]が、住居周辺で大量発生して家屋内を汚すことがある[4]。
クロバネキノコバエの多くの種は植物や菌類を餌とするため、農作物などに被害を及ぼす害虫として扱われる。害虫として扱われる主な種として、以下の様な種が知られる。
- チビクロバネキノコバエ Bradysia agrestis Sasakawa, 1978 - テッポウユリ、ラッパスイセンなど[6]。
- チバクロバネキノコバエ Bradysia paupera - シイタケ、マッシュルーム[7][8]
- ツクリタケクロバネキノコバエ Lycoriella mali - ツクリタケ[9]
- ショウガクロバネキノコバエ Phytosciara zingiberis Sasakawa, 1985 - ショウガ[10][11]
- ジャガイモクロバネキノコバエ Pnyxia scabiei (Hopkins, 1895) - テンサイ[6]
- ヒトトゲクロバネキノコバエ Psilosciara flammulinae Sasakawa, 1983 - ショウガ[11]、エノキ、マッシュルーム、テンサイ[6]
また、フハイカビの媒介者としても知られている[12]。ヨーロッパでは薬剤による防除が実施されている[9]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e Werner MOHRIG, Frank MENZEL (2009) Sciaridae 279-293 In. Manual of Central America Diptera Volume 1, Canadian Science Publishing
- ^ a b c d Steffan, WALLACE A (1969). “Insects of Micronesia”. Diptera: Sciaridae. Insects of Micronesia 12 (7): 669-732 .
- ^ AMORIM D. S. (1992). “A catalogue of the family Sciaridae (Diptera) of the Americas south of the United States”. Revista Brasileira de Entomologia 36: 55-77. CRID 1570009750046953472 .
- ^ a b c d 小さなハエの大量発生について 中津川市 2020年2月16日閲覧。
- ^ 山内健生, 有馬知佳「西日本で初めて確認されたクロバネキノコバエ科幼虫の集団行進」『ペストロジー』第31巻第1号、日本ペストロジー学会、2016年、5-6頁、doi:10.24486/pestology.31.1_5。
- ^ a b c 笹川満廣「A2 最近,話題になったクロバネキノコバエ類(分類学・系統学)」『日本応用動物昆虫学会大会講演要旨』第33号、日本応用動物昆虫学会、1989年3月、37頁、NAID 110001084637。
- ^ 劉益寧, 本田洋, 河野義明「H203 チバクロバネキノコバエの性フェロモンに対する雄の反応特性(生理活性物質)」『日本応用動物昆虫学会大会講演要旨』第45号、日本応用動物昆虫学会、2001年3月、145頁、NAID 110001090922。
- ^ 劉益寧, 本田洋, 河野義明「チバクロバネキノコバエ(Bradysia paupera)の配偶行動とその制御要因」『日本応用動物昆虫学会誌』第46巻第1号、日本応用動物昆虫学会、2002年、23-30頁、doi:10.1303/jjaez.2002.23、ISSN 0021-4914、NAID 110001124684。
- ^ a b 後藤忠男, 中牟田潔, 所雅彦, 中島忠一(1999)「ツクリタケクロバネキノコバエの交尾行動と性フェロモンの存在」『日本応用動物昆虫学会誌』 1999年 43巻 4号 p.181-184, doi:10.1303/jjaez.43.181, 日本応用動物昆虫学会
- ^ 笹川満廣「A3 農産物を加害するクロバネキノコバエについて(分類学・形態学・生活史・分布)」『日本応用動物昆虫学会大会講演要旨』第29号、日本応用動物昆虫学会、1985年4月、2頁、NAID 110001094266。
- ^ a b 小川義雄, 中須賀孝正, 笹川滿廣「貯蔵ショウガを加害するショウガクロバネキノコバエについて」『日本応用動物昆虫学会誌』第29巻第3号、日本応用動物昆虫学会、1985年、doi:10.1303/jjaez.29.193。
- ^ Grant Low (2009) Integral Hydroponics: Indoor Growing Principles for Beginners and Intermediates. BookSurge Publishing p.67, ISBN 978-1439243220.