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カプレカー数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カプレカ数から転送)

カプレカー数(カプレカーすう、Kaprekar number)とは、次のいずれかで定義される自然数である[1]

  1. 2乗して上位の半分と下位の半分とに分けて和を取ったとき、元の値に等しくなる自然数。
  2. 桁を並べ替えて最大にした数と最小にした数との差を取ったとき、元の値に等しくなる自然数(カプレカー定数)。

名称は、インド数学者 D. R. カプレカル英語表記: D. R. Kaprekar[1][2])にちなむ[3][4]。カプレカ数[5]、カプリカ数[6]ともいい、原語であるマラーティー語の発音[7]に近づけてカプレカル数[8][9]ともいう。

定義1

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正の整数2乗し、上位と下位のゼロでない[10]数桁ずつに分けて、それらの和を取る。この操作によって元の値に等しくなる数をカプレカー数と呼ぶ。

例えば、297 はカプレカー数である。2972 = 88209 であり、これを上位の2桁 88 と下位の3桁 209 とに分けて足すと 88 + 209 = 297 となる。 この定義でのカプレカー数を小さな順に並べると、こうなる[11]

1, 9, 45, 55, 99, 297, 703, 999, 2223, 2728, 4879, 4950, 5050, 5292, …
  • 正の整数の2乗を、上位と下位との桁数をほぼ等しく(桁数が等しいか、上位の桁数より下位の桁数が1だけ大きく)分けるという定義もある。つまり、2乗が偶数桁(2n 桁)である場合は上位の n 桁と下位の n 桁とに分け、奇数桁(2n+1 桁)である場合は上位の n 桁と下位の n+1 桁とに分けて、上位と下位との和を取る。4879 と 5292 は、この定義のカプレカー数には含まれない[12]
48792 = 23804641 であり、238 + 04641 = 4879 であるが、 2380 + 4641 = 7021
52922 = 28005264 であり、28 + 005264 = 5292 であるが、 2800 + 5264 = 8064

定義1のカプレカー数は無数ある。例えば、9, 99, 999, 9999, 99999, … のように"9"のぞろ目の数は全てこの定義のカプレカー数である。

定義2(カプレカー定数)

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整数の各桁の数を並べ替え、最大のものと最小のものとの差を取る。この差が元の整数に等しくなる数をカプレカー数と呼ぶ(カプレカー定数とも呼ばれる)。

6174 は、7641 − 1467 = 6174 であるから、この定義でのカプレカー数である。6174は、10進4桁では唯一のカプレカー定数である。また、3桁における唯一のカプレカー定数は、495 である。

カプレカー定数を小さな順に並べると、以下のとおりとなる[13]

0, 495, 6174, 549945, 631764, 63317664, 97508421, 554999445, 864197532, 6333176664, …

なお、容易に分かるように、カプレカー定数は全て9倍数である。

たとえば、最初の数として 2005 を取り、上記の操作を繰り返すと、

5200 − 0025 = 5175
7551 − 1557 = 5994
9954 − 4599 = 5355
5553 − 3555 = 1998
9981 − 1899 = 8082
8820 − 0288 = 8532
8532 − 2358 = 6174
7641 − 1467 = 6174

となり、この後は 6174 が繰り返される。どのような4桁の数でも最終的に 0 または 6174 になることが確かめられる(1111 の倍数だけが 0 になり,その他は 6174 になる)。カプレカル自身は4桁の数だけを考察したが、任意の桁数の整数で同じことが考えられる。ある桁数の整数は有限個であるから、この操作を繰り返すと、最終的に必ずループになる。ループの周期が 1 である場合に、その整数をカプレカー数と呼ぶのである。

この定義のカプレカー数は無数にある。例えば、6174, 631764, 63317664, 6...333...17...666...4(途中に出現する"3"と"6"との長さが等しいもの)は全てカプレカー数である。

2005年には平田郁美が31桁までのすべてのカプレカー数を計算し、それらの分布を考察した。

 なお、ある桁に属するすべての数が、この操作で一つの数になるとき(通常のカプレカ数と区別し)特に「カプレカ定数」と呼べば、カプレカー定数は3桁の495と4桁の6174の二つに限られることが1981年にプリチェットらにより示された。また、彼らはカプレカー数を4つのタイプに分類したが、この分類には一部に重複があった。

2024年、嵐山数学研究会(主宰 弥永健一)の岩崎春男は、ある自然数がカプレカー数になるためには、その自然数が

7種類の数 495,6174,36,123456789,27,124578,09の組み合わせで構成される5種類の集合のいずれかに所属することが必要十分であること、この5種類の集合による新しい分類がプリチェットらの分類の訂正を含むことを示した。

これにより、n桁のカプレカ―数の個数が、2種類の一次方程式

n=3x (x≧1), n=4+2x (x≧0)

または3種類の一次不定方程式

n=9x+2y  (x≧1, y≧0) , n=9x+14y (x≧1 , y≧1) , n=6x+2y+9z+2u (x≧1 , y≧1 , z≧0 , u≧0)

のうち成立可能な方程式の整数解x~uの個数に一致すること、その解たちはn桁のカプレカ―数をすべて表現することが明らかになった。こうして、定義2のすべてのカプレカ―数の決定およびそれらの個数についての問題は解決した[14]

この論文にしたがい、例をひとつ挙げてみる。

例 n=23 の場合、nは3の倍数ではない奇数なので成立可能な方程式は次の3個に限られ、それらの解に対応する数に上で定めた操作( f とする)を一度施せば、7個のカプレカ―数が得られる[14]

23=9x+2yの解

(x , y)=(1 , 7) 

f(123456789 33333336666666)= 86433333331976666666532

23=9x+14y の解

(x , y)=(1 , 1)

f(123456789 36 449955 222777)= 87765443219997765543222

23=6x+2y+9z+2uの解

(x, y , z , u) = (1 , 4 , 1 , 0)

 f(124578 00009999 123456789)= 99998765420987543210001

(x , y , z , u) = (1 , 3 , 1 , 1)

 f(124578 000999 123456789 36)=99987654320987654321001

(x , y , z , u) = (1 ,2 , 1 , 2)

 f(124578 0099 123456789 3366)=99876543320987665432101 

(x , y , z, u)= (1 , 1 , 1 , 3)

 f(124578 09 123456789 333666)= 98765433320987666543211

(x , y , z, u)= (2 , 1 , 1 , 0)

 f(112244557788 09 123456789) =98776554210988754432211

脚注

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  1. ^ a b Kaprekar 1980.
  2. ^ D. R. Kaprekar (1949-03). “217 Another Solitaire Game”. Scripta Mathematica 15 (1): 244-245. 
  3. ^ マーティン・ガードナー 著、一松信 訳『メイトリックス博士の驚異の数秘術』紀伊國屋書店、1978年、155-156頁。 
  4. ^ 西山豊6174の不思議」(PDF)『理系への数学』、現代数学社、2006年1月、9-12頁、2021年3月19日閲覧 
  5. ^ サム・パーク編 著、蟹江幸博 訳『数学、それは宇宙の言葉 : 数学者が語る50のヴィジョン』岩波書店、2020年、1-6頁。 
  6. ^ 秋山仁『NHK 算数大すき』日本放送出版協会、1992年。 
  7. ^ マラーティー語でのつづり कापरेकर発音は「カプリカル」であって、最後の「ル」は巻き舌音。
  8. ^ 片山 1988.
  9. ^ 亀井 2021.
  10. ^ 10002 = 1000000 であり、1000 + 000 = 1000 であるが、1000 はカプレカー数ではない。
  11. ^ オンライン整数列大辞典の数列 A006886
  12. ^ オンライン整数列大辞典の数列 A053816
  13. ^ A099009
  14. ^ a b “A new classification of the Kaprekar Numbers”. The Fibonacci Quarterly. (2024-11). https://www.fq.math.ca/list-of-issues.html. 

参考文献

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  • D. R. Kaprekar (1980–1981). “On Kaprekar numbers”. Journal of Recreational Mathematics 13: 81–82. 
  • M. ラインズ 著、片山孝次 訳『数 : その意外な表情』岩波書店、1988年。 
  • 亀井哲治郎(著)、数学教育協議会(編)「6174は「カプレカル数」と呼ぼう!」『数学教室』こ・そ・あ・ど/んなこと、あけび書房、2021年4月、72-73頁。 
  • G. D. Prichett, A. L. Ludington, and J. F. Lapenta, The determination of all decadic Kaprekar constants, The Fibonacci Quaterly, 19.1 (1981), 45–52.
  • Y. Hirata, The Kaprekar transformation for higher-digit numbers, Maebashi Kyoai Gakuen Ronshu, 5 (2005), 21–50.

外部リンク

[編集]
  • カプレカ数(特に3桁の場合)について』 - 高校数学の美しい物語
  • Weisstein, Eric W. "Kaprekar Number". mathworld.wolfram.com (英語). - 第1の定義によるカプレカー数
  • Weisstein, Eric W. "Kaprekar Routine". mathworld.wolfram.com (英語). - 第2の定義によるカプレカー数
  • Yutaka Nishiyama (2006年3月1日). “Mysterious Number 6174”. Plus Magazine. University of Cambridge. 2021年3月29日閲覧。