ワラセア
ワラセアは、生物地理学的な 区分で、水深の深い海峡 によってアジアともオーストラリア大陸の大陸棚とも隔てられたインドネシアの島嶼の一群を指す語。
ワラセアは、スンダランド(マレー半島, スマトラ, ボルネオ, ジャワ島, バリ) の東側でオーストラリアやニューギニアを含むニアー・オセアニアの北側、西側に位置する。 ワラセアの陸地面積の合計は347,000 km²である。
スラウェシ 州 |
ハルマヘラ島を含む北マルク州 |
アルー諸島を除くマルク州 | |
西ヌサ・トゥンガラ州 (ロンボク島, スンバワ島) |
東ヌサ・トゥンガラ州, コモド島, フローレス島, スンバ島, 西ティモール、東ティモール (独立国)を含む |
地理
スンダランドとワラセアの境界は、その両側での哺乳類と鳥類の動物相の違いについて記述したアルフレッド・ラッセル・ウォレスにちなみ、ウォレス線と呼ばれる。スマトラ,ジャワ,バリ,ボルネオを含むウォレス線の西側のスンダランドの島々は、アジアとよく似た、トラ、猿、サイを含む哺乳類の動物層をもっていることで共通している。
氷河期の間、海面は低下し、スンダ棚が露出しておりワラセアの島々とアジアは繋がっていた。[1]その間に、アジアの陸棲動物がこれらの島々に移り住むことが可能になった。ワラセアの島々には、大陸由来と考えられ、しかし海を自力で渡ることは困難と考えられるいくつかの種の陸棲哺乳類、地上棲鳥類、淡水魚が生息している。 多くの鳥、爬虫類、昆虫は、比較的困難を伴わずに海峡を越えることも可能であり、そのようなオーストラリアやアジア由来の種が、ワラセアで発見されている。植生は、圧倒的にアジア由来のものが支配的であり、植物学的にはスンダランド、ワラセア、ニューギニアを含む領域をマレシア植物地理区と呼ぶ。[2]
同様に、東側のオーストラリアとニューギニアは、浅い大陸棚によって接続されている。これも過去の氷河期の時代には、陸橋によってつながっており、各分野の科学者がオーストラリア-ニューギニア、マガネシア、またはSahulなどと呼ぶ単一の大陸を構成していた。その結果、オーストラリア、ニューギニア、アルー諸島には、ワラセアに生息しない多くの有袋類、陸棲の鳥、淡水魚が生息している。ワラセアと、オーストラリア、ニューギニアを分ける線はリチャード・ライデッカーにちなみ、ライデッカー線と呼ばれる。フィリピン(スンダランドの一部とされるパラワンを除く)は通常、ワラセアとは切り離された領域と考えられているが、ワラセアに含めることもある。[3] ウェーバー線は、アジアとオーストラリアの動物相と植物相をおおよそ同程度に分ける中間線であり、インドネシア諸島を横断する最も深い海峡と重なっている。
生物地理学
ワラセアは、単に隣接する地域からやってくる生物種による遷移領域とみなされていることも多いが、実は、ワラセアは多くの固有の種分化とそれに比例して多くの固有種が存在するユニークな領域でもある。そのことがインドネシア諸島の巨大な生物学的多様性に寄与している。[4]
ワラセアの動植物の離れた祖先は、アジアまたはオーストラリア-ニューギニアからやってきたにも関わらず、ワラセアには、現在多くの固有種が土着している。多くの島がそれぞれ深い海によって隔てられているため、途方もなく大きい種の多様性が存在している。 コンサベーション・インターナショナルは、ワラセアを生物多様性ホットスポットに指定している。
ワラセアは、もともとほとんど完全に森林地帯であり、ほぼ全域がtropical moist broadleaf forestsで、いくらかの地域がtropical dry broadleaf forestであった。高地には 低山性と亜高山性の森林があり、海岸ではマングローブ林がある。
コンサベーション・インターナショナルによれば、ワラセアに生息する10000種の植物のうちおよそ1500種(15%)が固有種である。固有率は、陸性脊椎動物において高く、1142種の発見された陸性脊椎動物のうちおよそ半数の529種が固有種である。
ワラセアのほとんどの領域は森林であった; 45%の領域はなんらかの森林被覆があり、52,017 km(15%)がほぼ原生林となっている。 ワラセアの全領域は347,000 kmであり、そのうち、およそ20,000 kmだけが保護されている。絶滅危惧IA類、絶滅危惧IB類、絶滅危惧II類に分類される82種と絶滅危惧IA類に分類される6種の陸性脊椎動物が、ワラセアに生息している。
ワラセアの生態地域
Tropical and subtropical moist broadleaf forests
- Banda Sea Islands moist broadleaf forests (Kai Islands, Tanimbar Islands)
- Buru rain forests (Buru)
- Halmahera rain forests (Halmahera, Morotai, Obi Islands, Bacan Island)
- Seram rain forests (Seram, Ambon Island, Saparua)
- Sulawesi lowland rain forests (Sulawesi, Banggai Islands, Sula Islands, Sangihe Islands, Talaud Islands)
- Sulawesi montane rain forests (Sulawesi)
Tropical and subtropical dry broadleaf forests
- Lesser Sundas deciduous forests (Lombok, Sumbawa, Komodo, Flores, Alor)
- Sumba deciduous forests (Sumba)
- Timor and Wetar deciduous forests (Timor, Barat Daya Islands, Banda Islands, Babar Island, Leti Islands)
Distribution between Asia and Australasia
Australia may be isolated by sea, but technically through Wallacea it can be zoologically extended. An example of evidence for when Wallacea formed exists in a fossil site called Bluff Downs in northern Australia. Remains of basaltic lava show past oceanic subduction as Australia ploughed north through the Pacific. At the site, one of the earliest Australian rodent fossils have been found. Australia's rodents make up much of the continent's placental mammal fauna and include various species from stick-nest rats, hopping mice, and even giant beaver rats. Other mammals invaded west. Two species of cuscus from Sulawesi are among the most primitive possums in the world and the only marsupials in Asia.
Birds have expanded their range to and from Australia. Crows and shrikes invaded south into New Guinea and some into the Australian continent. Bustards and megapodes must have somehow colonized Australia. Cockateels similar to those from Australia inhabit Komodo Island in Wallacea.
脚注
- ^ http://www.fieldmuseum.org/research_collections/zoology/zoo_sites/seamaps/mapindex1.htm Pleistocene Sea Level Maps
- ^ マレシア(Malesia)はしばしば国名のマレーシア(Malaysia)と混同されるが、植物地理学上の呼称である。マレシア植物区とも訳される。
- ^ http://actazool.nhmus.hu/48Suppl2/newwallace.pdf
- ^ http://www.irgltd.com/Resources/Publications/ANE/2004-02%20Indonesia%20Biodiversity%20and%20Tropical%20Forest.pdf page 3-2
参考文献
- Abdullah MT. (2003). Biogeography and variation of Cynopterus brachyotis in Southeast Asia. PhD thesis. University of Queensland, St Lucia, Australia.
- Corbet, GB, Hill JE. (1992). The mammals of the Indomalayan region: a systematic review. Oxford University Press, Oxford.
- Hall LS, Gordon G. Grigg, Craig Moritz, Besar Ketol, Isa Sait, Wahab Marni and M.T. Abdullah. (2004). Biogeography of fruit bats in Southeast Asia. Sarawak Museum Journal LX(81):191–284.
- Wilson DE, Reeder DM. (2005). Mammal species of the world. Smithsonian Institution Press, Washington DC.
外部リンク
- Conservation International: Wallacea
- Too Many Lines; The Limits of the Oriental and Australian Zoogeographic Regions George Gaylord Simpson, Proceedings of the American Philosophical Society, Vol. 121, No. 2 (Apr. 29, 1977), pp. 107–120
- map of Wallace's, Weber's and Lydekker's lines
- http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsos/rep20thc.html 日本オセアニア学会20周年記念シンポジウム「南太平洋のフロンティア」