おたんちん
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(おたんこなすから転送)
おたんちん(御丹珍[1])は、日本語で人を嘲るときに使う単語。おたんこなす[2](おたんこ茄子[3])およびおたんち(お丹珍)[4]は同義語。語源について、『新編大言海』は「ぼたもちづら(牡丹餅面)の略訛」という説を挙げる[5]。また、「ちん」は愛称に付く接尾辞で「-ちゃん」「-やん」[6]と同義であるという説もある[2]。
寛政から享和にかけて、新吉原で嫌な客を指して言った[2]業界の流行語である[7]。1920年の文献に、東京の方言である旨記載がある[8]。
意味
[編集]その他
[編集]- いくつかの国語辞典は見出し語として採録していない。米川明彦は、今では意味を知る人も少なく、語源も不明な言葉は消えていく運命にあるとする[12]。
- 「おたんちん」の略語である「おたんち」に、語呂をよくするため「こ」を付け、さらに「茄子」を付けたのがおたんこなすの語源である。ナスは畑に大量にある有象無象であることから、そこらにいくらでもあるという罵りの意味を込めた[3]。
- 夏目漱石の小説『吾輩は猫である』(執筆は1905年 - 1906年)には、「おたんちん」を東ローマ帝国最後の皇帝コンスタンティノス11世パレオロゴス(英語での綴りからの読みで「コンスタンチン・パレオロガス」)に引っかけた「オタンチン・パレオロガス」という地口が、登場人物の台詞として使用されている[13][14][15]。
出典
[編集]- ^ 東京語辞典 1917, p. 42.
- ^ a b c 日本国語大辞典 2001, p. 1196.
- ^ a b 絵解き・江戸っ子語辞典 2003, p. 70.
- ^ 木村義之, 小出美河子 編『隠語大辞典』(第一版第一刷)皓星社、2000年4月15日、205頁。ISBN 4-7744-0285-0。
- ^ a b 新編大言海 1982, p. 333.
- ^ 関西で
- ^ 前田勇 編『江戸語大辞典』(第一刷)講談社、1974年1月25日、189頁。 NCID BN01739202。
- ^ 自笑軒主人『秘密辞典』千代田出版部、東京市京橋区北紺屋町、1920年6月9日、47頁。doi:10.11501/962110。
- ^ 東京語辞典 1917, p. 42-43.
- ^ 米川明彦 編『日本俗語大辞典』(初版)東京堂出版、2003年11月10日、116頁。ISBN 4-490-10638-6。
- ^ 楳垣実 編『隠語辞典』(二十六版)東京堂出版、1977年1月30日、83頁。ISBN 4-490-10008-6。
- ^ 米川明彦『俗語百科事典』(初版第1刷)、2021年7月1日、211-212頁。ISBN 978-4-254-51068-3。
- ^ 夏目漱石『吾輩は猫である』(改訂第1刷)岩波書店〈岩波文庫〉、1990年4月16日、166頁。ISBN 4-00-310101-4。
- ^ 久野昭「漱石の揶揄」『かわら版 哲学たいけん』第35号、碧南市哲学たいけん村無我苑、2014年3月1日、2023年10月20日閲覧。
- ^ 益田朋幸「閉会の挨拶」『総合人文科学研究センター研究誌 WASEDA RILAS JOURNAL』第3号、2015年10月21日、ISSN 2187-8307、NAID 120005754750、2023年10月20日閲覧。
参考文献
[編集]- 大槻文彦, 大槻清彦 編『新編大言海』(新編版第三刷)冨山房、1982年5月10日(原著1956年)。 NCID BN00807191。
- 『日本国語大辞典 第二版』 第二巻(第一刷)、小学館、2001年2月20日。ISBN 4-09-521002-8。
- 小峰大羽 編『東京語辞典』新潮社、1917年10月15日、42-43頁。doi:10.11501/956382。
- 笹間良彦『絵解き・江戸っ子語辞典』(第1刷)遊子館、2003年12月16日、70頁。ISBN 4-946525-55-6。