ブロントサウルス
ブロントサウルス | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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B. excelsus のホロタイプYPM 1980
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地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
約1億5,630万 - 1億4,680万年前 (中生代ジュラ紀後期マルム世中期) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Brontosaurus Marsh, 1879 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
タイプ種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
B. excelsus Marsh, 1877 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ブロントサウルス | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ブロントサウルス(Brontosaurus、[ˌbrɒntəˈsɔːrəs][1][2] bron-tə-SAWR-əs、古代ギリシア語の βροντή + σαῦρος で「雷トカゲ」を意味する)は、代表的な巨大竜脚類恐竜の属の一つ。模式種ブロントサウルス・エクセルスス B. excelsus は長い間アパトサウルスと同一視されていたが[3]、最近の研究では、ブロントサウルスとアパトサウルスは別属であり、B. excelsus、 B. yahnahpin、そして B. parvus の三種から成ると考えられている[4]。
ブロントサウルスは長く薄い首と小さな頭をもっており、植物食性に適応していた。強靭で重い四肢、長い鞭のような尾を備えていた。多様な種がジュラ紀後期のローレンシアのモリソン層で暮らしており、ジュラ紀の終わりと共に絶滅した[5]。成体は体重約15 t、全長22 m と推定される。
竜脚類の原型として、ブロントサウルスは最も良く知られた恐竜の一つであり、映画、切手、その他様々なメディアで題材にされてきた。
分類
[編集]ブロントサウルスは巨大竜脚類のクレードの一つ、ディプロドクス科のメンバーである。同科にはディプロドクスやスーパーサウルス、バロサウルスのような地上最長最大級の動物たちが含まれる。ブロントサウルスはその中でもアパトサウルスと共にアパトサウルス亜科を構成するが、他の未命名の属も含まれる可能性がある[6]。古生物学者マーシュはアトラントサウルスの仲間としてブロントサウルスを記載し、アトラントサウルス科に含めた。これは現在使われていない分類群である[7][8]。1878年、マーシュはアパトサウルス、ブロントサウルス、アトラントサウルス、モロサウルス(カマラサウルス)、ディプロドクスで成るその科を亜目のランクに引き上げようとした。 彼はそれを竜脚類の中に分類した。1903年、エルマー・リグスは竜脚類という名前は、先に命名されたオピストコエリアのジュニアシノニムであると指摘し、アパトサウルスをそのメンバーとして再記載した[7]。ほとんどの論文著者は依然、その分類群名として竜脚類を用いる[9]。
1879年のマーシュによる原記載のブロントサウルスは、長い間アパトサウルスのジュニアシノニムであると考えられてきた。模式種エクセルスス種は1903年にアパトサウルス・エクセルススに再分類されたが、2015年のイギリスとポルトガルの共同研究チームの調査により、ブロントサウルスはアパトサウルスと明確に区別されると結論づけられた[6][10][11]。同じ研究で、2つの異なる種も再分類され、一度アパトサウルスとエオブロントサウルスとされた種が、それぞれブロントサウルス・パルヴス Brontosaurus parvus とブロントサウルス・ヤナピン Brontosaurus yahnahpin となった[6]。しかし、全ての古生物学者がこの見解に同意しているわけではない[12][13]。1991年にブロントサウルスの骨格がアパトサウルスの胴体にカマラサウルスの頭を付けて発表されていたとされ、博物館の展示からもカマラサウルスの頭からアパトサウルスの頭に付け替えられた[14]。
以下は2015年のチョップとベンソンによるディプロドクス科のクラドグラム(2015)である。[6]
ディプロドクス科 |
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種
[編集]- ブロントサウルス・エクセルスス Brontosaurus excelsus
- このブロントサウルス属の模式種は、1879年にマーシュによって命名された。ホロタイプを含む、多くの標本が本種として記載されてきた。それに含まれたフィールド自然史博物館の FMNH P25112 は、発見以来アパトサウルス亜科の不明の種とされていた。ブロントサウルス・アンプルス Brontosaurus amplus は、場合によりパルヴス種に分類されてきたが、エクセルスス種のジュニアシノニムである。本種は模式標本とアンプルス種の模式標本とされるもののみが知られている[6][9]。ブロントサウルス最大種で、体重約15 t、全長22 m と推定される[15]。標本はどちらもワイオミング州のモリソン層のリード採石場から知られる。地質年代はキンメリッジ期後期[6] 、約1億5200万年前である。
- ブロントサウルス・パルヴス Brontosaurus parvus
- 1902年にエロサウルス Elosaurus として、ピーターソンとギルモアによって記載された。1994年にアパトサウルスと改められ、2015年にブロントサウルスとして再記載された。標本はホロタイプ CM 566(ワイオミング州アルバニーのシープクリーク採石場で見つかった幼体の部分骨格)、BYU 1252-18531(ブリガムヤング大所蔵、ユタ州で発見されたほぼ完全な骨格)、そして部分骨格 UW 15556(事故によりホロタイプと混同されていたもの)で構成される。キンメリッジ期中期[9]。成体は体重14 t 以上、全長22 m 以上に成長したと推定される[15]。
- ブロントサウルス・ヤナピン Brontosaurus yahnahpin
- バーサ採石場のモリソン層下部から発見された、ブロントサウルス最古の種である。年代は約1億5500万年前[5][16]。全長は約21 m に成長したと思われる[17]。エオブロントサウルス・ヤナピンの模式種だった本種は、 ジェームズ・フィラ James Filla とパトリック・レッドマン Patrick Redman により1994年にアパトサウルスとして記載された[18] 。種小名は、対になった腹肋骨がラコタ族の伝統的なヘアパイプを思わせることから、ラコタ語で「胸飾り」を意味する mah-koo yah-nah-pin に因んでいる。ホロタイプは TATE-001 で、これはワイオミング州モリソン層下部で発見されたほぼ完全な体骨格である。より断片的な化石も本種のものとして考えられているものがある。1998年、バッカーはより原始的な属であると考え、新属エオブロントサウルス Eobrontosaurus(「暁のブロントサウルス」の意)を記載した[19]。
以下のクラドグラムはチョップらによる2015年の分析結果。記載者らは、ほとんどのディプロドクス類の標本を別々に分析し、どの標本がどの種および属に分類されるかを推論した[6]。
アパトサウルス亜科 |
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記載
[編集]ブロントサウルスの頭骨はまだ見つかっていないが、恐らく近縁のアパトサウルスに似た頭骨であったと考えられる。他の竜脚類のように、頚椎上面には深い溝があって一対の棘を形成しているため、首が幅広く深くなっている[20]。脊椎は15個の頚椎、10個の胴椎、5個の仙椎、82個の尾椎からなる。ただし尾椎の数は種内変異が認められている。頚椎は他のディプロドクス類よりも太く頑丈だったが、アパトサウルスの成熟個体ほどではない。頸肋骨は脊椎に癒合していないか、あるいは強く接してはおらず、むしろ緩い[21]。10個の肋骨は胴体の側面にまんべんなく存在した[7]。大きな首は空気で満たされた気嚢によって軽量化されていた。ブロントサウルスは、アパトサウルスのように、脊椎に高い棘突起を有していた。これらは個々の椎骨の半分以上の高さがある。尾の形状はディプロドクス類としては異常で、比較的華奢で、腰から先の棘突起が急激に減少する。ブロントサウルスはまた、他のディプロドクス類と比べ非常に長い肋骨をもち、それにより非常に胸の位置が深くなっていた[22]。他のディプロドクス類同様、尾の先は鞭のような構造になっている[21]。
肋骨はまた非常に頑丈なつくりである[22]。前肢の骨も健固で、大腿骨はカマラサウルスに似ており、B. excelsus のそれは Apatosaurus ajax のものと見分けがつかない。チャールズ・ギルモアは1936年に、以前の復元では橈骨と尺骨が交差する可能性があると誤って診断していたと発表した[21]。ブロントサウルスは単一の大きな鉤爪を両方の前肢に備えていた。そして全ての脚において、最初の3つの指先に爪がついていた[23] これは一頭の竜脚類に対して保存された爪の数としては、今も最大数として認められている[21][24] 。前肢の単一の鉤爪は、緩やかに曲がっており、末端で垂直に短縮されている。腰の骨は頑丈な腸骨と癒合した恥骨と坐骨で構成される。脛骨と腓骨はディプロドクスの華奢なものとは異なっているが、カマラサウルスのものには非常に良く似ている。腓骨は脛骨よりも細く長い[21]。
研究史
[編集]1879年、オスニエル・チャールズ・マーシュは、巨大でほぼ完全な竜脚類の頭骨をワイオミング州コモブラフのモリソン層で発見したと発表した。彼はそれを新属新種として記載し、ブロントサウルス・エクセルスス Brontosaurus excelsus と命名した[7]。 [25] 古代ギリシア語で「雷トカゲ」を意味する[26]。excelsus はラテン語で「崇高な」や「高貴な」を意味する[27] 。この時、モリソン層では化石採集において熾烈な敵対関係にあったマーシュとエドワード・ドリンカー・コープによる化石戦争が発生しており、化石の命名競争が行われていた[28]。
エルマー・リグスは1903年の Geological Series of the Field Columbian Museum において、ブロントサウルスはアパトサウルスと属を分けるほどの違いに欠くとし、ブロントサウルス・エクセルススをアパトサウルス・エクセルスス Apatosaurus excelsus と改めた。リグスはこのことから、両属は同物異名であるかもしれず、ブロントサウルスはアパトサウルスよりも後に命名されているため、シノニムであると主張した[7] 。しかし、アメリカ自然史博物館に標本を設置する前、ヘンリー・フェアフィールド・オズボーンはマーシュの反対者であったにもかかわらず、骨格に「ブロントサウルス」のラベルを付けた(彼がリグスの発表を知らなかった可能性もある)[29][30]。
1905年、同博物館は世界初の竜脚類の組立骨格を公開した。それは主に AMNH 460 をもとに造られた複製で、種はブロントサウルス・エクセルススとされた。AMNH標本は非常に完全であり、足首から先、後肢、肩甲骨、尾椎を欠くだけで、それらは他の標本から補われた[31]。 尾椎は明らかに足りなかったが、にもかかわらずマーシュはあたかもそれが真実であるかのように見せかけた。さらに博物館は、この巨大生物の頭骨のように見えるような彫刻モデルを骨格に設置した。ディプロドクスのような繊細な頭骨がより正確であることがわかっているが、「3つの異なるサイトのうち、最大で、最も厚く、最も頑丈な頭骨、下顎および歯をもったもの」に基づいていた[21][7][32][33]。その頭骨はカマラサウルスのものに似ていた。当時、保存状態のよい頭骨が唯一知られていた竜脚類である。その組立骨格はブロントサウルスの頭骨を探さなかったアダム・ハーマンによって復元された。ハーマンは頭を手作りすることに尽力した。オズボーンは、頭骨の大部分はモロサウルス Morosaurus (現在のカマラサウルス)をもとにしていると公表した[29]。
1909年、アパトサウルスの頭骨が、カーネギー採石場の国立恐竜記念公園の最初の探検でアール・ダグラス指導の下、発見された。その頭骨は骨格 (CM 3018) から数 m 離れた場所で見つかり、アパトサウルス・ロウイサエ Apatosaurus louisae と記載された。CM 11162 とナンバリングされ、ディプロドクスの頭骨と非常に似ていると考えられた。それはダグラスとカーネギー博物館のウィリアム・ホランドや、オズボーン等他の科学者たちによってアパトサウルスの標本であると確認された。ホランドは1914年に米国古生物学会に提出されたリグスの学説を擁護したが、カーネギー博物館ではその頭を使わずにいた。彼はオズボーンとの対立を避けようとしていると思っていた人もいたが、ホランドは頭骨と骨格の関連性の確認を待っていたらしい[29]。ホランドの死後、1934年にカマラサウルス頭骨は博物館スタッフにより取り替えられた[30]。
イェール・ピーボディー博物館で、1931年に骨格が組み立てられた。その頭骨の特徴は全て他の種類のものだった。当時、ほとんどの博物館がカマラサウルスのキャストを使っていたが、ピーボディー博物館はそれとも完全に違う頭を複製した。下顎骨はカマラサウルスのものを基にしており、それ以外は1891年のマーシュのイラストに基づいていた。その頭骨は前に突き出た鼻骨をもっており、いかなる恐竜とも全く違っていた。また、側頭窓もイラストをもとにしており、どの頭骨とも違っていた[29]。
1970年に、ジョン・スタントン・マッキントッシュとデヴィッド・バーマンがディプロドクスとアパトサウルスの頭骨を再記載するまでアパトサウルス亜科の頭骨について言及されることはなかった。ホランドは自分の意見を発表したことはないが、ほぼ間違いなく、アパトサウルスとブロントサウルスはディプロドクスのような頭骨をもっていたことが分かっていたと、マッキントッシュらは述べた。彼らは、長い間ディプロドクスに関連すると考えられていた多くの頭骨は、アパトサウルスのものかもしれないとし、密接に関連する脊椎に基づいて複数の頭骨をアパトサウルスに再同定した[33]。1979年8月20日、マッキントッシュとバーマンによる記載の後、アパトサウルスの頭骨が初めて博物館の骨格に設置された。カーネギー博物館でのことである[30] 。1995年、アメリカ自然史博物館もそれに従い、骨格を組み立てなおした。ラベルもアパトサウルス・アジャクスに変えられ、尾と頭骨は A. louisae に基づいて復元された[31]。
20世紀のほとんどの古生物学者たちはリグスに全面的に同意し、アパトサウルスとブロントサウルスの種は全て単一の属に分類されると信じていた。国際命名規約に従い、より後に命名されたブロントサウルスは学術的な使用は無効であるとされてきた[34][35][36][37]。しかしながらロバート・バッカーは1990年代に A. ajax と A. excelsus は実際には属を分けるに十分なほど異なっていると主張した[38]。2015年に、エマニュエル・チョップ、オクタビオ・マテウス、ロジャー・ベンソンは、二属の関係について広範な研究を行い、ブロントサウルスは確かにアパトサウルスとは異なる竜脚類の有効属であると結論づけた。彼らは属と種の違いをより客観的に評価するための統計的手法を開発し、ブロントサウルスの有効性を指摘した。頸椎の背側の二股になった棘突起の間の幅が、ブロントサウルスではかなり狭いのに対し、アパトサウルスでは明らかに広くなっていることや、骨盤と頭骨の違いについてが指摘された。彼らは、2つの元アパトサウルスの種、A. parvus と A. yahnahpin をブロントサウルスに再分類し、ブロントサウルス・エクセルススをもとに戻した[6]。これに対しマイケル・デミック Michael D'Emic は批判を下した[12]他、Donald Prothero は、この研究に対するマスコミの反応を、表面的かつ早過ぎるものであるとして批判した[13]。
脚注
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