幸福会ヤマギシ会
幸福会ヤマギシ会(こうふくかいヤマギシかい)とは、農業・牧畜業を基盤とした理想社会をめざすコミューン団体。社団法人。通称は「ヤマギシ会」「ヤマギシ」。1953年(昭和28年)、山岸巳代蔵(1901~61)の提唱する理念の社会活動実践母体「山岸会」として発足し、1995年(平成7年)に名称を「幸福会ヤマギシ会」と変更。 「無所有一体」の生活を信条とするため、参画するには一切の財産を会に供出する誓約が求められる。
沿革
草創期
1953年に山岸巳代蔵によって作られた養鶏改良の団体「山岸式養鶏普及会」(通称:山岸会)が始まり。山岸巳代蔵は鶏糞による米の増産と、そのころまだ貴重であった鶏卵の増産を目指す篤農家であった。
1956年に後述する第一回の特別講習研鑽会が行われ、1958年に活動の拠点として三重県伊賀市に位置する春日山実顕地の開拓が始まり、農業系コミューンとしての基礎が形成された。
成長期
1959年に世界急進Z革命団山岸会と改名した。
1961年には創設者の山岸巳代蔵が亡くなり、ヤマギシ会は大きな危機を迎えた。その後1968年頃より始まった全共闘時代にコミューン運動としてヤマギシが捉えられ、従来の農家出身者に代わり、学生運動経験者などの先鋭的な左翼思想を持った若者が多数加入した。 特講を受講した哲学者の鶴見俊輔は、ヤマギシ会にベトナム戦争の脱走アメリカ兵を長い間預かってもらったと語っている。
1980年代は、子育て問題や環境問題などに関心の高い人たちに農村体験、循環型社会のモデルとして受け入れられ、急速に勢力を伸ばし世界最大の農業系コミューンとしての地位を確立した。
現在、日本各地に32箇所、ブラジルやスイス・韓国などの日本以外の国に6箇所の合計38箇所の地に実顕地がある。
活動
特講と呼ばれる特別講習研鑽会は一週間の合宿形式で、ヤマギシズムの理念や思想を体験的に知るために参加者全員が車座になってひとつのテーマを深く議論する「研鑽会」が主であり、特講を受講しヤマギシ会[1]会員の資格を得た人々は、各自の意思でヤマギシ会会員となり、幸福社会を共につくる活動を全国各地で行っている。
特講でヤマギシズムの思想に共鳴し、研鑽学校を経て参画を決意した場合、ヤマギシズム生活実顕地[2]に「参画」することができる。実顕地における生活は私財をひとつ財布に入れ共に研鑽生活を営むことが柱となっている。
実顕地の経済は、各実顕地で生産された農産物の販売による利益が中心である。1988年に設立したブラジル実顕地では1991年から開拓が始まった1000haに及ぶオレンジ園があり、秋田県大潟村では水稲栽培、80万羽規模の採卵養鶏など大規模農業にシフトしている。
経営形態は、野菜や各種畜産から販売を組み合わせた複合農業であり、国内最大規模の農事組合法人となっている。
ヤマギシズム実顕地は、点在する海外6カ国と国内合わせて36の実顕地によって構成されている。 各地の実顕地は、ヤマギシズム理念のもとに「金の要らない仲良い楽しい村」として、真の人間社会を営むための精神性を重視した農村建設に着手し、その地域に適した産業や社会活動[3]を行い、それぞれの実顕地ごとの特性を活かして相互に交流しながら経営・運営している。
ジャーナリストの斎藤貴男はこのような活動を自著『カルト資本主義』において、日本企業のユートピアであると評している。また、ヤマギシ会の思想と論理を吉本隆明は自著『中学生のための社会科』において、「大なり小なり政治的(つまり社会集団的)理念と論理に関わりをもつ思想ははじめから開かれていなければ『ユートピア』社会を作り得ない」とレーニンやスターリンの失敗例を挙げて痛烈に批判した。
ドイツ
1996年、ドイツ連邦政府はすべての州と協力し、パンフレット"ドイツ連邦共和国のいわゆる若いセクトと精神性グループ"(Sogenannte Jugendsekten und Psychogruppen in der Bundesrepublik Deutschland)を作成し、当時増加傾向にある新宗教団体などをあげた。その中にヤマギシ会が掲載された。[4] ヤマギシ会は、「ヤマギシ (スピリチュアルと環境の要素を持った日本の新宗教)」 Yamagishi (Japanische Neureligion mit spirituellen und ökologischen Elementen)と紹介された。
脚注
- ^ http://www.koufukukai.com/
- ^ http://www.yamagishi.or.jp/
- ^ http://www.mula-net.com/
- ^ Bundestags-Drucksache 13/4132: Antwort der Bundesregierung auf die Kleine Anfrage Drucksache 13/3712 (1.Welche Gruppierungen zählt die Bundesregierung zu den sog. Jugendsekten oder Psychogruppen, und welche dieser Gruppierungen treten z.Z. verstärkt in Deutschland in Erscheinung?) AGPF(Aktion für Geistige und Psychische Freiheit; 精神的・心理的自由のためのアクション) 1996年3月15日 2009-9-19閲覧 "ドイツ連邦政府はすべての州と協力し、パンフレット"ドイツ連邦共和国のいわゆる若いセクトと精神性グループ"(Sogenannte Jugendsekten und Psychogruppen in der Bundesrepublik Deutschland)を作成した。以下のグループ、団体を含む:"(Die Bundesregierung hat in Kooperation mit allen Bundesländern den Entwurf einer Informationsbroschüre »Sogenannte Jugendsekten und Psychogruppen in der Bundesrepublik Deutschland« erarbeitet, in den u. a. die nachfolgenden Gruppierungen und Organisationen aufgenommen wurden:)
関連項目
参考文献
- 黒田宣代 『ヤマギシ会と家族 近代化・共同体・現代日本文化』 ISBN 4905849438
- 近藤衛 『ヤマギシ会見聞録』 ISBN 9784875347293