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Wikipedia:あらすじの書き方

あらすじの書き方から転送)

現在ウィキペディアの中には、文学作品や映画、漫画などの創作作品の記事が多数あり、多くの場合これらの記事には作品内で描かれている物語のおおまかな記述(あらすじ)が含まれます。このページでは、そうした記述をあたえる際の基本的な留意点について解説しています。

以下の解説は作品記事の大部分に当てはまるものとして書かれています。しかし物語にはさまざまな種類、ジャンルがあるため、以下の解説がうまく当てはまらないものも存在します。ですから単一の基準を当てはめるのではなく、個別の作品ごとに良識に沿う判断を行ってください。

基本的な考え方

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あらすじとは、物語のあらゆる場面、あらゆる出来事に触れるものではありません。物語のなかのあらゆる事物や出来事をすべて収録しようとすることは、ウィキペディアの目的ではありません。ウィキペディアにおける作品記事の目的は、物語の内容を網羅することではなく、その作品をわかりやすく解説し、それが現実社会のなかでどのように位置づけられる作品かを伝えることにあります。

オンライン書店や映画の公式サイトなどで見られるような「宣伝的なあらすじ」の書き方をまねるべきではありません。こうした場所に書かれているあらすじは一般に、作品への興味をあおり購買意欲をそそることで商品の販売を促進する意図で書かれており、作品のごくはじめのほうの展開しか説明されておらず、物語のいちばん肝心な部分(ネタバレ)は伏せられています。あるいは大げさで感情的な言葉を用いて、作品の魅力を前面に押し出そうとします。ウィキペディアの記事では、そのような書き方をすべきではありません。物語の魅力を読者に宣伝するのではなく、抑制された客観的な言葉を用いて、読み手が物語全体の展開や重要な特徴をバランスよく理解できるように配慮してください。

あらすじの文体

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現在形をベースにする

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あらすじの文体は現在形史的現在)をベースにするのが慣例です。この書き方は、「今」が刻々と生起していくという物語一般の性質に沿ったもので、また「物語内の出来事を現実世界の出来事とはっきり区別させる」ことにも有効だと考えられます。もっとも「・・・する。・・・する。」の連続では単調になってしまうので、場合に応じて完了形(・・・た。・・・した。)を混ぜるなどしてもかまいません。

また、物語展開の説明が劇中の時系列にたいして前後するときには、現在形以外の時制を使う必要も出てくるでしょう。そのさいには、説明の理解のしやすさを第一に考え、先の原則を柔軟に適用してください。

大げさな修辞は使わない

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宣伝的なあらすじでよく見られるように、大げさな修辞を使い、あらすじ自体を飾り立てようと意図することは避けてください。また作品自体のもつ劇的効果を、説明において再現する必要はありません。あらすじはあくまで「解説」の一種であり、「作品の縮小版」ではないからです。例えば、シリアスな作品だからといって、あらすじで悲壮感を醸し出すべきではありませんし、コメディタッチの作品だからといって、故意におどけた書き方をすべきではありません。

特別な意味なく、文末に三点リーダー(…)を使って含みを持たせようとしたり、感嘆符(!)や疑問符(?)を地の文に使用して感情的な強調を行ったりするのは避けてください[注 1]体言止めも多くの場合は文体に勢いを持たせるために使われるもので、あらすじではまず必要ないでしょう。

その他どのような表現を避けるべきかは、ウィキペディア日本語版全体のガイドラインであるWikipedia:大言壮語をしないWikipedia:言葉を濁さないがある程度参考になるでしょう。

具体的な書き方

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セクションを設ける

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ウィキペディアでは多くの場合、あらすじは記事の中で「あらすじ」「ストーリー」「物語」などのような見出しを持つセクションを設けて書かれています。セクションの位置は記事の先頭に置かれることが多いようですが、特にそうと決まっているわけではありません。特に古典作品などの場合では、作品の成立事情などを先に説明したほうが、うまく物語を説明できるような場合もあるでしょう。

また、このようなセクションがすべてのフィクション作品の記事に必要なわけでもありません。たとえば『サザエさん』のように、一話完結式のシリーズで、かつ長い期間にわたって登場人物同士の関係に変化がなく、各エピソード間に顕著な連携がみられない作品では、物語全体を通覧できるような、まとまったあらすじを書くことは難しいでしょう。こうした作品では記事の導入部や概要、あるいは解説などのセクションでそのような作品であるという説明を行い、作品内容の基本設定がおおまかに理解できるようにしてください。

出来事の順番にこだわらない

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あらすじでは、もとの物語に出てくるのと同じ順番で出来事の説明を行う必要はかならずしもありません(もちろん、物語に登場するとおりの順序で説明を行ったほうがうまくいく場合も多々あります)。そのほうがうまく説明できると思ったら、物語を整理しなおしてください。たとえばもとの物語では後で説明されている物語上の設定を、あらすじでは先に説明してもかまいません。

特に、複雑に入り組んでいる物語や、実験的な方法で構成されている作品などの場合では、こうした方法が有効になります。このような複雑な作品の場合、その複雑さをあらすじでそのまま再現しようとするべきではありません。「そのように書かれている物語である」ということを文章で説明し、あらすじ自体はできるだけわかりやすく整理したものを提示してください。

参照や見出しをつける

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「第一巻では・・・」、「第一章では・・・」、「第三話では・・・」というふうに参照や見出しをつけることによって、具体的な作品構成を示すこともできます(特に長い作品では有効ですが、あまり細かく行いすぎて煩雑にならないようにしてください)。

他人のあらすじを参考にする

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公式サイトのあらすじやファンサイトのまとめなどを参考にすることも、その物語の要点を絞るために役立つでしょう。しかしもっぱらこのような他の人がまとめたあらすじだけをもとにしてあらすじを書くと、しばしば物語の多くの重要な細部が書き落とされたり、物語全体の文脈や構造が見失われたりします。他人がまとめたあらすじを参考にしながらあらすじを書くときでも、必ず同時に作品そのものを参照して物語を確認するようにしてください。

ただし、このような公式サイトやファンサイト、情報誌や研究書など他人の著作で書かれている文章を丸写しにしたり、あるいは多少ことばを入れ替えただけのものを記事に書くことは著作権の侵害となりますので、決してしないようにしてください。

注釈を行う際の注意点

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必要があれば、あらすじの中で作品に対する注釈を行うことも可能ですが、しかし独自研究にならないよう、非常に注意をはらって行わなければなりません。たとえば物語に存在するプロット上の矛盾などを指摘するためには、信頼できる情報源に基づく確固たる出典が必要です。

一般的に物語についてのこうした注釈は、「テーマ」「解題」「分析」などのような、作品外の視点から作品を解説しているセクションで行うほうがよいでしょう。いずれにしても、あなた自身の感想や見解、推測を記事の中に記述してはいけません。作品の分析や評価を記すときには必ず批評家や研究者の論評を出典とする形で行ってください。

適切な長さ

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あらすじの長さに規定はありませんが、あらすじは極端に長くならないようにしてください[注 2]。長いあらすじは一見、多くの情報を読者にもたらすように思われるかもしれませんが、実際は読者に読むことを困難にさせ、またどこが作品の要点であるのかをわからなくさせてしまい、結局のところ読者にとってまったく役に立たないということになりがちです。

一方、あまりに短すぎるあらすじも問題です。たとえば『オデュッセイア』のあらすじを書くのに、「オデュッセウスはトロイア戦争からの帰途、さまざまな困難に出会うが、持ち前の機知で切り抜けて帰国し、国を乗っ取ろうとする男たちを殺して妻子との絆を新たにする」とするだけでは、作品の中の重要で特徴的な過程がほとんど何もわかりません。こういう場合、「さまざまな困難」を簡潔な方法で具体的に記したとしても、あらすじの焦点が拡散して読者の理解を妨げたりすることにはならないでしょう。

あらすじの長さは、必ずしも作品それ自体の長さに比例するわけではありません。長い作品であってもプロットが一直線で単純であればあらすじはさほど長くならないでしょうし、短い作品でも緻密で複雑なプロットであればあらすじもある程度長くなるでしょう。物語の重要な三要素は、「プロット」(筋)、「キャラクター」(人物)、「テーマ」(主題)です。この三つのどれかを理解する助けにならず、また作品の特徴的な部分として広く知られているわけでもないような瑣末な詳細は、あらすじから省略してください。

非常に長い作品の場合

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何十巻も刊行されている大河小説のような非常に長い作品の場合、あらすじはどうしても長くなってしまうかもしれません。そのような場合、あらすじのセクションのなかに物語の内容に沿った適度な区切りをサブセクションによって設け、可読性を維持するようにしてください。このように長いあらすじを持つ記事の場合には、記事の導入部や概要に、物語の内容を知ることができるより簡潔なあらすじを入れておくことが推奨されます。

あらすじがどうしても長くなり記事全体の構成を損なってしまうような場合には、あらすじのセクションを独立した記事として分割することもできます。そのような場合でも、普通の長さの作品記事にある程度の長さの簡潔なあらすじを残しておくことによって、その詳細な子記事を見なくとも物語の内容が理解できるようにし、分割元の記事の体系性、包括性が損なわれないようにしてください。

ただし、あらすじの分割は非常に稀なケースであるべきです。あらすじがあまりに長いときは、まずは瑣末な情報を詰め込みすぎていないかを確かめてみてください。

ネタバレの扱い

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百科事典としての性質上、ウィキペディアにはネタバレが含まれます。また編集者はネタバレに対して特別な配慮を行う義務を負いません[注 3]。その情報が作品の持つ重要性を説明し、あるいは物語全体の構造を説明するのに必要なものなのであれば、ネタバレを記述することに躊躇しないでください。またそれがネタバレであるからという理由で、記事から記述を除去したり、意図的にその情報を省略したりするべきではありません。

たとえば、ある重要な推理小説があると仮定してみましょう。一般に推理小説のネタバレ、つまりトリックや犯人などの真相といったものをその作品自体を読む前に知ることは、その小説の読書体験を致命的に損なうことになると考えられます。しかし、もし百科事典の記事の中でトリックや犯人などの情報が伏せられていたら、事典の読者はその作品について具体的にどのような点で画期性があるのか何もわからず、したがってその作品に付されている内外の論評を理解することもできないし、その作品の歴史的な重要性を十分に理解することもできないでしょう。作品の重要な詳細を伏せたまま作品を紹介することは、公式サイトや販売サイトの役割であり、そもそも百科事典の役割ではないのです。

もっとも、あらすじにおける情報の取捨選択には熟慮を要します。ネタバレを書いてよいからといって、物語の流れや作品の重要性となんら関わりのない、ただのネタバレにしかならないような瑣末な細部をあらすじに記すべきではありません[注 4]。また、ただ読者にネタバレを言いふらすことを目的とするような編集を推奨しているわけではありません。物語のネタバレは、記事の中では物語の流れ全体を説明するための文脈に位置づけられているべきものであり、ただ作品内容を網羅したり、読者に暴露することを目的としてなされるべきものではないでしょう。

登場人物節との関係

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ウィキペディアにおけるフィクション作品の記事の中では、あらすじを説明するセクションとは別に登場人物を説明するセクション(「登場人物」や「登場キャラクター」のような見出しを持つもの)が設けられている記事が多数あります。そのほうがうまく物語を説明できるような場合には、もちろんこのようなセクションを設けることになんの問題もありません(もっとも、すべての作品記事に必要なわけでもありません)。たとえば、物語に深く関与する登場人物が多数いるために、あらすじのセクションの中では詳しい説明が困難な場合や、それぞれの登場人物が重要なサブ・プロットを持っているような場合には、登場人物欄を設けたほうがうまく作品を説明できるでしょう。

しかしながら、現在の日本語版では、このような登場人物欄が個別のエピソードで膨れ上がっていく一方、本来されるべきあらすじの説明はほんの数行しかない、という記事が多数存在するということがあります。こうした記事ではしばしば「あらすじ」では作品のごく始めの部分しか書かれておらず、物語の重要な展開は登場人物節を読まなければ何もわからない構造になってしまっています。

作品を主題とした記事を作る以上は、作品の内容は「あらすじ」節において物語全体の構造を示しながら説明すべきであり、登場人物欄はあくまでその補足であるべきです。あらすじの記述は、たとえ登場人物節の記述をまったく読まなかったとしても、その物語の全体的な流れを理解できるように記述してください[注 5]。この場合、あらすじの内容と登場人物節の内容とはある程度重複してもかまいません。

最後に

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以上でウィキペディアにおいてあらすじを書く際の注意事項を説明しました。しかし「基本的な考え方」で述べたように、ウィキペディアにおける作品記事の目的は、それが現実社会のなかでどのように位置づけられるかを読者に理解させることにあります。したがって記事の中では、あらすじや登場人物など、作品内容の解説があるだけでは不十分です。記事を書く際には、その作品の成立や発表の経緯、その作品に対する専門家の批評、社会的影響など、その作品に関わる作品外部の情報をしるし、作品内の情報との間でバランスを取ってください。もし作品内容のほかにさほど書くことがないようなものであれば、その作品を記事にすることはさしあたり思いとどまったほうがよいかもしれません。

注釈

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  1. ^ 必要があって作中の台詞や文章を引用しているような場合はもちろん例外です。
  2. ^ 英語版では、3-4段落(小説)、400語から700語(映画)、200語以下(TV番組のエピソードリストの中の1エピソード)、400語以下(TV番組の1エピソードごとの記事)。(いずれも単語数であって文字数ではない)のように、分野別のウィキプロジェクトごとにあらすじの長さの目安が設けられているものがあります。
  3. ^ 記事内のネタバレの存在に注意を促すテンプレートは、百科事典的でないものとして廃止されました。
  4. ^ このような細部まで書かれた(しばしば非常に長い)あらすじは、多くの場合執筆者が自分の作品体験をそのまま再現しようとすることによって書かれます。しかし「基本的な考え方」にも示したように、あらすじで必要なのは作品の魅力を伝えることではなく、作品の説明を行うことなのです。ウィキペディアの記事は作品の代替物ではないのだということを忘れないようにしてください。
  5. ^ とはいえ、登場人物節を持つ作品記事で、そのセクションが肥大化したために登場人物欄を独立した記事として分割する場合には、分割元の体系性が損なわれないよう、特に主要な人物の基本的な情報を残すようにしてください。分割元の記事と子記事との間である程度記述が重複してもかまいません。

関連項目

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