ウィリー・ウィリー
ウィリー・ウィリー(英語:willy willy)は、オーストラリアの主に北西部で塵旋風や砂嵐のことを指す先住民アボリジニの言葉[1][2][3]。
夏を中心とする時期のオーストラリアでは、サイクロン(cyclone)・熱帯低気圧を含む熱帯擾乱が大陸の北西から内陸部へやってくる。これに伴って塵旋風や砂嵐が発生するが、それを先住民がウィリー・ウィリーと呼んだ[1][3]。フォーテスキュー川(Fortescue River)流域に住むインジバルンディ族(Yindjibarndi people)の言葉だという[3]。
この言葉はかつて、熱帯低気圧を指すという誤解が通用しており、欧米でも古い教科書に記載がみられた[2][4]。
地理学者の小口高と財城真寿美の論文によると、現地オーストラリアでも1930年代ごろまで、大陸北西部や北部にやってくる熱帯低気圧を、気象局や新聞がウィリー・ウィリーと呼ぶようになっていた。しかし、1940年代以降は塵旋風や竜巻を指すよう用法が変化した[5]。そして現代のオーストラリア英語では、サイクロン(cyclone)の語を熱帯低気圧に用いる[3]。
一方、アメリカや日本などでは用法の変化が知られないまま古い誤解がしばらくの間残ったと考えられる[5]。
小口らによると、日本の高等学校用の地図帳では1970年代ごろから「オーストラリアの熱帯低気圧をウィリー・ウィリーと呼ぶ」旨の記載が始まったが、2000年代ごろから変更がみられるようになり、ウィキペディア日本語版でもこのころ記述の変更がみられた[5]。
なおwilly willyは、地名になっているウォガウォガのようにアボリジニの言葉によくみられる、同音を2度繰り返す重語のひとつに挙げられる[6]。また、mai-mai(元はmia-mia、鴨打ちが身を隠すところの意)などと並んでニュージーランド英語に移入されたアボリジニの言葉のひとつにも挙げられる[7]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b 図説世界の気候事典 2022, p. 208(著者:佐藤典人)
- ^ a b “willy-willy”. Glossary of Meteorology. American Meteorological Society (2024年3月29日). 2024年12月19日閲覧。
- ^ a b c d Peters 2007, p. 189.
- ^ “willy-willy”. Oxford Reference. Oxford University Press. 2024年12月19日閲覧。
- ^ a b c 小口 & 財城 2009.
- ^ Peters 2007, p. 76.
- ^ Peters 2007, p. 544.
参考文献
[編集]- 山川修治、江口卓、高橋日出男 ほか 編『図説 世界の気候事典』朝倉書店、2022年。ISBN 978-4-254-16132-8。
- 小口高、財城真寿美「ウィリー・ウィリーは熱帯低気圧ではない - 用語法の変化に乗り遅れた日本」『地理』第54巻第9号、古今書院、2009年9月、102-110頁、CRID 1521699230044977664。
- Peters, Pam (2007). The Cambridge Australian English Style Guide (2 ed.). Cambridge University Press. ISBN 9780521878210