アイヌモシリ
アイヌモシリ(アイヌ語ラテン文字表記:アィヌモシㇼ、アイヌ語ラテン文字表記: aynu mosir)は、アイヌ語で「人間の大地」を意味する言葉。また16世紀以降で、北海道周辺を指すアイヌ語の地名[1]。
概要
[編集]アイヌ民族は自分たちの生活圏をアイヌモシリと呼んだ[2]。カムイモシリ(カムィモシㇼ(kamuy mosir)、神々の住まう地)やポクナモシリ(アイヌ語仮名表記:ポㇰナモシㇼ、あの世・冥界)との対比においては「人間の地、現世」を意味する。
また、アイヌモシリは「アイヌの大地」「アイヌのくに」とも解され、北海道周辺・樺太南部・千島列島など古くからのアイヌの居住地(アイヌ文化圏)も指す。
対となる語に、カムイモシリ(アイヌ語仮名表記:カムイモシㇼ(kamuy mosir)、神の住むところ)がある。また本州をシサムモシリ(アイヌ語仮名表記:シサㇺモシㇼ(sisam mosir)、隣人の島)、サモロモシリ(アイヌ語仮名表記:サモㇿモシㇼ(samor mosir)、隣の島)と呼んだ。
「モシㇼ」は「大地」「国土」「世界」などと訳される言葉であるが、これをさらにモ・シㇼ(mo-sir)と分解し、モに「静かである」という意味があることから「静かな大地」と訳されることもある。
アイヌモシリに関連する伝説
[編集]古来、アイヌ民族に伝えられてきた神話(アイヌラックル)に、アイヌモシリに関して次のような伝承がある。
未だこの地上になにものも存在しない頃、神々が集まってきて、人びとの調和する大地、アイヌモシリを創るための相談をした。モシリ・カラ・カムイ(大地・創造・神)という男神、イカ・カラ・カムイ(花・創造・神)という女神がそれぞれ、大地創造のために降臨された。
この2人の神はレェプ・カムイ(犬神)とコタン・コロ・カムイ(梟神)と共にアイヌモシリを創った。モシㇼ・カラ・カムイは山や野原、川をつくり、イカ・カラ・カムイは樹木や美しい草花をつくったあと、今度は粘土を使ってクマやウサギなどの動物達を創っていった。最後に、2人の神は互いに似せた男女をつくった。
アイヌモシリの創造が終わると、高い山の上の広い平原(シノッ・ミンタラ)にほかの神々が訪れ、見事に出来上がったアイヌモシリを見て喜びあった。
アイヌ(人間)は、初め洞窟に住んでいたが、やがて、シノッ・ミンタラに姿をあらわして神々と交流するようになり、神々に踊りや歌、言葉を教わった。やがてアイヌは神の生活をまねて地上に家を建て、火や道具を使って住むようになった。