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風呂敷残業

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クラウド残業から転送)

風呂敷残業ふろしき残業(ふろしきざんぎょう)は、通常の労働時間内に終わらない仕事を自宅に持ち帰ってすること[1]労働時間外に事実上の労働をする[2]ことになり、賃金支払いの対象とならないため、サービス残業の一形態とされることもあるが[3]、会社など特定の場所に留まることを拘束されるわけではないので、別個の概念とされる[1]

日本

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風呂敷残業は、労働者が自主的に行なう場合には、時間的にも場所的にも労働者を拘束しているわけではなく、また、使用者(雇用主)ないし上司の指揮監督下にあるわけでもないので、労働時間にはあたらず、賃金支払いは必要ない[4]。しかし、上司が仕事の持ち帰りを命じた場合には、指揮監督下にあることとなり、賃金支払いが必要とされ[5][6]、また労働災害の認定などにおいても労働時間とされることがある[5][7]。また、上司が直接的に関知していなかったとしても、常態化していたり、客観的に労働時間内に消化できない多量の仕事を課している場合には、賃金の支払いが求められる[7]

労働時間外における労働という問題とは別に、資料等を職場から持ち出すことをめぐって、情報セキュリティの観点から風呂敷残業が問題視されることもある[7]2006年には、自衛官が「風呂敷残業」のためにUSBメモリにデータを入れて仕事を自宅に持ち帰り、自分のパソコンで仕事をした結果、Winnyによって機密情報が流出する事態となった[8]

また、風呂敷残業が常態化すると、工数の正確な把握が困難になるという問題もある[7]

「風呂敷残業」という表現は、かつて仕事に必要な書類を風呂敷に包んで自宅に持ち帰ったことに由来するが、近年ではインターネットを介して自宅から会社のサーバにアクセスして仕事をすることも風呂敷残業の一形態と考えられ[7]、同趣旨の表現として「インターネット残業[6]、「メール(Eメール)残業[5][6][9][10]、「添付ファイル残業[10]、「フロッピー残業[3][11]、「USB残業[3][11]、「クラウド残業[3]などといった表現も生まれている。

2000年代半ばにホワイトカラーエグゼンプションをめぐる議論が日本で盛んになった時期には、ホワイトカラーエグゼンプションの導入によって風呂敷残業が増加すると論じられた[12]

出典・脚注

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  1. ^ a b サービス残業/ふろしき残業”. ビジネス用語の豆辞典. 2013年2月3日閲覧。
  2. ^ 労働時間外の事実上の労働を、「時間外労働」と混同しないよう注意。日本労働基準法では、法定労働時間を超える労働を「時間外労働」というが、労働時間は使用者・監督者の下で労働に服しなければならない時間のことであり、退勤後はこれには含まれないのが原則である。
  3. ^ a b c d “クラウド残業―仕事の持ち帰り方進化(コトバの鏡)”. 日経プラスワン: p. 2. (2013年1月26日)  - 日経テレコンにて閲覧
  4. ^ 風呂敷残業に残業手当は必要か?”. 西塔社会保険労務士事務所. 2013年2月3日閲覧。
  5. ^ a b c 佐藤正知 (2007年6月25日). “(働く人の法律相談)持ち帰り残業 「仕事」と認められる条件は”. 朝日新聞・夕刊: p. 9  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  6. ^ a b c (9)「リモート残業」は賃金請求できるか?”. 労働時間短縮研究所. "013-02-03閲覧。
  7. ^ a b c d e 神田一樹『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』税務経理協会、2014年、94-95頁。ISBN 978-4-419-06064-0 
  8. ^ 佐々木康之 (2013年1月7日). “〈取材後記〉刺し身とUSBメモリー 機密守る適応力”. 朝日新聞デジタル. 2013年2月3日閲覧。
  9. ^ 日本語俗語辞典 メール残業”. ジャストレ. "013-02-03閲覧。
  10. ^ a b 志木サテライトオフィス・ビジネスセンター『テレワークの動向と 生産性に関する調査研究 報告書』(PDF)総務省情報通信国際戦略局情報通信経済室、2010年、11頁https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/h22_06_houkoku.pdf 
  11. ^ a b 相田利雄「月例研究会 (2011年1月26日) 比較・大企業と中小企業で働くということ」(PDF)『大原社会問題研究所雑誌』第630号、2011年3月25日、85頁、2013年2月3日閲覧 
  12. ^ 白田浩 (2007年1月26日). “(私の視点)残業代ゼロ 法案再提出は許されない”. 朝日新聞・朝刊: p. 12  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧