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オキスズキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オキスズキ属から転送)
オキスズキ
保全状況評価[1]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
: オキスズキ科 Pomatomidae
: オキスズキ属 Pomatomus
Lacépède1802
: オキスズキ P. saltatrix
学名
Pomatomus saltatrix
(Linnaeus1766)
英名
Bluefish

オキスズキ(学名:Pomatomus saltatrix) は、スズキ目オキスズキ科に属する海水魚の一種で、アミキリという名称のほうが一般的。太平洋北部・東部を除く、全世界の温帯から亜熱帯に生息する回遊性魚類で、日本近海にはいない。オーストラリアではtailor[2]南アフリカ東岸ではshad、西岸ではelfと呼ばれる。他の名としては blue・chopper・anchoaなどがある[3]。独特の風味は好き嫌いがあるものの、一般に食味はよいとされ、ゲームフィッシュとしても人気がある。

形態

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成体は60-70センチメートル程度で、最大で130センチメートル・14キログラムの報告がある。第一背鰭は8-9棘、第二背鰭は23-28軟条、臀鰭は2-3棘23-27軟条。尾鰭は大きくて二叉する。第一背鰭と胸鰭は通常、その後方にある溝に畳まれる。背面は灰色がかった青緑で、腹面に向けて次第に白くなる。歯は一列、各歯の大きさは全て同じでナイフのように鋭い[4]。均整のとれた形態である。

分布

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1866年のCurrier & Ivesによる版画 "Trolling for blue fish" 。

温帯から亜熱帯域を広く回遊するが、東太平洋、北西太平洋には生息しない[4]。アメリカ東海岸(フロリダ南部から南米北部では見られない)・アフリカ・地中海から黒海(この間を回遊する)・東南アジア・オーストラリアに分布し、主に大陸棚上に生息する。砂浜や岩海岸などの沿岸性環境や[5]河口などの汽水域にも進入するが[6][7][8]、周期的に沿岸を離れ、外洋域へと回遊する[4][9]

アメリカ東海岸では、冬はフロリダ沖で過ごし、4月に北上を始める。6月にはマサチューセッツ州に到達し、特に個体数の多い年には一部がノバスコシア州にまで北上することもある。10月には南下を始め、ニューヨークより北では見られなくなる。一部には回遊性が低く[10][11]、周年メキシコ湾に留まる個体もいる。同様の行動が他の地域の個体群でも見られ、特にエーゲ海-マルマラ海-黒海を回遊する個体群は漁業上重要である。この個体群は、冬季をトルコの地中海沿岸で過ごす[12]。南アフリカ沿岸では概ね海岸に沿って回遊する[13]

生活史

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春から夏にかけて繁殖し、寿命は9年ほど[4][9]。稚魚は動物プランクトンとして過ごし、海流に乗って分散する[14][15]。フロリダ東方で、北に移動している産卵後の個体が発見されている。ほとんどの外洋性魚類のように、繁殖様式はよく分かっていない。北西大西洋では、春にハッテラス岬南方で繁殖する個体群と、夏にニューイングランド沿岸で繁殖する個体群がおり、後者のほうが稚魚の成長が遅い[16]

摂餌

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9kgを超える大型個体
映像外部リンク
Bluefish blitzYouTube
Bluefish Feeding FrenzyYouTube
Fishing for Gator BluefishYouTube

成体は獰猛で強力な捕食者であり、緩い群れを作る。泳ぎは速く、小魚の群れに突入して狂乱索餌の形態で捕食する[4][9]。餌は生息地と季節によって変化し、menhadenなどのニシン科魚類 ・サバ科・weakfish(ニベ科)・イサキ科・striped anchovies (カタクチイワシ科)・エビイカなどである。若魚を共食いすることもある[17]。餌を追って波打ち際にまで集団で突入することもあり、この行動は "bluefish blitz" と呼ばれている。

また、本種は生活史の全段階で、他の大型魚類の餌となる。稚魚期にはシマスズキ・ナツビラメ・マグロ・サメ・エイ・イルカ・weakfish・または本種の成魚の餌となり、成魚もマグロ・サメ・カジキ・アザラシ・アシカ・イルカなどに捕食される。

利用

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1950–2010年の国別漁獲量(千トン単位)。FAOによる報告[18]

アメリカでは主に遊漁的に釣られる(83%)が、商業的にも重要である(17%)[19]。個体数は10数年のスパンで周期的に変動する(グラフ参照)[20]

マグロサメカジキ漁の生き餌として用いられることもある。

力が強いため不用意に扱うのは危険である。漁業者が噛み付かれることもあり、手袋を着用して扱うことが推奨される。摂餌中の群れに不用意に近づくことは望ましくない[21] 2006年には、アリカンテの海岸で7歳の少女が攻撃を受けたという報告がある[22]

保護

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釣魚・食用としての需要は高く、世界各地で乱獲されている[23]。管理組織による規制で個体数が安定している地域もあり、米国では1990年代後半まで乱獲状態にあったが、保護活動により2007年には個体数は完全に回復している[24]。イスタンブールではフィスティバル ('Lüfer Festival') を通した啓蒙活動や漁獲制限によって個体群への圧力は減少していると考えられる[25]。だが、アフリカ沿岸部では、肉の代替となる貴重なタンパク源であることから現地住民による漁が続けられている[26]

類似種

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オキスズキ科にはムツが含められていたことがあるが、現在は分離されている。オキスズキ科に属する化石種として、中新世後期のカリフォルニア南部から Lophar miocaenius が発見されている。

脚注

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  1. ^ Carpenter, K.E., Ralph, G., Pina Amargos, F., Collette, B.B., Singh-Renton, S., Aiken, K.A., Dooley, J. & Marechal, J. 2015. Pomatomus saltatrix (errata version published in 2017). The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T190279A115314064. https://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T190279A19929357.en. Accessed on 29 October 2023.
  2. ^ CAAB taxon report for Pomatomus saltatrix at the CSIRO
  3. ^ Bluefish Identification”. 2014年11月4日閲覧。
  4. ^ a b c d e Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2006). "Pomatomus saltatrix" in FishBase. March 2006 version.
  5. ^ http://www.nefsc.noaa.gov/publications/tm/tm144/tm144.pdf
  6. ^ McBride, R. S., Conover, D. O. 1991. Recruitment of young-of-the-year bluefish Pomatomus saltatrix to the New York Bight - variation in abundance and growth of spring-spawned and summer-spawned cohorts. Marine Ecology-Progress Series. 78(3): 205-216, www.int-res.com/articles/meps/78/m078p205.pdf
  7. ^ McBride, R. S., Ross, J. L., Conover, D. O. 1993. Recruitment of bluefish Pomatomus saltatrix to estuaries of the U.S. South Atlantic bight. Fishery Bulletin, U.S. 91(2): 389-395, http://fishbull.noaa.gov/912/mcbride.pdf
  8. ^ McBride, R. S., Scherer, M. D., Powell, J. C. 1995. Correlated variations in abundances, size, growth, and loss rates of age-0 bluefish in a southern New England estuary. Transactions of the American Fisheries Society. 124(6): 898-910, DOI: 10.1577/1548-8659(1995)124<0898:CVIASG>2.3.CO;2
  9. ^ a b c Pomatomus saltatrix (Linnaeus, 1766) FAO, Species Fact Sheet. Retrieved October 2012.
  10. ^ Pomatomus saltatrix (Bluefish)”. 2014年11月4日閲覧。
  11. ^ Common Name: Bluefish”. 2014年11月4日閲覧。
  12. ^ Saving the Sultan of Fish”. 2014年11月4日閲覧。
  13. ^ Pomatomus Saltatrix
  14. ^ Norcross, J. J., Richardson, S. L., Massmann, W. H., Joseph, E. B. 1974. Development of young bluefish Pomatomus saltatrix and distribution of eggs and young in Virginian coastal waters. Trans. Am. Fish. Soc. 103:477-497.
  15. ^ Ditty, J. G., Shaw, R. F. 1993. http://www.galvestonlab.sefsc.noaa.gov/publications/pdf/832.pdf
  16. ^ Kendall, A. W., and Lionel A. Walford. (1979). “Sources and distribution of bluefish, Pomatomus saltatrix, larvae and juveniles off the east coast of the United States”. Fishery Bulletin 77 (1): 213-227. http://fishbull.noaa.gov/77-1/kendall.pdf. 
  17. ^ Schultz, Ken (2009) Ken Schultz's Essentials of Fishing John Wiley & Sons. ISBN 9780470444313.
  18. ^ Based on data sourced from the FishStat database
  19. ^ Bluefish_ Status of Fishery Resources off the Northeastern US”. 2014年11月4日閲覧。
  20. ^ Ulanski, Stan (2011) Fishing North Carolina's Outer Banks University of North Carolina Press. ISBN 9780807872079.
  21. ^ Lovko, Vincent J. (2008) Pathogenicity of the Purportedly Toxic Dinoflagellates Pfiesteria Piscicida and Pseudopfiesteria Shumwayae and Related Species ProQuest. ISBN 9780549882640.
  22. ^ "Un depredador rápido y muy voraz con dientes de sierra (in Spanish)" El País, July 14, 2006
  23. ^ Ceyhan, Tevfik, et al. (2007). “Age, growth, and reproductive season of bluefish (Pomatomus saltatrix) in the Marmara region, Turkey”. ICES Journal of Marine Science: Journal du Conseil 64 (3): 531-536. doi:10.1093/icesjms/fsm026. 
  24. ^ Bluefish FishWatch, NOAA. Retrieved 5 October 2012.
  25. ^ Istanbul Celebrates New Hope for a Favorite Fish With First-Annual 'Lüfer Festival'”. 2014年11月4日閲覧。
  26. ^ Shad or Elf - Rock Surf and Sea Fishing

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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