ウィンザー公爵
ウィンザー公爵 Duke of Winsor | |
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創設時期 | 1937年3月8日 |
創設者 | ジョージ6世 |
貴族 | 連合王国貴族 |
初代 | エドワード王子 |
最終保有者 | エドワード王子 |
相続資格 | 初代公爵に与えられるが、その妻と子孫は相続除外。 |
付随称号 | なし |
現況 | 廃絶 |
断絶時期 | 1972年6月5日 |
ウィンザー公爵(ウィンザーこうしゃく、英語: Duke of Windsor)は、かつて存在したイギリスの公爵、連合王国貴族爵位。国王エドワード8世が1936年12月11日に退位した後、1937年3月8日に叙された[1]。爵位名はイギリス王室が所有するウィンザー城に由来する。
歴史
[編集]イギリス国王エドワード8世(1894-1972)[注釈 1]は離婚歴のあるアメリカ人女性ウォリス・シンプソン(1896-1986)との結婚を求めて退位することを決め、1936年12月10日、退位詔書に署名した。この時期、退位後の国王の身分や称号が問題となっており、前々日の8日、政府は閣議でこの件を議論し、細部を首相と王弟ヨーク公(のちジョージ6世)が近日中に詰める運びとなる[3]。
その後、爵位名「Windsor」を誰が最初に提案したかは不明だが、11日、ヨーク公、元国王秘書官初代ウィグラム男爵クライヴ・ウィグラム、クロード・シュースター大法官府次官らが称号問題を話し合ったことが判明している[4]。
エドワード8世は同11日に退位した[注釈 2][1][7]。その日の夕刻、ヨーク公から「(退位後の称号は)ウィンザー公はどうか」と訊かれた前・国王は「響きがよい」と了承したという[8]。
12日、新王ジョージ6世(1895-1952)は枢密院でエドワード8世をウィンザー公爵に叙することと殿下(Royal Highness)の敬称の使用を許可することを発表した[9][10]。その後、叙爵の特許状は1937年3月8日に発行された[1]。その年の5月、爵位継承について「公爵の妻とその子孫はその称号を保持しない」と官報掲示された[11]。
ウィンザー公は1937年6月3日にウォリス・シンプソンと結婚したが、2人の間に子供はおらず、1972年にウィンザー公が死去する[1] と爵位は廃絶した。
エリザベス2世(1926-)の孫にあたるヘンリー王子(1984-)とメーガン・マークル(1981-)の結婚直前、ヘンリー王子に与えられる爵位について新聞で考察が行われたが、エドワード8世の退位、2度離婚したアメリカ人女性ウォリス・シンプソンとの結婚、エドワード8世が第二次世界大戦前に親ナチスな態度をとった、といった負の記憶を想起させる理由で各紙ともにウィンザー公爵への叙爵はないと予想した[12][13]。2018年5月19日、ヘンリー王子のサセックス公爵への叙爵が発表された[14]。
ウィンザー公爵(1937年)
[編集]- ウィンザー公爵エドワード王子(1894年 – 1972年)
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ エドワード8世は即位前の1910年6月23日にチェスター伯爵とプリンス・オブ・ウェールズに叙され[2]、1936年1月20日の即位とともにこれらの爵位は王領に統合された。
- ^ 1936年エドワード8世退位法とエドワード8世の退位宣言では退位とともにイギリス王室としての権利も放棄するかを規定しなかった[5][6]。
出典
[編集]- ^ a b c d "The House of Saxe-Coburg-Gotha later Windsor (1901 - )". Cracroft's Peerage (英語). 17 June 2019. 2019年12月23日閲覧。
- ^ "No. 28387". The London Gazette (英語). 23 June 1910. p. 4473.
- ^ 水谷 (1995), p. 232.
- ^ 水谷 (1995), p. 233-234.
- ^ "His Majesty's Declaration of Abdication Act 1936" (英語). Government of the United Kingdom. 2015年3月31日閲覧。
- ^ "His Majesty's Declaration Of Abdication Bill" (英語). Parliament of the United Kingdom. 2015年3月31日閲覧。
- ^ 水谷 (1995), p. 231.
- ^ 水谷 (1995), p. 236,238.
- ^ "No. 34349". The London Gazette (英語). 12 December 1936. p. 8111.
- ^ 水谷 (1995), p. 238-239.
- ^ "No. 34402". The London Gazette (英語). 28 May 1937. p. 3429.
- ^ Scotti, Monique (19 May 2018). "A look at Harry and Meghan's new titles: Duke and Duchess of Sussex". Global News (英語). 2018年5月19日閲覧。
And then there was Windsor, which was a non-starter given that the last Duke of Windsor was the former King Edward VIII, who abdicated to marry another American divorcee, Wallis Simpson, and had some rather uncomfortable ties to the Nazis.
- ^ Davies, Caroline (19 May 2018). "Harry and Meghan to be Duke and Duchess of Sussex". The Guardian (英語). 2018年5月19日閲覧。
It was probably too early to bestow the title Duke of Windsor, as to do so would resurrect the memory of the Duchess of Windsor, Wallis Simpson, the last US divorcee to marry into the royal family, precipitating the abdication crisis of 1936.
- ^ "Prince Harry and Ms. Meghan Markle: Announcement of Titles". The Royal Family (英語). 19 May 2018. 2019年12月23日閲覧。
参考文献
[編集]- 水谷, 三公『イギリス王室とメディア - エドワード大衆王とその時代』(初版)筑摩書房、東京都台東区〈文春学藝ライブラリー〉、1995年。ISBN 9784168130557。