コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

事業税

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Hogué (会話 | 投稿記録) による 2005年3月26日 (土) 10:51個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (カテゴリの変更)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

事業税 (じぎょうぜい) は、地方税法(昭和25年7月31日法律第226号)に基づき、法人の行う事業及び個人の行う一定の事業に対して、その事業の事務所又は事業所の所在する道府県が課す税金である。

個人の事業に対して課すものを個人事業税・法人の事業に対して課すものを法人事業税と呼ぶことが多いが、法文上は同一の税目であるため一つの項目で解説する。

法人税における所得の計算上、道府県民税と異なり事業税は損金算入が認められている(法人税法38条2項)。また、同様に所得税における事業所得・不動産所得・山林所得・雑所得の計算上、事業税は必要経費への算入が認められている(所得税法45条)。

なお、法人の事業税については法人の道府県民税と申告・更正・決定等について課税実務上きわめて大きな関連性がある(俗に法人二税と言う)。

課税標準(原則)

  • 法人
    • 一般の法人:所得、清算所得
      • 資本金・出資金額が1億円を超える法人:外形標準課税(2004年4月1日以降に開始する事業年度より適用:後述)
    • 電気供給業、ガス供給業、生命保険業及び損害保険業を営む法人:収入金額
  • 個人:前年中の事業の所得
    • 第1種事業
    • 第2種事業
    • 第3種事業

課税標準となる所得は原則として所得税(個人事業主の場合)・法人税(法人の場合)の例によって算出する。但し、政策上・課税技術上の観点等から

  • 個人・法人の双方について、林業にかかる所得は非課税である
  • 個人および医療法人等の一部法人について、社会保険診療等にかかる経費・収入は所得の計算時に算入しない
  • 個人について、事業主控除という年額290万円(事業所得の計算期間が1年に満たない場合は月割)の所得控除が設けられている
  • 個人について、青色申告特別控除を認めない
  • 法人について、課税された所得税額の損金算入を認めない
  • 法人について、連結納税を認めない

など、いくつかの例外がある。

課税標準の例外:事業の情況に応じた外形標準課税

一般の法人又は個人については、「事業の情況に応じ……資本金額、売上金額、家屋の床面積若しくは価格、土地の地積若しくは価格、従業員数等を課税標準とし、又は所得及び清算所得とこれらの課税標準とをあわせ用いることができる」こととされている(旧地方税法72条の19・地方税法72条の24の4)。 但し、このとき、通常の所得を課税標準とするときの租税負担と「著しく均衡を失することのないようにしなければならない」とされている(地方税法72条の22第9項)。

なお、事業の情況に応じない外形標準課税の導入に伴い、外形標準課税の対象となる法人に対してはこの例外は適用されないものとされた。

銀行税(俗称)

東京都が2000年4月に・大阪府が2000年6月に制定した、資金量5兆円以上の銀行業を営む法人に対する業務粗利益を課税標準とし3%の税率で課税するとする特例条例は、上記特例に基づくものである(報道等で俗に銀行税と呼ばれることがあるが、新たに法定外の税目を設けるものではないため、適当ではない)。但し大阪府は実際の課税には至っていない。

これに対して銀行側は、事業税は所得課税を常態とする応能課税であり上記特例はきわめて限定的に運用されるべきものであること・所得課税が適当でない「事業の情況」にないこと等を主張し、違憲・違法の課税であるとして課税無効と賠償を求め、東京都を提訴。当該裁判において東京高裁において、事業税の応益性と「事業の情況」の存在を認めるものの、所得を課税標準にする場合に比して税負担が「著しく均衡を失」しており違法と判断する判決が出された。これを契機として最高裁では和解交渉が行われ、税率を条例施行時に遡って0.9%に引き下げ、納付済みの事業税額との差額を還付し還付加算金を支払う条件で2003年10月8日に和解が成立した。

外形標準課税の対象となる法人は上記特例の対象から外れるところ、東京都・大阪府に本店を置く銀行業を営む法人のほとんどが1億円を超える資本金を持つことから、銀行業に対する外形標準課税を定めた条例は廃止ないし空文化される可能性が高い。

還付時に多額(1,695億円)の還付加算金が発生し、都財政に悪影響を与えたとする見方がある一方で、事業の状況を限らない外形標準課税の導入(後述)に関する政府・国会内の議論を活発にし、また地方の財政問題に関する問題意識を高めたとの指摘もある。

なお、銀行側は大阪府に対しても同様の訴訟を起こしていたが、2004年3月29日に大阪府議会で税率を東京都の和解内容に準じて0.9%に引き下げる条例が制定されたことから、近く和解が成立する見通しである。

外形標準課税

もともと事業税は「所得」を基に税額が算定されていた。ところが、不況による税収の伸び悩みや地方財政の悪化から、平成15年度の税制改正により、一定の法人については、いわゆる外形標準課税が導入されることとなった。

課税サイドからみた外形標準課税のメリットは、赤字法人からも税収を上げることができるため、不況時にも一定の税収を見込むことができ都道府県財政が安定する点にある。実際に、黒字法人の割合が低水準(概ね30%強)で推移している一方で、地方税には応益税的な性質があるとされることから導入には一応の説得力がある。

納税者側からみたときのメリットとしては、税額に占める所得課税部分の割合が減少することから、黒字時には事業税の負担が従来より減少することが挙げられている。

デメリットとしては、赤字法人の多い中小企業・従業員数の多い鉄鋼業等の負担が重くなるとされること、以下のとおり税額の計算方法が複雑なことなどが指摘されている。

外形標準課税の概要

  • 資本金1億円超の法人が対象
  • 事業税及びその課税標準を3つに分割
    • 付加価値割の課税標準:各事業年度の付加価値額
      • 付加価値額 = 収益配分額 + 単年度損益 , 国外事業に帰属する付加価値額は控除される。
      • 収益配分額 = 報酬給与額 + 純支払利子 + 純支払賃借料 , 報酬給与額が70%超の法人は、雇用安定控除を行う。
      • 単年度損益 = 益金の額 - 損金の額
    • 資本割の課税標準:各事業年度の資本等の金額
      • 資本等の金額 = 資本(又は出資)の金額 + (連結個別)資本積立金額
      • 持株会社については、資本等の金額から(資本等の金額×子会社株式の帳簿価額/総資産)を控除する。
      • 資本等の金額が1,000億円超の法人については、課税標準を一定の方法で圧縮する。
      • 課税標準の上限は、1兆円とする。
      • 国外事業を行う法人については、国外における事業規模等を勘案して国内事業相当額のみに課税
    • 所得割の課税標準:各事業年度の所得及び清算所得
  • 標準税率
    • 付加価値割:0.48%
    • 資本割:0.2%
    • 所得割:7.2%(但し年400万円以下は3.8%、400万円から800万円までは5.5%)
  • 制限税率:標準税率の1.2倍が上限
');