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カマス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カマス科から転送)
カマス科
オニカマス Sphyraena barracuda
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
上目 : 棘鰭上目 Acanthopterygii
: スズキ目 Perciformes
バショウカジキ目 Istiophoriformes
: カマス科 Sphyraenidae
Rafinesque1815
: カマス属 Sphyraena
学名
Sphyraena
Artedi1793[1]
英名
Barracuda

カマス(魳、梭子魚、梭魚、魣)は、スズキ目カマス科学名Sphyraenidae)に分類される魚類の総称。カマス科はカマス属のみ1属で構成され、オニカマスなど27種が記載される[2]バラクーダ(Barracuda)という英名でも知られている。秋冬時期のカマスを特に「霜降りカマス」という。

分布・生態

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すべて海水魚で、太平洋インド洋大西洋熱帯亜熱帯域に幅広く分布する。主に沿岸域に生息し、サンゴ礁岩礁の周囲で群れを形成し、活発に泳ぎ回る。食性魚食性で、イワシなど他の魚類を貪欲に捕食する[3]。ヒトに対して攻撃性を示す魚類の一つであり、一部の地域ではサメよりも危険な存在と捉えられている[2][4]

ほとんどの種類が釣魚あるいは食用魚として利用され、定置網延縄などで漁獲される。肉は白身で淡白だが、生では水っぽく柔らかいため、刺身で食べられることは少ない。ほとんどが干物塩焼きから揚げなどに加工される。

形態

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細長い円筒形の体型をもち、全長は20-30cmほどの種類から2mに達することもあるオニカマスまでさまざまである[3]。口は大きく、やや突き出た下顎には鋭く強靭な歯を備える。側線がよく発達する一方、鰓耙はないか退化的[2]

背鰭は2つあり、互いの間隔は広く離れている。前方の背鰭は5本の棘条からなり、後方は1棘9軟条。胸鰭は体側のやや低い位置にある。小離鰭をもたない。椎骨は24個[2]

分類

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Nelson(2016)の体系において1属27種が認められている[2]。本体系はカマス科をサバ亜目で最も原始的なグループとして位置付けていたが[5][6]分子系統解析ではアジカジキカレイ等と同じ系統 (Carangiformes) に属し、特にアカメ科アクタウオ等と近縁であるという結果が得られている[7]

本稿では、FishBaseに記載される1属29種についてリストする[3]

タイワンカマスSphyraena flavicauda)。インド太平洋に広く分布し、水平方向に長い群れを作る[8]
オオメカマスSphyraena forsteri)。和名の通り大きな眼が特徴

主な種類

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全長50cm。和名のとおり体が赤っぽく、体側に1本の黒い縦縞がある。腹鰭が背鰭より前にある。はヤマトカマスと比べて大きい[8]。北海道以南から南シナ海まで分布する。
  • ヤマトカマス Sphyraena japonica (英:Japanese barracuda)
全長35cm。アカカマスに比べて小型で、体色は青味がかり、体側の縦帯を欠く。腹鰭は背鰭と同じか、やや後方に位置する。鱗は小さく剥がれやすい。アカカマスに対して「ミズカマス」とよばれることもある。東北以南から南シナ海まで分布する。タチウオの仕掛けに掛かることがある。
全長180cmに達する大型種。世界中の熱帯海域に広く分布する。食用にされていたが、産地によってはシガテラ毒シガトキシン)を持つため、バラムツアブラソコムツイシナギ(肝臓のみ)と並び、食品衛生法により販売禁止となっている。

出典・脚注

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  1. ^ "Sphyraena Artedi, 1793". World Register of Marine Species. 2022年12月25日閲覧
  2. ^ a b c d e Nelson 2016, p. 388.
  3. ^ a b c Family Sphyraenidae - Barracudas”. fishbase.se. 2024年2月10日閲覧。
  4. ^ キャンベル&ドーズ 2007, p. 106.
  5. ^ 岩井 2005, p. 45-46.
  6. ^ Helfman et al 2009, p. 306.
  7. ^ Girard, Matthew G., Matthew P. Davis, and W. Leo Smith (2020). “The phylogeny of carangiform fishes: morphological and genomic investigations of a new fish clade”. Copeia 108 (2): 265-298. doi:10.1643/CI-19-320. 
  8. ^ a b 岡村&尼岡 1997, p. 652-655.
  9. ^ Sphyraena iburiensis Doiuchi & Nakabo, 2005 イブリカマス”. BISMaL. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology. 2020年12月15日閲覧。
  10. ^ Miki, Ryohei; Wada, Masaaki (2018). “First Japanese records of the barracuda Sphyraena jello (Teleostei: Sphyraenidae)”. Biogeography 20: 62-66. doi:10.11358/biogeo.20.62. 

参考文献

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  • J.S. Nelson (2016) (英語). Fishes of the World (5th Edition ed.). New Jersey: Wiley & Sons, Inc. ISBN 978-1-118-34233-6 
  • Gene S. Helfman; Bruce B. Collette; Douglas E. Facey; Brian W. Bowen (2009) (英語). The Diversity of Fishes: Biology, Evolution, and Ecology (2. Edition ed.). Wiley-Blackwell. ISBN 978-1-4051-2494-2 
  • A.キャンベル, J.ドーズ 編、松浦啓一, 渋川浩一, 今村央 訳『魚類 II』松浦啓一(監訳)、朝倉書店〈海の動物百科3〉、2007年。ISBN 978-4-254-17697-1 
  • 岩井保『魚学入門』恒星社厚生閣、2005年。ISBN 978-4-7699-1012-1 
  • 『日本の海水魚』岡村収, 尼岡邦夫(編・監修)、山と溪谷社〈山渓カラー名鑑〉、1997年。ISBN 4-635-09027-2 

関連項目

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外部リンク

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