ナプキン (生理用)
ナプキンは、女性の月経など各種排泄物により下着を汚さないように使う生理処理用品。
構造
形は大雑把にいうと長方形で角が弧になっている。厚さは数ミリ程度で1センチ以上になるものは月経処理用とは別用途であると思われる。中央は吸収させる部分で、サイドや裏面は下着への固定する役割がある。
便宜上、布ナプキンに対して、通常市販されている使い捨てのナプキンは「紙ナプキン」と呼ばれ、医薬部外品の指定を受けている。
紙ナプキン
日本で最初の製品は、アンネ株式会社(1993年にライオンへ吸収合併)が1961年に発売した「アンネナプキン」[1]。
「紙ナプキン」と呼ばれるが、素材は紙、樹脂、不織布などさまざまなものを用いている。排泄物の吸収には高吸水性高分子を用い、肌に接する部分に工夫を凝らした繊維が使われているようである。古来は脱脂綿が用いられ、戦後紙製品が普及したようだ。
表側表面は不織布もしくはメッシュ状の樹脂シートが用いられ、中央に綿のような肌触りの局部にあてがう部分がある。裏は防水のためのビニールシートに粘着テープがついており、ショーツに接着して固定できる。長方形の側面に「羽」と呼ばれる部分がついている製品もある。これはショーツに装着した際に羽の部分をショーツのクロッチ部分外側に折り曲げることでしっかりショーツに固定することを目的としている。羽付きと羽なしには、ずれにくさや使用感の違いがある。メーカー製の使い捨てのものはコンパクトに折りたたまれていて、個装に包まれている。個装を取り外すと、粘着テープを保護しているシートごと取れる仕組みになっている。色は主に白色で、ビニールの部分に薄いピンクやブルー、グリーン、パープルといった色が使用されていることもある。また、月経時は濃い色の服装や下着を着用することが多いことから、羽根や裏側部分を黒色にした製品も発売されている。
紙ナプキンの製品では、装着した際の前後の長短の具合(概ね20cmから40cmオーバーまで、ロリエの項目にラインナップがあり参考になる。)、羽なしと羽付き、サイドギャザーの有無、主に昼用の薄型(スリム)、主に夜用の厚型などに分類される。最近の製品では、従来のナプキンの形状よりもよりフィット感を増した形状のもの(elis Megamiシリーズ)、一般のナプキンの形状とは異なるが、ショーツ一体型の穿くタイプ(ロリエ スーパーガード 安心ショーツタイプ。外見はナプキンと言うより事実上紙オムツに近い)、外陰部にピースを挟んで使用し、体に装着するタイプ(ソフィ シンクロフィット)などの多様な種類がある。用途や体型、TPOによって各自使い分けるとより効果的である。尿漏れ対策の場合できれば夜用若しくはギャザー付きの物、あるいは尿吸収パッドを使うことが望ましい。
紙ナプキンは外陰部に密着させて使用するため使用感、また特に初経を迎えた直後の女子では違和感などを感じる場合もあるが、タンポンなどの他の生理用品に比べ、ショーツに貼り付けるだけで装着ができ、使用が簡単であることから、日本では最も使用されている生理用品である。主にタンポンを使用する女性であっても、月経のはじまり頃や終わり頃など経血が少ない時期、また、経血の多い時期でも、タンポン使用時に吸収しきれない経血が漏れ出ないようにナプキンを併用する人も多く見られる。
上記したように、使用方法や装着は簡単である一方、装着の仕方が不完全であると容易にナプキンがずれたりよれたりして本来の能力を活かせず、経血が漏れ出しショーツや衣類を汚してしまう場合もある。特に月経の処置に慣れていない初経を迎えた直後の女子に多く見られる。
日本の紙ナプキンの品質はとても高く、日本人が外国に行ってやむを得ず購入したナプキンの装着具合に驚くことが多々ある。
布ナプキン
2000年代後半から、肌触りの良さ、環境への配慮などから、布ナプキンを選択する人が増えている。紙ナプキンとの主な違いは、以下の通り。
- 紙ナプキンが使い捨て(試算値として、一人の女性が約1万2千枚を捨てる[1]というデータがある)であるのに対し、布ナプキンは洗うことによって繰り返し使用することができる[1]
- 直接のコストでは、2年間で紙ナプキンが7200円に対して、布ナプキンは5700円という試算がある[1]
- 製造工程で漂白剤など化学物質の使用を抑えた品物を使用すれば、布ナプキンはかぶれにくいという[1]
- 紙ナプキンに比べ、肌触りがよい[1]
- 色や柄など、デザインにこだわることができる[1]
- 紙ナプキンが使用後は捨てれば終わりなのに対し、布ナプキンは持ち帰り、洗う必要がある。また、洗ってもきれいに落ちるとは限らない[1]
副次的な効果としては、「毎回の状態を確認するため、自身の健康チェックになる」(えなのさとクリニック 福島幸江)もあるという[1]
布ナプキンを製造・販売している暮らしを耕す会やらでぃっしゅぼーや、フェリシモなどは、環境や使用感、安全性にとどまらず、ずれ防止・持ち帰りしやすい機能など、様々な工夫を凝らしている[1]。
また、布ナプキンの普及に伴い、重曹洗剤や洗濯板といった関連商品も発売された[1]。
使用
種類別
紙ナプキン
入手はドラッグストアなどで安価で容易に購入することができる。店頭で売られているのは主にメーカー製の使い捨てのナプキンで、布製はインターネットでの通信販売もしくは扱っていることを公表している店舗で探すのが望ましい。
非使用時の扱いは、特に初潮を迎えて間もない女性は生理周期が一定でないことが少なくないため、適当な数量を常に携帯することが習慣となっている。ナプキン自体はポーチや巾着袋に入れるなど、表立って見えないように持ち歩くのが好ましい。使用後の紙ナプキンは通常のゴミだが、区別して処理されるケースが多い。ナプキンは、トイレに流すと詰まってしまう。そのためエチケット・マナーの点から見ても、トイレ個室に備え付けのサニタリーボックスに汚れているほうを丸めて、新しく使用するナプキンの包装ラップまたはトイレットペーパーに包んで捨てるべきである。(最近は流せるタイプのものも流通しているが、特に明記していない限り流してはいけない。)家庭ではトイレにサニタリーボックスを設置するか不透明の袋を用いることもある。
用途
生理用ナプキンの名の通り、主に月経時に用いられ、生理用ショーツ(サニタリーショーツ)と併用されることもある。他に少量の尿漏れ対策や、おりもの等を防止する際に使用することもある。しかし、おりものの場合は通気性確保などの観点から、専用のおりものシート(パンティーライナー)を使用するほうが望ましい。尿漏れ対策には尿吸収パッドが用いられる。
月経は数日から1週間ほど続くが、ナプキンは経血量やナプキンの大きさにより、1時間~10時間程度で吸収量に限界がくるため、時間を見計らって、適度なタイミングで取り替える。経血量が少ないときに夜用の大きなナプキンを使用する場合などは、吸収量とナプキンの状態に問題がない場合もあるが、長時間の使用は衛生面に悪影響をもたらすこともあり、適度なナプキン交換は必要である。
ナプキンは大きさや素材が様々であるので、経血量や交換できる頻度なども考慮の上で使用するのが望ましい。長時間交換できないことが予測される場合(長時間の会議やドライブなど)には、昼間でも夜用のナプキンを使用する女性も多くいる。また、学校でクラスメイトに月経中であることを知られるのを避けるために、小中学生も登校時には大型ナプキンやショーツタイプを使用することが多くみられる。一方、大型のナプキンは装着時にずれやよれが発生しやすく、大型のナプキンだから失敗しないとは限らないため、装着には一定の慣れが必要である。また、通常、ナプキンは1枚ずつ使用するが、経血量の多い女性は、複数枚のナプキンを同時に使用(通常の装着の位置の前後に1枚ずつ追加して装着するなど)するか、過多月経専用ナプキンを装着している場合もある。
ナプキンは、外陰部という皮膚が薄くデリケートな部分に装着するため、また、防水性の素材を使用しているため、装着時には蒸れやすくなり、かぶれやかゆみなどのトラブルを起こす場合もある。現在はそのようなトラブルを回避するための製品(ロリエ・エフシリーズ、ソフィ・はだおもいなど)も発売されているので、使用を考慮するとよい。
ナプキンの使用方法、使用済みナプキンの処理方法、ナプキンの管理方法などは、小学校などで行われる性教育の中で触れられるが、月経には個人差があるため、多くの女性は失敗を経ながら経験で学ぶことになる。
近年の学校教育では、修学旅行がある小学校高学年あたりから、女子生徒に性全般のことを含めて指導されることもある。その際は、内性器が未発達でデリケートな状態であるため、タンポンではなくナプキンの使用が推奨されるだろう。
男性の用途
この記事には独自研究が含まれているおそれがあります。 |
この記事の内容の信頼性について検証が求められています。 |
痔の場合医師より勧められて使うこともあるほか、夢精や遺精によって下着を汚さないために使う。
痔の際は出血量に問わず2~3時間程度で取り替える。
夢精の場合は寝る前にブリーフ等の下着に男性器からできるだけ上部まで装着し、朝夢精している・いないにかかわらず起きてから取り外す。ブリーフでは粘着テープの貼り付きが弱いことが多く、ナプキンがずれて血液や精液で下着を汚してしまうこともあるため、ボクサーパンツや生理用ショーツが適用である。
布ナプキン
布ナプキンは、基本は大きめの布を折って使用する。使用後は持ち帰り、洗濯をして再度利用する。洗濯では、重曹等アルカリ性洗剤を使用する[1]。
主要メーカー
販路
文献
- 1989年1月 小野清美『ナプキン先生の素敵なマンスリー・デイを』光雲社、ISBN 4795272859
- 1992年8月 小野清美『アンネナプキンの社会史』JICC出版局、ISBN 4796603948、文庫版: 宝島社、2000年10月、ISBN 4796619445
- 2005年8月 角張光子『ひろがれひろがれエコ・ナプキン』地湧社、ISBN 4885031842
- 2006年6月 小野清美『生理用品の45年の軌跡』ふくろう出版、ISBN 486186271X
- 2006年7月 田中ひかる『月経をアンネと呼んだ頃 生理用ナプキンはこうして生まれた』ユック舎、ISBN 4843100919