トヨタ・iQ
iQ(アイキュー)とはトヨタ自動車が発売するコンパクトカーである。生産拠点はトヨタ・高岡工場(豊田市)。
概要
欧州の各メーカーがマイクロカーに力を入れはじめている現状に対するトヨタの回答のひとつとして、2007年9月、ドイツのフランクフルトモーターショーにて「iQコンセプト」を世界初出展したのがはじまりである。
外寸が2980mmx1690mmx1480mmと欧州圏で発売されている同社のアイゴ、あるいは日本の軽自動車よりも長さが400mm以上短く、コンセプトはあくまで「大人3人と子供1人または荷物の3+1シーター」=「Compact, not compromised」= コンパクトではあるが我慢はないというものである。尚、開発は南フランスにあるトヨタの欧州デザインスタジオ、ED2(EDスクエア)が行った。
その後、東京モーターショーでもiQコンセプトが発表され、2008年3月のジュネーブモーターショーにおいては量産仕様を世界初出展。同年10月のパリサロンにおいては正式市販モデルが発表された。
歴史
初代(KGJ10/NGJ10型 2008年-)
トヨタ・iQ KGJ10/NGJ10型 | |
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ボディ | |
乗車定員 | 2人-4人 |
ボディタイプ | 3ドアハッチバック |
駆動方式 | FF |
パワートレイン | |
エンジン |
1KR-FE型 L4 68ps 1NR-FE型 L4 94ps |
最高出力 |
1.0L車:50kw(68PS)/6,000rpm 1.3L車:69kw(94PS)/6,000rpm |
最大トルク |
1.0L車:90N・m(9.2kgf・m)/4,800rpm 1.3L車:118N・m(12.0kgf・m)/4,400rpm |
変速機 | Super CVT‐i |
前 |
前:マクファーソンストラット 後:トーションビーム |
後 |
前:マクファーソンストラット 後:トーションビーム |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,000mm |
車両重量 | 890kg |
- 2008年10月15日
- 発表。同年11月20日より日本での発売開始。内外装のデザインに関しては巻き貝や波紋などを基に造られた数理モデルを用い、自然界の造形美を活かした線や面を採用している。
- 欧州仕様はコモンレール式1.4Lディーゼルターボエンジン(1ND-TV)と6速MTなどの組み合わせもあるが、国内仕様は二酸化炭素排出量の削減を念頭に置いたため、ダイハツ製1L・3気筒の1KR-FEにSuper CVT-iのみの組み合わせとなる(欧州仕様車では同型エンジンに5速MTを組み合わせた仕様も存在する)。しかし、トランスミッション構造を変更し、ステアリングギヤボックスを上方に配置。さらに新開発の電動パワーステアリングの採用によりエンジンルームはヴィッツよりもさらにコンパクトとなっている。また、燃料タンクを床下にレイアウトすることでリヤのオーバーハングも極限まで短縮されている。さらにシートは乗り心地とホールド性を保ちつつ可能な限り薄型化するとともに、助手席側のダッシュボードを運転席より前方に出すことで十分な居住性能を確保している。
- ヘッドライトのバルブに関してはスペース上の関係で背面からは挿入出来ない為、ハロゲンヘッドライト・ディスチャージヘッドライトともに交換時は側面から挿入することになる。この技術はレクサス各車やアイシスですでに導入済だが、いずれもディスチャージヘッドライトに対応するものであり、ハロゲンヘッドライト採用車種への導入はiQが世界初となる。
- オーディオに関しては全車標準装備であるが、インパネクラスター一体式の専用デザインとなっていてCDの挿入はインパネ上部より、操作はステアリング脇にあるリモートスイッチにて行う。尚、メーカーオプションのオーディオレス仕様を選ぶとインパネクラスターはディーラーオプションのナビに対応するものに変更される。
- 日本でのグレード展開は、発売当初、装備によって「100X」「100G」「100G"レザーパッケージ"」の3つが用意されるが、合計9個のエアバッグやABS&ブレーキアシスト、S-VSCなど高級車なみの安全装備は全車に備わる。
- また、欧州仕様のフロントマスクにはトヨタのCIマークが装着されるが、国内仕様に関してはネッツ店専売ということもあり、「Netz」の頭文字Nをモチーフにしたエンブレムが装着される。
- 2009年2月10日
- ボディーカラーを2色を追加。従来は落ち着いたカラーリングが大半を占めていたが、ヴィッツのマイナーチェンジで先行採用されたイエローとコバルトブルーメタリックという明るめの色が新たに加わり、選択の幅が広がった。
- 2009年3月
- ジュネーブモーターショーにて待望の直列4気筒1.3Lガソリンエンジン搭載モデルが発表された。
- 搭載される直列4気筒1.3Lエンジンは、新規開発でなお且つ、同社の2NZ-FEの後継エンジンとなる1NR-FE型で吸気・排気側にもVVT-iを採用した「デュアルVVT-i」を新採用。排気量は1329ccで最高出力は100psを発生すると発表されている。
- トランスミッションは新開発のCVTか6速MTを選択できる。また6MTには「ストップ&スタートシステム」と名づけられたアイドリングストップストップ機構が搭載される。(日本ではCVTのみ。)
- 2009年8月20日
- 日本で1NR-FEを搭載したグレード「130G」と「130G"レザーパッケージ"」を追加。燃費性能は1.0L車と同じく20.8km/L(JC08モード燃費)を実現しており、環境対応車普及促進税制にも適合する。トランスミッションはCVTのみで6MTの設定はない。1.0L車も同時に一部改良を行い、運転席シートアジャスター(100G"レザーパッケージ"のみ)やドアアームレストにポケットを追加し利便性を向上。またボディカラーに「グレーメタリック」を追加すると共に、"レザーパッケージ"のシート表皮にブラックレザー×レッドファブリックを追加設定した。
- さらに2種類の特別仕様車「"+(プラス)"」と「100X"2 Seater"」を発売。「"+"」は「デコクレ」の第2弾として、「100G」「130G」をベースに、一部をスコーピオンレッドあるいはキャメルゴールドの加飾を施した内装やスーパークロームメタリック塗装の15インチアルミホール("レザーパッケージ"に装備)、黒色加飾のメーターバイザー、角度調節機能付マッドランプ(白色LED)にはメッキ加飾を施した自分らしさを表現した仕様で、エンジンや"レザーパッケージ"の装備で4タイプが用意される。一方の「100X"2 Seater"」は廉価グレードの「100X」をベースに後部座席部分をラゲージスペースに変更して乗車定員を2人に減らし、荷室スペースを確保した仕様である。
- また、Gazoo Racingが開発を行った「GAZOO Racing tuned by MN」も発表され受注を開始。日本国内向けでは初となる6MTやリアディスクブレーキ、専用タコメーターなどを搭載し、98psにチューンされたエンジンも搭載される。発売は11月13日で100台の限定販売としている。また、持込登録が必要な改造車扱いとなる。
-
100Gレザーパッケージの車内
その他
- 全長3m前後のシティコミューターということで(価格面を抜きにすれば)スマート・フォーツーやタタ・ナノなどと比較されがちだが、iQと比較すると前車は同じリッターカーでも2人乗りで、後車は4ドア・排気量0.6Lという決定的な違いがあり、さらに言うと両車ともRR(リヤエンジン・リヤドライブ)であるため、今のところ、まったく同じコンセプトの車は大手自動車メーカー製では他に例がないといえる(類似コンセプトの国産車としては過去にはスズキ・ツイン、現在はスバル・R1があるが、いずれも軽自動車である)。
- 本カタログは車両コンセプトをわかりやすく説明するため、写真やイラストを多用している。そのためトータルで60頁近くもあり、比較的豪華なつくりになっている。
- 2008年9月には愛知県のリトルワールドと神奈川県の大磯ロングビーチで国内仕様・プロトタイプの特別先行試乗会が開催された(和歌山県のポルトヨーロッパでも予定されていたが、台風により中止となった)。
- 同年10月20日から26日まで、銀座ソニービルの壁面に、地面と垂直に道路のセットを造り、iQを設置、1日6回ワイヤーでつられた男女3人が、その周りで傘を手にパフォーマンスを繰り広げるという宣伝が行われた。
- 同年11月23日に東京で開かれたYouTubeの公式イベント「YouTube Live Tokyo」でも、トヨタによるデモ走行が行われ、派手なパフォーマンスを披露した。
- 2009年5月7日 ダイキン工業がエアコン「うるるとさらら」のキャラクターであるぴちょんくんのデビュー10周年を記念して同日から8月31日まで開催されるユーザー参加型キャンペーン「ぴちょんくん号が行く! エコ旅キャンペーン」にあわせてiQをベースとした「ぴちょんくん号」をアムラックスで公開した[1]。同車はぴちょんくんをイメージさせるカラーリングとFRP素材のパーツ8個と専用ヘッドライト[2]を追加することで全長×全幅×全高がベース車の2.985mm×1.680mm×1.500mmから3.180mm×1.870mm×1.990mmに拡大されている(よって、3ナンバー登録となっている)。尚、製作日数は107日。
- 2009年6月29日 イギリスの自動車メーカーであるアストンマーチンがiQをベースとしたコンセプトカー「シグネット(CYGNET)」の概要を発表。クリエイティブで環境に優しく、小型車でありながらプレステージ性を付加することで高い存在感を発揮することを目標に製作されたという。また同日、トヨタもTME(トヨタ・モーター・ヨーロッパ)を通じて、アストンマーチンにiQをOEM供給すると発表した[3]。
受賞
2008年11月6日にはグッドデザイン賞の中でも最も優れた製品に与えられる「グッドデザイン大賞(内閣総理大臣賞)」を受賞[4]。トヨタの車種でグッドデザイン大賞の受賞するのは2003年度のプリウスに続き2車種目である。
同年11月11日には2008-2009日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した[5]。日本国内外未発売での受賞は異例である。
2009年1月に開催された東京オートサロン2009 witn NAPACにて、トヨタモデリスタインターナショナルが出展したコンセプトカー「iQ“WHITE FALCON”」が東京国際カスタムカーコンテスト2009で、コンセプトカー部門の優秀賞を獲得した。
車名の由来
iQの「i」は「個性(individuality)」を表すと同時に、「革新(innovation)」と「知性(intelligence)」という意味をあわせもつ。また、「Q」は、「品質(quality)」を表現するとともに「立体的な(cubic)」という言葉の音と、新しい価値観とライフスタイルへの「きっかけ(cue)」という言葉に由来している。
脚注
- ^ ダイキン、トヨタ「iQ」ベースの「ぴちょんくん号」をお披露目Car Watch(2009年5月7日)
- ^ 実際は2009年3月に販売終了となったダイハツ・ムーヴラテから流用している。
- ^ アストンマーチンとトヨタが合体・・・シティコミューター Yahoo!ニュース(2009年6月29日)
- ^ 2008年11月6日付ニュースリリース)
- ^ COTYプレスリリース