アバター
アバター、アヴァター (avatar) は、主にコミュニケーションで用いられる自分(ユーザー)の分身となるキャラクター像のこと。
特徴
[編集]アバターは、利用者であるユーザーに模した姿にされることがある一方、現実の自分と違う性別にしたり、カスタマイズした姿に合わせて性格を変えるなどして別の人間に「なりきる」など、ある種の遊びとしても機能する。無論、このような遊びやコミュニケーションの形はアバター出現以前から存在していたが、より視覚に訴えかけるアバターが出現したことから、容易になった。
基本的には感情などを直感的に相手に伝えるのに適しているが(アイコンという形でアバターの表情を変えられるサービスがついている)、従来の文字によるコミュニケーション(顔文字など)を強化する意味合いを持っている。
アバターを好んで使うのはライトユーザ層や初心者、それから10代の子どもを中心に好まれていたが[1][2][3]、近年はリモートワークの普及により一般社会でも浸透している。
アバターはWeb上のコミュニティで積極的に用いられており、これを作成すること自体は無料で出来る場合が多い。 モバゲータウンや似たようなサービスであるハンゲームなどは、ネットワークゲームを基本的に無料で提供し他の参加者とのコミュニケーションツールとして利用してもらい、多くのゲームにおいて自身を表すアバターのカスタマイズアイテムを有料化(アイテム課金)するという収入体系を持っている。
語源
[編集]サンスクリット語のアヴァターラ(avataara अवतार)は、インド神話や仏教説話の文脈で「(神や仏の)化身」の意味。「アバター」は、その(もしくはヒンディー語形アヴタールを英語表記したavatarの)西洋風の読み方で、概念が似ていることからネットワーク用語として転用されたもの。
仮想空間でのキャラクターとしての用法は、ニール・スティーヴンスンが1992年に発表した『スノウ・クラッシュ』に登場する仮想空間サービス「メタバース」内でユーザーの分身となるキャラクター像を「アバター」として呼称した例がある。
なおネットワーク以前には、コンピュータRPG『ウルティマ』シリーズにおいてプレイヤーが操作するキャラクターを「アバタール」と称した用例がある。
歴史
[編集]世界ではじめてアバターを使用したサービスは、1985年にルーカスフィルムのチップ・モーニングスターとランダル・ファーマーによって開始されたビジュアルチャット『ルーカスフィルムズ・ハビタット(Lucasfilm's Habitat)』である。
日本では、ルーカスフィルムズ・ハビタットの日本語版として1990年2月10日に富士通が大手パソコン通信ネットのNIFTY-SERVE(現@nifty)で開始したビジュアルチャット『富士通Habitat』(現『J-チャット』)が最初である。インターネットの黎明期(れいめいき)には、WCJ(疑似3Dチャット)とそのエンジンを利用したサービスなどが存在した。当初は現在e-Japan戦略で掲げられている電子政府・電子自治体の機能を、アバターを用いた仮想空間で実現することが構想されていた。
使用状況
[編集]アバターは、チャットの際にユーザの代わりに表示されるなど、その企業が提供しているサービスに、幅広く用いられることが多い。 例えば、
などなど、様々なサービスに用いられ、これ単体のみでサービス提供することは少ない。
また、これとは違うものとして、Appleが2010年2月9日に「オンラインストアでの訪問者の活動を表示する手法、システム、媒体」の特許を取得した。[4] アップルの説明によれば、オンラインストア上でアバターを表示させ、他の客との交流を楽しめるようにすることなどが提案されている。 これは、オンラインストアをアバターの視覚効果を利用してより現実に近付ける方法と言える。
モーションキャプチャー
[編集]アバターのもう一つの利用形態はビデオチャット/通話である。Skypeなどの一部のサービスでは(外部プラグインを介して)、ユーザーのカメラ画像をアニメーション化された会話アバターに置き換えることで、ビデオ通話中に会話アバターを使用することができる[5]。顔のモーションキャプチャとウェブカメラを使用することで、アバターはユーザーの顔の動きや表情を模倣するようにカスタマイズできる。これは、Star Citizenのようなゲームに直接統合したり、FaceRigのようなスタンドアローンのソフトウェアを通じて統合することができる[6][7]。
オンラインアシスタント
[編集]アバターは、実際の人間ではなく、人工知能によって多かれ少なかれ制御される、具現化されたエージェントの仮想的な具現化として使用することができる。自動化されたオンラインアシスタントは、この方法で使用されるアバターの例である。
その他
[編集]2023年8月、アバターの作成に人工知能が使われた プロゴルファーのチェ・ケンジュ、機械学習と音声合成技術を組み合わせたSKテレコムオープンの人工知能によって作られたテレビ局のアナウンサーであると紹介した[8]。
サムスンのギャラクシー・スマートフォンに搭載されているサムスンAR絵文字は、ユーザーが自分自身のアニメーションアバターを作成できる[9][10]。
大衆文化では
[編集]漫画や物語では、キャラクターがその作者をベースにしていることがあり、架空のバージョン[11](例:『ザ・シンプソンズ』のいくつかのエピソードに登場するマット・グルーニングのキャラクター)か、完全に架空のキャラクター(例:『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニー・グレンジャーは、J.K.ローリングが語っているように、彼女自身をベースにしている)のどちらかである。このようなキャラクターは、「作者サロゲート」や「作者アバター」と呼ばれることもある。
脚注
[編集]- ^ IT用語辞典e-wordsより
- ^ gooリサーチ 第8回ブロードバンドコンテンツに関する調査、「(4)アバターの利用経験は約4分の1-年齢別にみると、10代によるアバター利用率が高くなっており、半数近くがすでに何らかのアバターを利用したことがあるという結果になっている。(2007年10月4日報道発表資料) 2012年2月5日 閲覧
- ^ ITmedia ニュース「"モバゲーの手本"ハンゲームに聞く、アバター仮想世界の作り方」「ハンゲームで積極的にアバターを利用しているユーザーは、10代が中心。」(2007年8月13日 12時10分更新) 2012年2月5日 閲覧
- ^ Apple、アバターで買い物できるバーチャルストアの特許取得
- ^ “Become anyone in your Zoom and Skype calls with this AI tool”. www.windowscentral.com. 2023年12月20日閲覧。
- ^ “U.S fund invests USD 2 mln in Romanian animation software developer”. www.romania-insider.com. 2023年12月20日閲覧。
- ^ “This is the easiest way to pretend to be an octopus pretending to be a human”. www.vg247.com. 2023年12月20日閲覧。
- ^ “DeepBrain AI creates 'virtual human' version of pro golfer K.J. Choi for SK Telecom Open”. www.deepbrain.io. 2023年12月20日閲覧。
- ^ “Everyone’s making digital avatars, and none of them are great”. www.theverge.com. 2023年12月20日閲覧。
- ^ “Galaxy AR Emoji SDK for Unity”. developer.samsung.com. 2023年12月20日閲覧。
- ^ “Cartoon Characters You Didn't Know Were Inspired By Real People”. www.looper.com. 2023年12月20日閲覧。