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出版後査読

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クラウド査読から転送)

出版後査読掲載後査読: post-publication peer-review)は、学術論文出版後に研究者仲間が論文内容をウェブ上で査読peer review、ピア・レビュー)する活動で、査読はウェブ上に公開される。2001年以降に登場・発達した新しい学術システムの1つである。

査読・評価・議論できる人を指定するサイト、特定の資格を持つ研究者に限定するサイトもある。

論文データの捏造改竄盗用(この3つを「特定不正行為」[1]、または「研究ネカト」[2]と呼ぶ)、重複出版など、研究公正上の問題、研究倫理に違反する点を指摘するサイトもある。論文撤回に至る問題を議論するサイトもある。

従来の査読と出版後査読の違い

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従来の論文出版では、投稿原稿を研究者仲間が査読し、採択・受理(accept)後に出版していたが、出版後査読は、出版前ではなく出版後に査読・評価・議論する。また、出版された論文の輪講(ジャーナルクラブ、journal club)レベルの議論を不特定多数を相手にウェブでするという面もある。査読・評価・議論は匿名ハンドルネーム実名のいずれかで書き、論文の著者自身は実名で応対する。

従来の査読と出版後査読(掲載後査読)の違いをスネハ・クルカルニ(Sneha Kulkarni)が次のように説明している。

掲載前の査読と掲載後の査読の違いは何でしょうか? いくつか重要な側面があります。

妥当性: 掲載前の査読では、研究を選抜するのは2、3名の研究者です。ですから、研究の信頼性について疑問を抱かせるような個々の細部に気づく可能性は小さいのです。掲載後の査読では、科学コミュニティ全体がその研究を審査することが可能です。

透明性: 概して秘密主義で、選ばれた数の査読者だけが関わっている伝統的な査読と異なり、掲載後の査読は、掲載された研究の正しさを実証したいと思っている人すべてに開かれています。さらに、直接的に、仲間の研究者が自由に自分たちの見解を発表することができるだけでなく、間接的に、掲載したジャーナルに手紙を書く、著者へ自分からコンタクトを取る、批評を自由だが匿名で投稿することもできます。

コミュニケーション: 伝統的な査読は、エディター、査読者、著者の間のやり取りでした。一方、掲載後の査読は、その分野あるいはコミュニティ全体の専門家間のコミュニケーションになります。この場合、専門家の意見は、注意と議論を引きつけるのに十分な説得力がなければなりません。これに対し掲載前の評価は、査読者の判断が強制力を持つにもかかわらず、それに依存しているのです。

— スネハ・クルカルニ、掲載後の査読—まだ講じられていない手段[3]

種類

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論文掲載誌で査読・議論

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2001年、学術雑誌の『Atmospheric Chemistry and Physics』(ACP)が出版前ではなく出版後に査読する方式を最初に導入した[4]。その後、パブメド・コモンズ(PubMed Commons)、F1000Research、ScienceOpenWinnower、Philica[5]が導入した。

『Atmospheric Chemistry and Physics』とF1000Research(ファカルティ1000の一部)は、従来の査読と同じように審査する人を編集部の方で指定する[6][7][8]

パブメド・コモンズ(PubMed Commons)、ScienceOpenWinnower、Philicaは査読する人を編集部の方で指定しない。誰でも査読・評価・議論に参加できる。

査読・評価・議論は論文の最後に表示され、読者は査読・評価・議論を読みながら論文を理解できる利点がある。また、問題と感じた点をコメントすることで論文を一層深く理解できる利点もある。

著者は投稿した原稿が早く出版され、全体として、査読・評価・議論の透明性が保たれる利点がある。

論文掲載誌とは別の独立サイトで査読・議論

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査読され学術雑誌に出版された論文を対象に査読・議論する。

パブピア(PubPeer)、パブロンズ(Publons)、JournalReview.org撤回監視などのサイトがある。

パブピアは、しばしば、論文データの捏造改竄盗用重複出版など、研究公正上の問題、研究倫理に違反する点を指摘している。

撤回監視は、しばしば、論文撤回問題も議論している。

脚注・文献

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  1. ^ 研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン”. 文部科学省 (2014年8月26日). 2016年2月28日閲覧。
  2. ^ 白楽ロックビル (3 2016). “海外の新事例から学ぶ「ねつ造・改竄・盗用」の動向と防止策”. 情報の科学と技術 66 (3): 109-114. http://www.infosta.or.jp/journals/201603-ja/#4. 
  3. ^ クルカルニ, スネハ (2014年5月7日). “掲載後の査読—まだ講じられていない手段”. Editage Insights. 2016年2月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月12日閲覧。
  4. ^ Poschl, Ulrich (2012). “Multi-stage open peer review: scientific evaluation integrating the strengths of traditional peer review with the virtues of transparency and self-regulation”. Front. Comput. Neurosci. 6. doi:10.3389/fncom.2012.00033. 
  5. ^ Philica - The instant, open-access Journal of Everything”. 2016年2月11日閲覧。
  6. ^ Publish First, Ask Questions Later”. Wired (July 23, 2013). 2015年1月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月11日閲覧。
  7. ^ The recipe for our (not so) secret Post-Publication Peer Review sauce!” (December 8, 2014). 2015年1月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月11日閲覧。
  8. ^ The Winnower: An Interview with Josh Nicholson” (December 8, 2014). 2015年1月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月11日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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